◉お手柄、お手柄

2019年6月15日(土)
◉お手柄、お手柄

深夜になると交差点から工事の音が聞こえる。夜が明ける頃には静かになるので、どこを掘り返しているのだろうと明るくなってから路上を観察すると、不忍通りの歩道が黒いアスファルトで覆われ埋め戻されている。その歩道沿いには義父が世話になった昭和高齢者在宅サービスセンターがあり、そして東洋文庫、日本医師会館、駒込警察署など人々が集まる施設が並んでいる。そのくせ歩道は歩行者が歩いてすれ違うのがやっとくらい異様に狭い。妻はその歩道で車イスを押して父親の送迎をしていたが、狭さと傾きと段差に泣いていた。不忍通りはわがマンションのある側に拡幅計画があるが、反対側も交差点あたりでもう少し削る必要があるのではないか。午前3時過ぎまで工事音が聞こえていたが、4時近くなって雨音にかき消されつつ終息した。工事のみなさん、お疲れ様でした。

義母が使っていた古いカメラ、PENTAX オートロンの 35 mm レンズがとても良いので、パンフォーカスではなく正確なピント合わせをし、しかも絞らず開放で使いたくなった。ライカねじ込みマウント L39 のボディキャップにセンター出しして取り付け、無限遠を出して固定し、ライカ M マウントへの変換アダプタを介し、SONY E マウント用ヘリコイドつき M マウントアダプタでカメラに取り付けられるようにした。30 分ほどの工作。

工作後の試し撮り

工作を終えて時計を見たら午前 10 時をちょっと回っており、たいへんなことを思い出した。妻に話したら「見たい、行きたい、聴きたい!」と言われていたコンサートチケットのネット発売開始時刻だった。

日本ではめったに演奏されないショパン唯一のピアノ三重奏、ショパンの師エルスネルの三重奏をフォルテピアノで聴く稀有な公演!
ドイツ音楽評論家賞にもノミネート!レオンハルトの薫陶を受け、インマゼールの愛弟子である名手達が結成した、欧州の批評家が賞賛する気鋭のトリオが武蔵野のためだけに来日!
ショパン・ファン垂涎!感動と知的興奮の夜。
2019年10月7日(月) 午後7時開演
武蔵野市民文化会館 小ホール[地図]
出演
マルゴー三重奏団
荒木紅(フォルテピアノ)
クリストフ・ハイデマン(ヴァイオリン)
マルティン・ゼーマン(チェロ)
ショパン:ピアノ三重奏曲ト短調 Op.8
ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ ハ長調 Op.3
エルスネル:グランド・トリオ 変ホ長調
エルスネル:ピアノとヴァイオリンの為のソナタ へ長調(武蔵野市民文化ホールサイトより)

見上げる首が痛い最前列ではなく、四、五列後ろの真ん中より少し左寄りという妻の希望通りで椅子取りゲームを終えた。「お手柄、お手柄」とのことだった。桃太郎と犬である。

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◉コーナン・デート

2019年6月14日(金)
◉コーナン・デート

パン屋でパンを選んでいたら背負っていたバッグが女子中学生の身体に触れたらしく、「痴漢行為されたって訴えますよ!」と言う。態度と目つきが尋常ではないので、「じゃあおじさんと一緒に交番へ自首しよう」と言って連れて行き、「この子がいたずらされたと言うので…」と若いジャニーズ系の警官に説明したら、笑顔でかがみこんで「どうしたの」と聞く。イケメン警官に尋ねられたら「ううん、なんでもないの」などと言う。おやおやと呆れて振り向くと、女子中学生がいつのまにか男子中学生になっていた…という夢を見て目が覚めた。何か含意があるのだろうか。

十年ほど前まで、在宅介護のため義父母の住まいで寝起きしていた。呆けた義父がいつ騒ぎ出してもスクランブル発進できるよう、窓のない奥の納戸で寝起きしていた。よくやれたと思う。義父母が入所介護になってからの 9 年間は晴れて解放されて自宅に帰り、両親とも他界して昨年無人になったその住まいを片付けてまた戻ってきた。今は義父母の寝室だった窓辺の部屋で寝ている。この部屋で寝起きするのは初めてだ。介護が始まった年から 24 年経って親の年齢に追いついたら、まさに自分が義父になったような気がする。それでおかしな夢を見るのだろうか。早朝ベランダにスズメがやってきて「ジュッ、ジュッ」と鳴く。

