真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「性風俗ドキュメントⅡ ~ザ・快楽~」(1992/製作・配給:新東宝映画/構成・演出:片岡修二/企画・製作:田中岩夫/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:国分章弘/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:奥野英雄/照明助手:広瀬寛己/スチール:西本敦夫/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/レポーター:下元史朗/出演:池島ゆたか・水鳥川彩・大谷えりか・斉藤桃華)。照明助手の寛巳でなく広瀬寛己は、本篇クレジットまゝ。
 ズンドコ劇伴鳴らした歓楽街の夜景に、秒殺のタイトル・イン。矢継ぎ早に白のスーツの下元史朗が、「こんばんは下元史朗です」と妙な爽やかさで飛び込んで来る。「性風俗ドキュメント」シリーズ最終第三作「最新!!性風俗ドキュメント」(1994/監督:深町章/構成:甲賀三郎/主演:林由美香・荒木太郎)の開巻で荒木太郎も撃ち抜いた映画史上に残らう清々しさは、今作の時点で既に完成してゐた格好。因みに半年強先行する無印第一作「性風俗ドキュメント ザ・穴場」(1991/監督:深町章/脚本:周知安=片岡修二/主演:荒木太郎)に於いては、荒木太郎が矢張り堂々とした正面突破を敢行しながら、メグリトモヤスとかいふ漢字でどう書いたらいいのかよく判らない役名を名乗つてゐる。今回のコンセプトは、ザックリと新宿歌舞伎町の御案内。看護婦プレイが出来るSMクラブに自ら電話で取材依頼する下元史朗が、どさくさ紛れに新東宝映画の下元とか名乗つてゐるのが微笑ましい、何時専属契約を結んだんだ。とまれあくまで実際の風俗店を撮影隊が訪ねる体で、バタフライマスクで顔を隠した大谷えりかがナース服で待つ、本格的な病院セットがあつらへられたマンションの一室に。浣腸されることには下元史朗がNGを出しつつ、前立腺を刺激して貰つたり、何時の間にかマスクを外して私服の大谷えりかを患者役に、お医者さんごつこから最終的にはお注射まで完遂してみたりなんかする。パート尻には射精産業の図式的なコース分けを捕まへて、“触るとS触られるならMと、サド侯爵が地下から怒りで蘇つて来るやうな誠に短絡した発想である”となかなかに気の利いた毒を吐いてのける。
 配役残り、顔を完全に見せないホテトル嬢(声だけなら水鳥川彩にも聞こえるが、背格好は違ふ)の取材を経て、嬢が友達の父親とホテルで鉢合はせたエピソードの再現ドラマに突入。斉藤桃華が嬢で、池島ゆたかが嬢の友達・千春の父。大陰唇好きな千春父はパンティ越しに摘んだ娘の友人に、“プクプク”“プクプク”と暫し大はしやぎ。この頃の天衣無縫な突破力を、俳優部池島ゆたかは今一度取り戻せないものか。純ッ然たる枝葉ではあれ、一点何気でもなく琴線に触れたのが、斉藤桃華が池島ゆたかの承諾を得てホテルで飲む缶コーヒーがキリンのJive。粗挽きネルドリップ方式が本当に美味しかつた、高校の帰り道、友人と初めて飲んだ発売直後のジャイブには二人してこの缶コーヒー旨えな!と本気で感動した。それだけになFIREへの恨み節はさて措き、再現ドラマ・パートを経て、下元史朗は斉藤桃華が出演するピンク映画の撮影現場にまさかのお邪魔。荒木太郎が男優で、監督は片岡修二のヒムセルフに、カメラは田尻裕司。八年後のピンク映画最終作「スチュワーデス禁猟区 -昼も夜も昇天-」(2000/脚本:甘木莞太郎/主演:吉井美希/a.k.a.伊沢涼子)まで一旦ピンクから撤退する腹を既に固めてゐたのか、下元史朗の他人行儀なインタビューを受けた片岡修二は、かつては風俗をリードしたピンク映画が、今は必死で追ひ駆けてゐるとかわざわざ出て来た割に、覇気を感じさせない。ほぼほぼ終始アイマスク着用―最後に外すもカメラは背中越し―の水鳥川彩は、新機軸・夜這ひプレイの嬢、ものもらひでも出来てゐたのか?
 人海戦術を漫然と展開する「ザ・穴場」、劇的なモキュメンタリーを構築する「最新!!」と並べて比較した片岡修二1992年第五作の特色は、三本柱に全篇をほぼほぼ綺麗に三等分しての、最早ひたすらなまでに、兎にも角にも腰を据ゑて入念に展開する濡れ場。逆からいふと、下元史朗が最新風俗をガイドするとする体裁は限りなく透明に近く女優部と女優部を繋ぐための方便に過ぎず、中身らしい中身は「ザ・穴場」同様、殆ど全くない、実も蓋もないにもほどがある。ものの、肩の力の抜けた下元史朗の色気は軽やかに走り、一時間にも一割満たない尺とはいへ、心地よくサクッと見させる。


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