真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「熟女ヴァージン 揉まれて港町」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:目見田健/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:市原博文/照明助手:小松麻美/美術協力:富田悠/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:白木優子・月本愛・通野未帆・和田光沙・櫻井拓也・津田篤・橘秀樹・山本宗介)。
 「明日香でえす☆」と軽やかに火蓋を切る、何の変哲もないそこら辺の公園にて、十八歳になつた記念にと女子高生が縄跳びの二重飛び百回に挑戦する投稿動画。ところで、二重飛びに見えないのは気の所為か。一方アラフォー女の、見るから引きこもつた薄暗い部屋。女が鉛筆を走らせる、動画の女子高生の背景に見切れるベンチで菓子パンを頬張る津田篤の、何故か逆アングルのイラストにタイトル・イン。美術協力の富田悠が、鉛筆画の主なのか?
 優等生であつたものの、高三の時から凡そ二十年引きこもる藤森和子(白木)の部屋に、妹の美沙(通野)がノックもせずに入つて来る。遺影もスルーする両親は二年前に事故で死去、和子の面倒を託された格好の美沙が、家事に関する文句を一頻り吐く。翌日、美沙が婚約者の岡本雅也(櫻井)を家に連れて来る。家賃は妹夫婦が出しての別居を提案された―見るから部屋着なスウェットの―和子は、無言で居間の席を立つ。一応和子を慮る岡本に対し、美沙が有無をいはさぬ速攻を仕掛ける婚前交渉の最中、和子は荷物をまとめ出奔。目指した先は、名称をロストした女子高生縄跳び動画の公園、の津田篤がジャムパン―如何に特定したのか最後まで語られはしないが、和子によるとジャムパンらしい―を食べてゐたベンチ。ホケーッと和子が座つてゐると、そこに縄跳び動画の女子高生・木崎明日香(月本)が私服で現れ、再びてれんてれん縄跳びを始める。最初は自身をガン見する正体不明の中年女を警戒した明日香も、和子が動画を見たと知るや胸襟を開き、津田篤と動画撮影当日軽く話をしてみたところ、実家の民宿を継ぐため静岡に帰るといつてゐた旨を伝へる。すると脊髄で折り返して静岡にレッツらゴーな和子に、その場の勢ひに呑まれた明日香も同行。如何にも日本的な、海の間近まで山が迫つたロケーション。山裾を曲りくねつた海沿ひの線路を電車に揺られ、二人は静岡に入る。
 配役残り橘秀樹は、ひとまづ波止場にやつて来た和子と明日香に、「そんなところで何してるの?」と声をかける大体ナンパ師・白井。車に乗せて呉れたお礼にと、明日香が白井に膳を据ゑる件。明日香が当初提示した手コキを固辞する白井に、明日香は返す刀で「オッパイ見る?」。棚から転がり落ちた牡丹餅が、葱を背負つた鴨に空中でトランスフォームするが如きドリーミングなシークエンスに加へ、明日香が勿体ぶりもせずたくし上げたセーターから、ボロンと零れる爆乳が素晴らしい。明日香と白井がそのまゝザクザク突入した青姦に於ける正常位こと立位後背位を、目撃した和子が衝撃を受ける事後、二人は明日香が肌身離さず持ち歩く、何某か因縁もあるらしき写真の撮られた砂浜に。幼少期一度だけ連れて来て貰つた海に触れなかつた和子が、明日香に促され恐る恐る波打ち際に近づくと、入水でもするのかと早とちりした地元の猟師・中尾智晴(山本)が「早まるな!」とドラゴンロケット。逆に中尾に冬の海に突き飛ばされた和子は、中尾懇意の民宿「もちづき」に。和田光沙が、料理人の夫とは五年前に死別、「もちづき」を一人で切り盛りする望月めぐみ。和子と明日香は「もちづき」に逗留、中尾の力も借りての和子曰くジャムパンマン捜しに本格的に着手する。