「貝がら」という店名がいい。地元民が湘南デートでもするのだろう。

郷里清水に出張で出かけている友人から、ご亭主が「清水みやげにイワシぶしを買ってこいと言うけれど、どこに行けば買えますか」というメールがあった。駅前銀座『松尾商店』か清水魚市場『河岸の市』を紹介しておいた。きょう 6 月 14 日、清水テルサで高口光子と樋口恵子の講演があるのだという。

自宅に設置されたインターネット用モデムとルーターが目障りなので、なにか目隠し用になるものはないかと検索したら「モデム隠し」という検索キーワードがあって笑えた。みんな同じようなことを考えている。通販専用で実物が見られないけれど、ニトリに「ルーターやモデムも収納できるツートンカラーのコード収納ボックス」という商品があったので注文した。

引っ越しと模様替えで家具の転倒防止伸縮棒が必要になったので東京メトロ南北線に乗ってホームセンター『コーナン』まで買いに出た。中年女性四人組が
「女同士が待ち合わせて湘南デートならぬコーナン・デートじゃ色気がないよねぇ」
と笑い合いながら歩いていた。

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◉小さな引越し屋さん

2019年6月13日(木)
◉小さな引越し屋さん

「こういう変則的な引越しはどうやったらいいのだろうと話したら、カメラマンと編集者の夫婦が、自分たちが昨年手伝ってもらった業者が親切なので頼んでみろという。北池袋にある小さな編集事務所の引っ越しもそこにお願いしたという。こういう小さくて小回りのきく会社の口コミ情報は困った時の役に立つ。」(2019年6月6日(木)の日誌より)

その小さな引越し屋さんがやってきて家具の移動をしていたら、大きな輸入家具を部屋から運び出したもののエレベーターに入らない。事前に確認を受けたのだけれど、輸入代理店が完成品を持ってきたと記憶違いで答えていた。こちらが悪い。記憶を辿ったらその輸入家具は業者がエレベーターで部品を持ち込んで、廊下で組み立てて部屋に入れたのだった。思いもかけない事実がわかった途端に胃が痛くなった。大きな業者に頼んでやってくるバイト作業員なら万事休すの仕切り直しだけれど、小さい会社は社長が作業員兼任なので決断が早く、
「完全に元どおりになる保証はありませんが、こうなったらバラして運んで組み立て直しましょうか」
と言う。
「是非やってください」
とお願いしたら見事に分解して再組み立てしてくれた。分解組立の作業料も追加で請求してくださいと言ったら、作業代の名目で見積もりを出しているので追加料金はいらないという。むかし頼んだ大手引越し会社よりはるかに丁寧な作業を見ていて感動した。そのくせ驚くほど安い。これなら他人に薦めたい。無事引越し完了。

晴れてよかった

引越し当日で緊張しているせいか早めに目が覚めたのでちょっと硬めの雑誌を読んでいたら松本卓也という人の書いたものがとてもいい。面白いので二度読み返した。初めて聞く名前なので調べたら 1983 年生まれと驚くほど若く、医学者、精神医学者、現代思想研究者で京都大学大学院人間・環境学研究科及び総合人間学部准教授だという(雑誌発行当時)。この人が書いたものをもっと読みたくてたまらなくなったので『享楽社会論』人文書院、『症例でわかる精神病理学』誠信書房、『創造と狂気の歴史』講談社を近所の本屋に注文した。

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◉本が読めていいですね

2019年6月12日(水)
◉本が読めていいですね

「本が読めていいですね…」と羨ましそうに言われたことがある。「わたし本が読めないんです…」と告白されたこともある。返事に困るのは、文字を読むこと自体が困難である、読めても内容が理解できない、などなど病気で読めない人がいること、生活に追われて本を読む余裕がない人、長いこと読書から遠ざかったために読解力が衰えてしまった人など、様々な理由で気の毒なケースがあるからだ。

そういう本を読めないと聞いていた人が、最近ぐいぐい本を読んでいると聞くとなんだかホッとする。ホッとするけれど、本を読むことが良いことだとは思わない。無理をしてまで読む必要はないと思う。数年前に他界された出版社社長のTさんは面白い人で「本を読むとバカになる」と言っていた。そう言いながら本を作って売っているのでよく笑われていた。

Tさんが言いたかったのは、人はわざわざすすんで自分がバカになるようなことが書いてある本を読んでしまう不思議な傾向がある。バカの火種に油をそそぐことになるから本など読まない方がいいと言っていたのだ。本にもよるのだけれど Tさんらしくて懐かしい。多少の真理を含む暴論は薪雑把(まきざっぽう)で蟻をぶん殴っているようで笑える。

