真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「性獣一家 家庭教師・盗み喰ひ」(1997『変態一家 兄貴の家庭教師』の2003年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山﨑邦紀/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/撮影:田中譲二・西村博光・坂上宗義/照明:秋山和夫・荻久保則男/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:飯塚忠章/制作:鈴木静夫/録音:杉山篤/現像:東映化学/効果:中村佳央《東洋音響カモメ》/協力:日活撮影所/出演:水嶋眞由・吉行由実・悠木あずみ・新改幸紀・樹かず・甲斐太郎)。
 背後から揉み込まれる主演女優のオッパイを大接写、旧旦々舎の庭では悠木あずみが新改幸紀の尺八を吹き、更にその傍らでは裸エプロンの吉行由実と、甲斐太郎が乳繰り合ひつつバーベキューの準備。吉行由実が辰彦の進級祝ひといふ肉宴のテーマを告げ、カメラが引くと水嶋眞由のオッパイを揉み込む当の秋山辰彦(樹)も縁側に。濡れ場・ストリーム・アタックを豪快に撃ち抜いた上で、華のないGS顔―どんなだよ!―の新改幸紀が僅か三ヶ月の間に起きた、状況の劇的変化を呆然と振り返つてタイトル・イン。開巻からアクセルを踏み抜いて攻める、浜野佐知の剛腕が清々しい。
 事故死した両親が遺した家に二人で暮らす、秋山辰彦・寅彦(新改)兄弟。法学部の寅彦は同じ大学の医学部に通ふ辰彦の留年を危ぶみ、辰彦との上下は不明ながら、寅彦からは先輩に当たる中嶋か中島エイコ(水嶋)に兄の家庭教師を乞ふ。エイコが秋山邸に出入りするやうになつて一ヶ月、辰彦とエイコが普通に男女の仲になる中、エイコは在学中の司法試験合格を目指し勉学に専念、女つ気の窺へない寅彦に妹を紹介する旨を約する。スーパーに寄つて帰宅した寅彦と、門前で様子を窺つてゐたエイコの妹・ナオ(悠木)がコンタクト。のつけから空腹を訴へた天衣無縫なナオは、寅彦に振る舞はれたナポリタンのお礼にと挨拶程度の気軽さで尺八を吹く。
 配役残り、痩せぎすな分、不思議なことに二十年後の今より老けて見えるやうな気もする吉行由実は、家出して来た娘姉妹宅が手狭であると秋山邸に転がり込む、エイコとナオの母・郁代。全盛期のギラついたオッサン臭さが絶品な甲斐太郎が、家を出た嫁を追ひ矢張り秋山邸に怒鳴り込む、郁代の夫・ゼンゾー。
 周防正行のデビュー作「変態家族 兄貴の嫁さん」(昭和59)と、何となく元題が似てゐなくもない浜野佐知1997年第五作、ピンク限定だと第四作。DMMスルーの旧作が、小屋に飛び込んで来る僥倖に心滾らせる。病的に呑気な兄はてんで意に介さないものの、一人また一人と増殖して行く中嶋家の面々に、浸食される我が家に弟は気を揉む。脊髄で折り返して邪推するに、そもそも血が繋がらなければ婚姻関係にもない、疑似“乱交家族”なる特異なモチーフに山﨑邦紀は何程か込めたものかも知れないテーマを、浜野佐知はザクッと等閑視。濃厚かつ重量級の絡みをひたすら畳みかけるに徹する始終は、今回女性上位主義は全く薄いにせよ麗しき旦々舎仕事。顎と―新改幸紀もだが―へべれけなリップシンクに目を瞑れば均整の取れたプロポーションを輝かせる水嶋眞由と妖艶な吉行由実に、軽快なボーイッシュで全方位嗜好への対応を完成させる悠木あずみ。三者三様、三花繚乱の女優部に恵まれた裸映画は、磐石の安定感を以て咲き誇る。


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