 2012年第五作「三十路義母 背徳のしたたり」(脚本:エバラマチコ/主演:結城みさ)、2016年第二作「大人志願 恥ぢらひの発情」(脚本:小山侑子/主演:若月まりあ)に続いての五作ぶり三度目で、竹洞哲也が小松公典以外の脚本家を迎へた2017年第二作、OPP+題が「出会つてないけど、さやうなら」。ついでといつては何だが白木優子は竹洞哲也2015年第二作「四十路熟女 性処理はヒミツ」(脚本:小松公典)、月本愛はいまおかしんじ大蔵第二作「感じるつちんこ ヤリ放題!」(2017/脚本:守屋文雄/主演:涼川絢音)三番手、通野未帆は竹洞哲也2016年第一作「純情濡らし、愛情暮らし」(脚本:当方ボーカル)以来と、三本柱が揃つてピンク第二戦。
 部屋から出ない内に大人を通り越してオバサンになつた女と、“JK”と称するのがより相応しい今時な女子高生の二人旅は、ビリング後ろ二人の矢継ぎ早な投入もテンポよく、順調に軌道に乗る。月本愛を介錯すると、潔くスッパリ退場する橘秀樹の大絶賛濡れ場要員ぶりはピンク映画的に実に清々しく、現代ピンク最強の男前たる山宗はこの上なく見事な壁ドンを、しかも足で決める。屋外では気合を入れたロングを多用する、画の力も強い。とはいへ肝心要のジャムパンマン捜しが釣りでいふところのボウズ続きで、流石に間がもたなくもなりかけた終盤、何気に丹念に積み重ねられた、静岡の嘘が明かされる。それまではそれなりに苦しんで来なくもなかつた和子の傍ら、飄々と刹那的に生きて来たかに見せた明日香も、矢張り心に何の隙間も抱へてゐない筈がなかつた。寧ろ和子の物語にケリがつくよりも先に、明日香に血肉が通ふ瞬間が最初のハイライト。地力のなせる業なのかツキなのか、下手な物言ひを滑らせるやうだが、月本愛はいい映画に出たと思ふ。むくれた表情が、明日香の心のさゝくれにフィットする。そして静岡行でイニシエーションを経た和子が、君“きみ”に感謝の気持ちを込めて告げる出会つてもゐないのにな別れが、ふたつめのハイライトにして真のクライマックス。流石に幾ら何でもハイキーの度が越した画面は、余程上等なプロジェク太でなければ厳しからうが。実はピンク映画としては女の裸比率は案外でもなく結構低く、オーラスの大出世した自立ぶりは些か荒唐無稽の領域にさへ突入してゐながらも、行程の前と後ろとで決して全てが変りはしないにせよ、確実に開けた扉もなくはない綺麗な綺麗なロードムービー。何はともあれ、家を出た和子がとりあへず辿り着いた、津田篤が菓子パンに舌鼓を打つてゐたベンチ。ここでの、メガネにボサッとニット帽を合はせ、呆然と佇む白木優子の破壊力が比類ない。何故だか判らないけれど兎に角無性にエモーショナルなそのショット一撃で、今作はエターナル。削る削るといふほどの絡みの分量がそもそも存在せず、二十分長いOPP+に際して何処をどう水増ししたものやら知らないが、これ、既にR18版で意は尽くされてあるのではなからうか、下手に尺を持て余すでなく十二分に完成してゐる。蔑ろといふと言葉が過ぎるのかも知れないが、少なくともピンクが疎かになる形でOPP+路線を明確に苦戦してゐたやうに映る竹洞哲也が、うつかり高を括つてゐると放つて来たクリーン・ヒット。深澤浩子的にもピンクに於ける初日である点に、改めて論は俟つまい。
 明日香の嘘の備忘録<静岡の民宿で働いてゐたのはミッちやん―明日香母―と別れた明日香実父


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