いよいよ明日 13 日は、亡き親たちと自分たちの住まい、ふたつをひとつに片付けてまとめる最大の山場で、朝から引越し業者がやってくる。母は「捨てるものでも綺麗にしてやらないとバチがあたる」と言い、祖父は「拾う人がいるかもしれないから綺麗にして捨てろ」と言っていた。引き取ってもらう家具たちもざっと埃を払って雑巾掛けしておいた。ペットボトルは水ですすいで捨てるとリサイクルに携わる人たちの助けになるという。

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◉京大的アホがなぜ必要か

2019年6月12日(水)
◉京大的アホがなぜ必要か

午前中 NTT が工事に来て新たにインターネット回線を開設していった。VDSL モデムとひかり電話ルーターを設置し、床に機器と電源アダプターとケーブルを拡げた状態で
「設置が終わりましたので指で画面にサインしてください」
とマイクロソフトのサーフェスを差し出す。余計なことはしない、言わない、あとはご自分でやってくださいねという工事方式である。それでいいのでサインしてやるとブラザーの小型プリンターで伝票が印刷され、そこにはいま書いた自分のサインが入っていた。年配の作業員だったがしっかりテクノ化しており、機器の初期設定はアンドロイドのタブレットを使い、スワイプやピンチイン・ピンチアウトを器用にやっていた。それらの機器がすべて平べったいアタッシュケースに収まってしまう。スマートな時代になったなと思う。最後に
「トイレ貸してください」
というのがアナログ的ではある。

スマートじゃないのが設置を終えた機器で、妻が
「またこういう無骨な機械が丸見えになっちゃうのね」
と溜息をつく。こういうものを隠す箱のようなものがあるんじゃないかと思い、午後からバスに乗ってヨドバシアキバまで行ってきた。良さそうなものがないので、後日ホームセンターで探すことにし、6 階の自転車売り場でブリヂストンの小型空気入れとワイヤーロックと安い LED ランプを買ってきた。

ヨドバシアキバ前ロータリー近くに東北新幹線明神坂ガードがある。住所は東京都千代田区神田相生町1番地になると思われる。2.6 メートルに高さを制限するゲートが設けられて侵入しようとするトラックを跳ね返すようになっており、
「自動車が衝突したのを見た方は、至急ご連絡ください」
と書かれている。アキバ詣でをした若者たちに千社札貼り的欲求を喚起するのか、ゲートの支柱にはたくさんのステッカーが貼られている。駒込駅行きバスが曲がる時にその名物支柱が見えた。

膨大な粗大ゴミを回収してもらうので三回に分けてネット予約した。コンサートもゴミ回収もネット予約の時代になっている。ネット予約しながら友人のブログを覗いたら『京大的アホがなぜ必要か カオスな世界の生存戦略』 集英社新書を書いた酒井敏(さかいさとし)が清水出身で同級生だと書いてある。中学でブラバン仲間だったらしい。

身近な飲み仲間に京大出身者が多くなって気になっていた本なので、読んでみようかとアマゾンで検索したら、同じ京大脳保持者である川上浩司が書いた『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか?  〜不便益という発想』インプレスが横から提案されたので、ごめんなさい、そちらを注文してみました。

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◉義母のカメラのレンズ再利用

2019年6月11日(火)
◉義母のカメラのレンズ再利用

「義父母が暮らしていた住まいの片付けを手伝っていたら、むかし義母に買ってやったカメラが出てきた。ピッタリサイズの小袋に入れて引き出しの奥に仕舞われていた。」
2019年5月8日(水)の日記に書いた。

残念ながら20年近く仕舞われたままだったので、思い出のカメラは電池が盛大に液漏れして壊れていた。このカメラは厳選して買ったもので、PENTAX LENS 35mmF2.8 という非常に優れたレンズがついていた。ネット検索しても評価が高い。5群5枚のレンズがきっちり接しながらレンズブロックになっていて中に絞り羽根はない。合理的に組み立てられて、しかも精度が出やすかったのではないか。レンズ後ろのビハインドシャッターが絞りも兼ねていた。

ということはミラーレスカメラのボディキャップなどにフランジバックを調整しながら取り付け、レンズ後面に小さな円形絞りを挟んでやれば、工作精度の悪さを帳消しにしつつ、写ルンです的に使えるパンフォーカスのスナップ用レンズになる。ものを捨てられない老人には「捨てることが供養です」と説得するといいと聞いたけれど、レンズだけでも捨てずに残して映像を再生するというのは、供養として良質なものだろう。壊れたオートロンからレンズを取り出し、仕事の合間ににちょっと工作してミラーレスカメラ用交換レンズを作ってみた。

