真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻ドラゴン 何度も昇天拳」(2017/制作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/監督:吉行由実/脚本:吉行由実/撮影:藍河兼一/録音:大塚学/音楽:柿崎圭祐/編集:中野貴雄/助監督:江尻大/アクション監督・脚本:小田歩/整音:西山秀明/効果:うみねこ音響/グラフィック:竹内雅乃/タイトル:佐藤京介/スチール:本田あきら/アクションスタント:翔空手道スタントティーム 北岡剣山・北岡あい/監督助手:増田秀郎/撮影助手:赤羽一真・真木千鶴/ポストプロダクション:スノビッシュプロダクツ/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:松岡邦彦・泉正太郎・翔空手道クラブ、もう一名/挿入歌:「Death and Axes」/出演:二階堂ゆり・和田光沙・冴島エレナ・Nick Puma・Mark Chinnery・Eduardo Ferrada・Nicolas Alexis・Sergey Viasov・Iolanda Santos・国沢実・泉正太郎・白石雅彦・岡元あつこ《友情出演》・竹本泰志・柳東史・樹カズ)。出演者中Eduardo Ferradaから国沢実までと、泉正太郎・白石雅彦は本篇クレジットのみ、絶妙な情報量に屈する。
 凄え!デン・デン・デン・ヒャヒャヒャヒャーン、長方形三つで“Y”の字を形作る、ゴールデン・ハーベストを完コピしたオフィ行ロゴが超絶カッコいい。銅鑼の音一閃、案外どころでなくアッサリしたタイトル・イン。明けてフィルム風の画像処理もキメッキッメに飛び込んで来るのは、バタフライマスク着用の北岡あい。如何にもそれらしき劇伴がドンガドンガ爆音を鳴らす中、切れ味鋭い空手の演武にジャンジャカ叩き込まれるオープニング・クレジットも完璧、吉行由実の“導演 脚本”クレジットに痺れる。
 俳優部の先陣を切るのは、カメオがまさかの岡元あつこ。アパート前の掃き掃除に精を出す桜木玉仙(岡元)は、何しに日本に来たのか不明なイケメン米国人ナード・ダニエル(Nick Puma)のゴミ出しにダメ出しする。その場に顔を出した同じ「小河原ビル」の住人・宮城マヤ(二階堂)が、面倒臭い人間に絡まれてゐるダニエルに助け舟を出すと、実は霊視能力を有する占ひ師とかいふ素性を後々明らかにする玉仙が今度は、マヤとダニエルに強い縁“パワー”を感じると目を爛々輝かせる。ものの、マヤは遅れて現れたDV彼氏・悦史(柳)にカッ浚はれる。ヤナーギーの、フラワーに片足突つ込んだオラオラ造形は安定してゐる。
 配役残りMark Chinneryは、カンフー映画、とりわけJAC(現:JAE)好きが昂じて来日したダニエルの友人・ニック、行間埋め係。竹本泰志はマヤの父親にして、ニックが入門する白鶴流空手の十四代宗家・長賢。和田光沙は白鶴流目下一番弟子の友里恵で、その他道場要員は北岡剣山・あいに五段を所持する小田歩をも含めた翔空手道クラブの皆さん、小田歩は海外で師範代を務めてゐた模様。そして泉正太郎が、道場に長賢を見るから怪しげな風情で訪ねる謎の男。白石雅彦は、マヤ・ミーツ・悦史の噛ませ犬となる酔つ払ひ。白石雅彦を瞬殺するも、悦史に強い女は嫌ひだと梯子を外されたマヤが、以来空手を捨てる不自然な因縁。冴島エレナは、マヤが掃除婦のパートに憂身をやつしてゐる間に、悦史が連れ込む浮気相手・春奈、惚れ惚れするほど綺麗なヒット・アンド・アウェイを披露する大絶賛濡れ場三番手。JCVDに通ずる凄味のある色気を爆裂させる樹カズが、白鶴流に敵対する悪の空手組織「黒蛇会」のボス・高山。Eduardo Ferradaから国沢実までは黒蛇会の構成員、多国籍部隊に国沢実を潜り込ませる配役センスが絶品。
 最新作が撮了した吉行由実の、2017年第二作。ダニエルのパラノーマルなアシストでマヤが悦史と手を切つた流れに乗じて、ダニエルはマヤにザクザク求婚。少々乱暴だが、さうしないと“人妻ドラゴン”が成立しない。脊髄で折り返して受諾したマヤは奥儀「真鶴」の完成を目指し白鶴流に復帰、ダニエルも入門する。入門しての、二人の稽古シークエンス。李小龍が「死亡遊戯」で着用したトラックスーツを、あらうことかビキニ状に変形した二階堂ゆりの衣装が爆乳の威力も借り、クッソ鬼どエロくて猛感動。ほかの映画的な全てをこの際忘れてしまふたとて構ふものか、その主演女優のショットだけでとりあへず木戸銭の元は取れるのも通り越して大黒字。どう無理を押しても盛り込み不能に思へた二番手の絡みを、イマジン百合で処理する予想外の大技も見事に決まり、画像処理を適宜駆使する藍河兼一の作る画面は非常に美麗で、大体二打席に一度仕出かしながらも、基本好調を維持する吉行由実がスマッシュヒットを超えた娯楽ピンクの傑作を遂に放つものかと、俄然前のめりかけた、けれど。外人部の大部屋ぶりに関してはさて措くにせよ、過積載の大風呂敷展開がトッ散らかつた挙句、ナベシネマばりの駄CGを乱打する終盤は、流石に勢ひ余つた風は否めない。前述したマイクロトラックをクライマックスに於いても、否クライマックスに於いてこそ二階堂ゆりに着せてゐれば、全体的な評価も全然変つてゐたらうにと思へて仕方ない画竜点睛の欠如感も惜しまれる。とまれところで今回黒蛇会を壊滅させた訳では別になく、続篇で捲土重来を図るのは全然アリ。そこで「悦楽の性界 淫らしましよ!」(2011/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/主演:西野翔)以来の大復帰となる、先般引退を表明した亜紗美を引つ張り出せたなら、超本格の功夫ピンクでこの期に及んで量産型娯楽映画の歴史を変へられるチャンスは大いに見込めるのではあるまいか。

 雑な与太を吹くと、もしも仮に万が一続篇の製作が決定した場合、帰国した(仮定)Nick Pumaは死亡したことにでもして、“未亡人ドラゴン”で如何。


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