真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「肉体販売 濡れて飲む」(2017/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/しなりお:筆鬼一/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/録音:小林徹哉/音楽:友愛学園音楽部・OK企画/助監督:江尻大/監督助手:村田剛志/撮影助手:高橋草太・小山樹里/スチール:本田あきら/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:きみと歩実・清本玲奈・和田光沙・橘秀樹・山本宗介・森羅万象・吉田俊大・広瀬寛巳・周磨要・あぶかわかれん・佐賀裕子・久須美欽一)。出演者中、広瀬寛巳から佐賀裕子までは本篇クレジットのみ。
 “元気一発!健康第一!リフレット!”がキャッチの栄養ドリンク「リフレット」の販売員・リフレディ―要はほぼほぼヤクルト―の月野ユイ(きみと)が、川辺をチャリンコで流し流し軽く自己紹介してタイトル・イン。得意先のマンションを回つてユイが帰社すると、オフィスには支店長の出口裕二(山本)唯一人。関根和美ばりにユイが出口とのオフィス・ラブのイマジンを轟然と膨らませる呼び水となる、「イケメンでせう」云々とカメラの方を向いて語りかける往年のといふか昔年のウノコー調は、グルッと一周しかねないくらゐに苔生したメソッドを、しかも全篇通し抜くでなく序盤で易々と放棄する。特徴的な割に徹底しないギミックといふのも、いい加減のいい加減さが量産型娯楽映画ぽくなくもない。ところで、あるいはついでに。ユイが夜学でフランス語を学んでゐるとかいふ設定には、枝葉も満足に飾らない程度の意味しかない。それとも何かな、この男が無粋なだけで、“外国語を勉強中の女”といふのは何気にひとつの成立したカテゴリーなのか?閑話休題、ところがお気楽なまゝ話は進まず。ユイが出口とゐられる何処そこ支店は、閉鎖の危機に瀕する営業不振に喘いでゐた。ユイの悪戦苦闘も実らない一方、出口はリフレットを18本飲みながら唱へると願ひ事が叶ふだなどといふ、豪快か他愛ない都市伝説をSNSで拡散する奇策を思ひつく。ツッコミ処は多々あれ、とりあへず過ぎたる有効成分が体に悪影響を及ぼしはしまいか。そもそも、一本100mlとしても1.8ℓだぞ。
 配役残りあぶかわかれんと佐賀裕子は、オフィスに見切れる二人とも同じやうなガタイのリフレディ要員、眼鏡かけてない方が多分あぶかわかれん。思ひだした、出口がオフィスで電話を受ける顧客の高橋は、竹本泰志にさうゐない。前作「悶絶上映 銀幕の巨乳」(主演:神咲詩織)のポスター出演を等閑視すると、加藤組出演は2009年第一作「祇園エロ慕情 うぶ肌がくねる夜」(脚本:岡輝男/主演:椎名りく)以来となる久須美欽一は、ユイの上得意で独身資産家の灘良作。左目が殆ど開いてゐない以外は、快調なコンディションを窺はせる。そして山宗よりもビリングの高い橘秀樹が、身の回りの世話―以上の意味合ひも込み―で邸に出入り、灘に可愛がられる便利屋の進藤龍彦。周磨要は、ユイに乞はれての灘の紹介が空振りする、澁澤商事社長の澁澤季弘。森羅万象も、平井に続きユイが灘の紹介で訪ねる、平井建設社長・平井淳。軽く夏井亜美(ex.桜井あみ)似の清本玲奈はユイが助言を仰ぐ、顧客であつた社長の玉の輿に乗つた先輩リフレディ・桃井紀子、旧姓清本。中盤まで温存されつつ、集中砲火的に潤沢な濡れ場を披露する。この人は決してデカさに頼るだけでない、お尻の綺麗さが素晴らしい。吉田俊大が、紀子に乗られた玉の輿・桃井哲夫。大胆にして秀逸な荒業で裸を飛び込ませた吉行由実2017年第二作「人妻ドラゴン 何度も昇天拳」(アクション監督・共同脚本:小田歩/主演:二階堂ゆり)をも易々と超え得る、圧倒的かつファンタなエモーションを爆裂させる和田光沙はネタバレ回避不可につきさて措いて、無体なオチ担当の広瀬寛巳は、哲夫の女癖の悪さに匙を投げた紀子が、他の女から相手にされないやう醜く老けるのを願つてリフレットを18本飲んだ結果、確かにその通り成就した姿。醜く老けたver.がひろぽんて、ピンクの妖精を捕まへてあんまりだろ(笑   >笑ふとるがな
 今時年四本と竹洞哲也に次いで重用される、加藤義一2017年最終作。竹洞哲也同様、生え抜きゆゑ当然の扱ひといへるのかも知れないが、それをいふなら国沢実や、大絶賛今をときめかない荒木太郎も同等なんだけどな。とりたてて腹を立てるほどの綻びもない反面、新味なり面白さも特にどころでなく見当たらない。この期に及ぶと案外珍しい、一山幾ららしい一山幾ら作かと高を括つて、ゐたところ。内輪的な小ネタかに思はせた、久須りん―と山宗に捻り出させた嘘から出た実―に実は周到に撒かせてゐた伏線が着弾するや。一気呵成に濡れ場に突入してゐればといふ心も残さないではないものの、史上空前の超奇襲を繰り出したワダミサ投入は、同時に多義的な一大妙手。単にスマートなだけでもなかなかないが、斯くも鮮やかなサプライズを弾けさせる三番手を、些かの誇張でなく観た試が俄かには出て来ない。ダッサダサにダサいプリミティブ極まりないシークエンスを、俳優部の決定力におとなしく委ねた無作為な演出が功を奏するクライマックスも締めの強度と輝きとに満ち、下手に映画を気取らず終始明るい画面の中で、きみと歩実の健康的な肌の美しさは映える。原因は未だに不明な、岡輝男が一線を退いて以降長く脚本家に苦労した加藤義一にも、漸くどころかやつとのことで光明が差して来たのか、ワーキャー騒ぐほどでも別にないにせよ、カト・ストライクス・バックを軽やかに告げる良作。何時の間にか気がつくと加藤義一も十五年選手を通過、ここいらで開けて呉れないと、困る以前に話にならないからな。
 和田光沙の配役は、進藤と結ばれたい久須りんもとい灘が、リフレット18本で女体化した良作改め良子


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