ライカ M 用のプラスチック製ボディキャップが余っていたので内径ぴったりの円形型紙を作り、それを突っ込んでキャップの中心を出し、手製の治具を使ってオートロンのレンズがぴったりはまる穴を開けた。レンズを装着してミラーレスカメラに装着してみると、1ミリ弱のオーバー・インフなので、トイカメラ用のレンズキャップに穴を開けてスペーサーにし、逆向きにしてレンズフードも兼ねた。上手い。ごくわずか前ピン気味になったので無限遠が被写界深度に入るまで絞り穴を小さくし、これで近距離から無限遠までピントの合うスナップ用35ミリレンズができた。

【オートロンのレンズ試し撮り】

【オートロンのレンズ試し撮り】

夜になってスマホを開いたらカメラマンの友人の奥さんからメールが届いており、清水テルサで高口光子と樋口恵子の対談があるという。高口に清水の珈琲焙煎店主を紹介しょうかと言うので、彼女は高口を知っていて老健施設『鶴舞乃城』で出張実演販売をしたことがあると返信した。返信しながら思い出した。ということは十数年前、清水橋脇の串揚げ屋『剣(つるぎ)』で高口と飲んだとき、カメラマンの友人夫婦は珈琲焙煎店主に会っていたわけだ。先月、中河内のたけのこ掘りに誘ったら互いに「はじめまして」などとあいさつしていたが、初対面ではなかったのだ。人の記憶は消えて行き、『剣』は火事の貰い火でもうない。

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◉ワンタッチピクニカ

2019年6月10日(月)
◉ワンタッチピクニカ

むかし好きで壊れるまで乗りつぶしたブリヂストンの折りたたみ式自転車「ワンタッチピクニカ」を清水の友人にもらった。(◉清水と自転車)それを清水の珈琲焙煎店主にお願いして、清水の自転車店で修理してもらい(◉「清水と自転車」その後)、上京のついでに届けてもらった。押切の恩師宅、桜橋の珈琲焙煎店吉川の自転車店を経由して、はるばる駒込までやってきた。

珈琲焙煎店主夫婦が自転車を積んで清水を朝早く出ると言う。「早く」とはおそらく夜明けと同時に走り出すという意味だろうと予想がついたので、早起きして駐車場の空き具合を確かめていたら「首都高速 5 号、早稲田あたり」というショートメールが携帯に届いた。時計を見たら午前 7 時ちょうどだった。届いた自転車は綺麗にタイヤ交換されていた。

女子体操競技平均台で県大会優勝の女性店主に腰痛予防の実技指導を受け、たくさんの与太話で大笑いし、浜の農園で採れた野菜をたくさんいただき、これから都内で働く息子さんの元に回られるとのことで早々に帰られたが、肝心の立て替えてもらった自転車の修理代金を払い忘れた。

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◉お父さんの仕事

2019年6月9日(日)
◉お父さんの仕事

デビー・レイノルズ(Debbie Reynolds 1932 - 2016)が歌った『タミー』をオルゴールにしたいと妻が言うので YouTube で探して聴かせた。スチール写真に重ねて歌詞が下から上に流れる動画になっている。曲が終わって歌詞が消えた途端、背景写真の一部が上から下へ動くのでびっくりした。長いこと静止画像上で動く文字を見ていたので、文字が消えたあと逆方向の錯視が生じたのだ。谷川のせせらぎをじっと見つめたあと、山の緑に目を移すと樹々が動いて見える現象と同じだ。

   ***

新聞を読まない妻が「新聞を読むのはお父さんの仕事」と言うのでしっかり読んでいる。未明にスマホアプリで大きなニュースをざっと読み、朝食前に細かいところを落穂拾いのように読んでいる。

浜離宮朝日ホールで「バルトルド・クイケン バロック・フルートリサイタル ドイツ・バロック音楽の精華」と題したコンサートがあるという記事を見つけた。古楽器のクイケン兄弟が二人でなく三兄弟であることを初めて知った。新聞を読まないお母さんに話すと「見たい、聴きたい、行きたい」と言う。ネット予約しようと朝日ホール・チケットセンターに会員登録してログインしたら主催のイベントしかできないらしい。チケットぴあに会員登録してバルトルド・クイケンで検索したら無事三列目の指定席がとれた。

