真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「股間連発テクニック」(昭和59/製作・配給:新東宝映画/監督:和泉聖治/脚本・プロデューサー:木俣堯喬/撮影:伊東英男/照明:石部肇/編集:菊池純一/効果:小針誠一/助監督:西沢弘美/〃:山下雅之/撮影助手:依田英男/照明助手:佐藤才輔/スチール:津田一郎/刺青:スーパーオリジナル/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:ひびき恭子・渡辺さつき・泉ゆり・木戸康之・川合勇樹・梶草介・塚本徹)。最初に白旗を揚げる、どうしやうもなく男優部に手も足も出せない。
 高層ビルから足元の歩道橋にティルト、カット跨いで東京駅。ところで一応都会的な硬質基調の画と、ホンワカした劇伴とに早速違和感、新喜劇ぢやないんだからよ。路線バスの画を噛ませて、帰宅する女のハイヒール、トレンチのひびき恭子を抜いてタイトル・イン。「日本オーナーズ」入社四年目のOL・貝塚洋子(ひびき)が帰宅すると、契約結婚相手の祐吉が焼きそばを作つてゐた。ここで今作に於ける“契約結婚”とは、サルトルとボーヴォワールが実践した事前に期間を限定する云々、ではなく。結婚を前提に婚前交渉を持ちつつ、互ひに相手を束縛しないだとかいふ、限りなく外延の曖昧なといふか、単なる半同棲生活―洋子宅の合鍵を所持する、祐吉の住所は別にある―と何処が違ふのかサッパリ判らないガバガバ概念。祐吉の求めに洋子が応じない応じろしてゐると、洋子の妹で、寮暮らしといふ点を見るに短大か女子大生の妹・玲子(渡辺)が彼氏の新一を伴つた電話ボックスから、「アタシ女になることにしたの」だ豪快に唐突な電話を寄こして来る。一回戦は大胆な暗転で割愛した二回戦の事後、祐吉は郷里で見合する羽目になつた旨洋子に告げる。
 女優部しか特定出来ない配役残り、洋子の上司で下卑た風貌の征木部長に続いて、何気に途方もない戦歴をさして顧みられるでなく誇る、量産型娯楽映画俳優部の鑑ともいふべき泉ゆりが征木行きつけのバーのママにして、肉体関係にもある築崎和代、左眉頭の大きな黒子が特徴。その他主な登場人物は、仮出所で娑婆に出て来た、和代の筋者の夫・三八。バー部隊のうち、バーテンの山ちやんはセカンド助監督の山下雅之か、現代でも通用するハンサム。
 思ひだしたやうに展開中の「Viva Pinks!」殲滅戦第十一戦は、和泉聖治昭和59年第一作。一般映画を一本挿んで、次作が「愛獣 熱く凌す」(脚本・プロデューサー:木俣堯喬/主演:沢田和美)。以降買取系ロマポはまだ数本あるものの、和泉聖治・ラスト・ピンクに当たる。
 これといつてどころでなくテクニカルな側面なんぞ終ぞ見当たらない、公開題から顕著なぞんざいさは、自堕落に全篇を支配。逆にといふか寧ろといふか、シナリオ題なんて全身全霊を込めてどうでもいいけれど。祐吉発で四年の関係に終止符を打たれた洋子が、征木と和代・三八の絡んだ悶着の末、退職金+αでせしめた小金を元手に、ついでに三八も部下に引き込んで―推定―ホテトルを開業するラストは、奮つてゐなくもないにせよ、清々しいほどに面白くも何ッともない。玲子の物語は特にも何も膨らまず、二番手が濡れ場要員といふビリングの変則性如き、この期にとるに足らない些末。唯一特筆すべきは、年下の義母・珠瑠美に劣るとも勝らない勢ひで乱打する長尺フェード。祐吉に事実上捨てられ、捨て鉢に征木と寝て以降の、“私は変身する”とした洋子決意の述懐。“祐吉で女になつて四年”、“征木といふ初めての外食で私はメニューの多彩さを知り”、“何れは腰を据ゑなければならないだらう結婚生活までに”、“思ひつきりセックスの美食遊びをしてやらうと思ひたつた”。タマキュー(珠瑠美旧作の意)と全く同様な、徒に冗長な割に屁よりも中身は薄いモノローグ。色濃いプロ鷹特色、といふか要は木俣堯喬の影響が深く及んでゐる点には、元凶に辿り着いた思ひの感興を懐いた。

 付記< 駅前で観て、一人だけ男優部を詰められた。祐吉役が、塚本徹名義の末次真三郎


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