2019年11月14日(木)浜離宮朝日ホール
バルトルド・クイケン(バロック・フルート)、渡邊順生(チェンバロ)
演奏曲目
ヘンデル:フルートと通奏低音のためのソナタ ニ長調 HMV378
ヴァイス:無伴奏フルートのための組曲 ト長調[リュート組曲からの編曲]
テレマン:フルートと通奏低音のためのメトーディッシェ・ソナタ 第4番 ニ長調 TWV41:D3
W.F.バッハ:フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BR WFB B17
J.S.バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ ト短調 BWV1020
C.P.E.バッハ:フルートと通奏低音のためのソナタ ト長調 Wq133(1786)

新聞を読まないお母さんに「お手柄お手柄」と褒められた。

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◉稲庭饂飩

2019年6月8日(土)
◉稲庭饂飩

 
近所の信用金庫から毎年この時期になるとダイレクトメールが送られて来て、同封された引換券を持って窓口に行くと稲庭饂飩をくれるという。口座があって定期的な振り込みもあるので、客として堂々ともらいに行けば良いのだけれど、なんだかちょっと照れくさい。ちょうど暑くて不快指数が高いので意を決して行内に入り、まっすぐ歩いてカウンターの前に立ち、
「あまりに暑いので稲庭饂飩を貰いにきました」
と言ったら窓口の女性が笑っていた。
 
 
仕事で使うソフトウェアに年間契約方式が増えている。仕事に欠かせない道具代や材料代だと思って粛々と年貢を納め続けている。そういうビジネスモデルを真似たいのか、スマートフォンやタブレットで使う小さなアプリまで、買い切りでなく年間契約方式で料金を請求するものが増えてきた。年間契約などする必要を感じないアプリは見切りをつけて削除している。
 
むかし描いていたイラストのシリーズを描き足す必要が生じたので、そのアプリを起動したら年間契約の画面が現れ、かつて無料だったものがバージョンアップを重ねるうちに有料になっていた。そういえば古いタブレットが、そのアプリのサポート対象外になってバージョンアップ不能になっていたのを思い出した。ということは古いタブレットは古いアプリが動く状態でお蔵入りしているのではないかと引っ張り出してみたら、ちゃんと無料アプリのまま使用できた。これで十分だ。『古いアプリをいま動かせるのは新しいタブレットじゃないだろう』という、よしだたくろう的に字余りなオチになった。
 
北大でフランス語教授をしている友人が学会で上京し駒込駅前のホテルに泊まると言うので、妻の友人二人を誘い、五人で近所の居酒屋を予約して飲んだ。
 
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◉転居通知

2019年6月7日(金)
◉転居通知

午前中、近所にある文京区役所の出張所に転居届を出しに行ったら、文京シビックセンター 2 階の戸籍住民課区民サービスコーナーでしか受け付けないと言う。文京区に出す転居通知は 4 回目だけれど、昔は近所の小さな出張所でも手続きできたような気がするのは記憶違いだろうか。仕方なしに地下鉄に乗ってシビックセンターへ出かけ、ついでに健康保険証とマイナンバー通知カードの住所変更も済ませ、住民票をもらって駒込警察署にまわり、運転免許証の住所変更もしてもらった。

引越しは大変だ。ただの物の移動ならともかく、親たちと自分たち夫婦、二世帯分を一世帯分にまとめながらなので業者任せにできない。新しい住まいへの移動、処分場への移動、リサイクル業者への移動、そして人間の暮らしの移動、それらのどれも、考え、悩み、決断しながら片付けつつやっている。そして残すところ大型家具の移動だけになった。

こういう変則的な引越しはどうやったらいいのだろうと話したら、カメラマンと編集者の夫婦が、自分たちが昨年手伝ってもらった業者が親切なので頼んでみろという。北池袋にある小さな編集事務所の引っ越しもそこにお願いしたという。こういう小さくて小回りのきく会社の口コミ情報は困った時の役に立つ。

電話したらすぐには現場を見に行く時間が取れないので、写真で現場を見せて欲しいという。なるほどと思ったので「わかりました」と答えた。「LINEで送ってください」「LINEはやってないんです」「携帯は持ってますか」「はい」「じゃあもう一度携帯からお電話ください。その番号にショートメールでアドレスをお知らせします」と言う。なるほど。

早速、家具ひとつひとつに背番号をつけて写真を撮り、今回の家具「大運送会」に出場する家具の写真付き一覧メールを作って送信した。いま大会の予算と開催日を確認している。

午後になってご近所さんに会ったので、炎天下外出して区役所まで行ってきたと立ち話ししたら、昔は近所の小さな出張所で諸手続きができていたと言う。やはりそうなのだ。普及が進まないマイナンバーカードのような構想もあって、窓口の電子化と合理的集約化が進んでいるのだろう。行政の窓口まわりの間に銀行まわりもしたけれど、電子的合理化によって公務員や銀行員などが大量に仕事と職場を失うような未来に向けて、公務員や銀行員が自ら進んで行進しているような異様さを感じた。人はどこに向かうのだろう。

そういえば昨日の電話に関する手続きでも、「窓口は大変混み合ってますが、パソコンやスマホをお持ちなら手続きはご自分でネットでできますよ」と案内係の若者が言うので、「めんどくさいから窓口でやってもらいたい」と言ったら笑っていた。皆がネット上で手続きするようになったら君たちは楽になるけど、それは仕事と職場を失って得る「楽」なのではないかと言いたくなる奇異な感じがした。大きな組織で働く若者たちは自らがよって立つ足場を解体させられているのではないか。

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◉栄螺堂(さざえどう)

2019年6月6日(木)
◉栄螺堂(さざえどう)

乗合バス車内で流される音声広告はなぜか記憶に残りやすい。埼玉の老人ホームへ通った国際興業バスでも、都営バスでも、各種クリニック、学習塾や珠算塾、漬物屋やビューティサロンなど、耳について忘れられない音声広告がある。体験の質が違うのだろう。

先日、吉祥寺駅から国際バスに乗ったら、音声広告が流れて「過去は変えられなくても未来は変えられます」と言う。たいがいの人はそう言われて「そりゃそうだ」と思っているのだろう。個人の自由な意志で制御可能な範囲ではそう言える一方で、過去の「歴史」は学者の「解釈」によってつくられている。「事実はひとつだけれど、歴史には学者の数だけ『真実』がある」と言われるゆえんである。そういう意味から言えば「起きてしまった過去は解釈次第で変えられるけれど、起きていない未来は変えられない」という考えのほうが馴染み深い。だから聞いた瞬間「えっ!?」と思った。逆の方角に希望の光を見る人もあるだろう。

引っ越したので配達先を変えてくださいと張り紙しておいたら、新聞が今朝から新居に届き始めた。紙に書いた伝言が通じるのは嬉しいものだ。「あの人には言っても通じないから無駄です」という慣用句がある。理由はさまざまだけれど、言っても書いても相手と意思が通じないのは悲しい。しかし、悲しむ前に「こちらの言い方が悪くて伝わりにくかったかもしれませんね」と、すぐ相手の立場になって反省できる人を尊敬する。そう心がけたい。

引っ越し作業で汗だくになり、風呂上がりに喉が渇いたので冷蔵庫にあったノンアル・ビールをこっそり飲んだら意外においしい。週 1 日だけ休肝日を決めている妻のための買い置きだけれど、これが飲めるなら週 1 日くらい付き合ってもいいかなと思う。今日は初めてのノンアル・デイにしてみた。

マイナンバー通知カードが届いて、またひとつ厄介な荷物が増えたと思い、失くす可能性のない場所にしまいこんだ。便利に使えるくせに実印同等のたいせつなものだと言われればそうなるだろう。便利と危険が抱き合わせのまま御都合が露わになっている。転居届けなど諸手続きに必要なので探しているけれど、そのしまいこんだ場所が思い出せない。きっと思い浮かばないほど安全な場所にあるのだろう。区の出張所で説明して再発行してもらうしかないと諦めかけたところで意外な場所から出てきた。意外な場所は見つけにくい。

福島県いわき市の友人から 20 音手回しオルゴールの感想が届いていた。かわいいシールが入っていて「娘のいる男は違うわね」と妻がよろこんでいた。介護が終わったら、いつか行ってみたいと思っていた会津若松の栄螺堂(さざえどう)を描いたポストカードが入っていて嬉しいけれど、あちらではお父さんの在宅介護が始まったという。

ジャスミンティーは眠りを誘う薬だと尾崎亜美が歌っていた。自分にとってアルコールがそういう保健薬だと思っていたけれど、ノンアル・ビールでも眠くなるもので、朝まで爆睡した。サッカーが無得点試合だったことも効いたかもしれない。

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◉1.5 ヘクトパスカル

2019年6月5日(水)
◉1.5 ヘクトパスカル

午後、東京ガスがやって来てガス器具の点検をした。メインはガス給湯器関連のチェックになる。わが家のは NORITZ(ノーリツ)のが付いているそうで、10 年近く使われていなかったことなどもログの記録から分かるらしい。たしか東日本大震災前に電子基盤の交換をしてもらった。あのころからガス給湯器も電子化が進んでいたのだ。面白いサービスマンでいくつかメーカー名を挙げながらマニアックな説明があり、故障の少ない人気機種なので保守部品の供給も心配なく、このままお使い頂けますとのことだった。午後は NTT ドコモで固定電話移転とインターネット回線引き込みの手続きをして来た。マンション内電話番号移転は珍しいケースだったらしく、現場担当者と電話で話しながら手続きした。

引越に関する諸手続きと片付けで今日も日が暮れた。その間に仕事のデータを送信しておいたら、夕方になってオーケーが出ていた。

日暮れに朝刊を読んだら「教えてドラえもん」に、日本の小学生数が最も多かったのは何年かとという質問があった。
第一次ベビーブームは 1947(昭和22)年から 1949(昭和24)年でこの頃に団塊世代が生まれている。就学年齢 6 歳を足して、答えは 1955(昭和30)年だろうかと思い、ページをめくったら正解は 1958(昭和33)年だった。新入学児童数ではなく小学校六学年の総数なのでそういうことになるのだ。勉強になった。わが夫婦が入学する頃の児童数は減少に転じていたわけで、中・高・大と団塊世代が過ぎて行った余熱を感じていたのを思い出した。

気圧は大雑把にいえば 10 メートル上がるごとに 1 ヘクトパスカルずつ低下する。義父母が暮らしていた上の階に引っ越したことにより、1.5 ヘクトパスカル分だけ気圧の低い高地で暮らすことになった。そのせいか疲れやすく、朝までぐっすり眠れるけれど、気圧ではなく気のせいだろう。

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◉弦楽四重奏団演奏会

2019年6月4日(火)
◉弦楽四重奏団演奏会

 
朝一番で水道工事会社を手配したら午前 10 時に若い作業員がふたりでやってきた。
 
昨日の家電量販店配達および設置作業といい、水道蛇口交換作業といい、今朝の排水管修繕作業といい、汗水垂らして働いている若者たちと話をすると好青年ばかりだ。それぞれの分野についてとても物知りで、質問をすると嬉しそうに説明してくれる。なるほどなぁと思う。専門分野において、彼らはたいそうインテリで、総合インテリより専門インテリの方が話に実味がある。
 
生き生きした若者の話を聞くのは楽しい。排水管作業の若者が「十年も使ってない部屋ならガス会社にちゃんと点検してもらったほうがいいです」と言うので、さっそく東京ガスに電話した。明日の午後、有料点検にやってくると言う。その有料点検作業時刻を外して、午前か午後のいずれか、電話とインターネットの変更及び契約手続きをする。明日もまた様々な専門職たちに会うことだろう。
 
 
夜は武蔵野市民文化会館小ホールで行われたアポロンミューザゲート弦楽四重奏団演奏会に行ってきた。いちど弦楽四重奏の演奏を最前列かぶりつきで聴いてみたいと思っていた。東京オリンピックの観戦チケットには興味がないけれど、どうしても室内楽演奏会の最前列がおさえたかったので、チケット発売開始時刻直前にログインし、キーボードを連打して手に入れた。壮絶な椅子取りゲームをして手に入れたのは 1 列 12 番と 13 番だった。
 
演奏曲目は、
シューベルト:弦楽四重奏曲第4番 ハ長調 D. 46
シューベルト:弦楽四重奏曲第9番 ト短調 D. 173
シューマン:弦楽四重奏曲第1番 イ短調 Op. 41 No. 1 
 
若々しくて素晴らしい演奏だった。永遠に若いシューベルト作品、その良さを改めて味わった。それにも増して、目の前で聞く生の音はこうだったのかと感動した。一糸乱れぬ無音からの繊細な立ち上がり、演奏者の息遣いまで聞こえ、オーディオ装置を通さない虫の鳴き声を初めて聴いた気がする。
 
 
二度目の武蔵野市民文化会館へは吉祥寺駅北口から国際バス[吉53]の柳沢(やなざわ)駅行きに乗る。地図で確かめると柳沢は西武新宿線の駅で、縦に北へ辿るとひばりヶ丘、新座、志木など、友人たちとともに馴染みのある地名が連なり、ああここは武蔵野原なのだなぁと改めて思う。その辺りの小さな病院で寝ていた T さんを思い出した。
 
 
このバス路線を利用するようになり、停留所案内の車内放送で、武蔵野社会福祉協議会ではなく社協名が武蔵野市民社会福祉協議会であることを初めて知った。なるほどなぁと思わせる町である。秋には武蔵野市民が誇るパイプオルガン演奏会チケットをとってあるので楽しみにしている。
 
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◉新しい生活

2019年6月3日(月)
◉新しい生活

十年間使われずにいた義父母の住まいに引っ越し、今日から新しい生活が始まった。

義父母が富山から引っ越してきて暮らし始めた頃は、南向きのベランダから東京タワーや霞が関ビルまで見えたが、高層ビルが建て込んでしまった今はもう見えない。建設中の東京スカイツリーも次第に姿をあらわしたが、東日本大震災発生時、すでにここを出ていた義父母はその光景を見ていない。完成したスカイツリーの展望台はしばらく見えていたが、交差点に新しいマンションが建ってもう見えなくなった。

生活初日から、長期間生活停止後の再稼働であれこれ不具合が見つかる。水回りでは水漏れ防止のパッキンが乾燥して劣化し、その機能を果たさなくなっている。二十四時間対応の水回り緊急サービスを呼んだらすぐにやってきたので水道の蛇口ごと交換してもらった。

ほっとして夕食準備をしていたら今度は流し台の排水管から水漏れが見つかった。二十四時間対応とはいえ夜間なので週明けに再訪問を依頼することにした。長期間使用停止後の再稼働は難しい。

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◉人生の九階裏

2019年6月2日(日)
◉人生の九階裏

 
同じマンション内で義父母が暮らしていた区画への引越し作業を仕事の合間にやっている。長年暮らした五階北向きの部屋から、親たちの在宅介護を終えた九階南向きの部屋に移る。人生の九階裏である。
 
ふたつの世帯を片付けながらひとつにコンパクト化するわけで、大量に物を捨てなが不用品を整理している。大型冷蔵庫はふたつもいらないのでひとつ処分し、義父が観ていた大型ブラウン管式テレビは場所を食うので廃棄し、ふたつある洗濯機はどちらも調子悪いので新しいのをひとつ買って置き換える。
 
最近の全自動洗濯機はどんな使い勝手なのか実際に触って決めたいと妻が言うので、先日見つけた大型家電量販店に、東京メトロ南北線でふた駅揺られて出かけた。
 
測ってきた寸法内に収まるこれがよいのではないかと話しながらいじっていたら、阪神タイガースのロゴ入り半纏を着た若い女性店員が、「お目当ての機種はありますか?」と言う。
 
これが欲しいけど在庫はありますかと聞いたらタブレット端末で調べて「ございます」と言う。下見のつもりで現金も持たずに出てきたけれど、若い女性店員の勢いに乗って一気に必要な電気製品も買いそろえ、数年ぶりにカードで決済した。明日配達して新しい洗濯機を設置し、古い洗濯機二台、大型冷蔵庫と大型テレビ各一台を回収するという。一気に事態が進んだ。若さで歩みが加速した。よいことだ。
 
 
若者の勢いを借りて日曜日に生活の場を大移動し、一気に親たちが暮らした住まいでの新生活が始まる。暮らしの場は冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの電化製品に支配されている。電化製品の奴隷となるべく支払いと作業手配を終えたら、女性店員が
「確認が最後になって申し訳ありませんが、洗濯機設置場所の水道蛇口はどのタイプでしょう」
と聞くので、調べてきた蛇口タイプの絵を指差すと
「このクルンクルンと回るタイプですね」
と店員が言う。妻が
「あらクルンクルンだったかしら」
と言うので、
「間違いありません、厳密に言えばクルンクルンだった蛇口の先を外して古い洗濯機が設置されていたので、今はクルンクルンじゃないクルンクルンが付いています」
と答えたらバカバカしくて全員でにやけた。裁判長が
「被告人に尋ねます。蛇口は間違いなくクルンクルンですね?」
と聞く姿が思い浮かんだ。
 
ポイントが貯まるというのでカードを作ったら、阪神タイガースが試合に勝った翌日、買い物をすると獲得ポイントがクルンクルンと増えるという。
 
電化的諸手続きを終え、階下のホームセンターをクルンクルンと周りながら、明日の新生活で必要となる寝具の掛布などこまごました雑貨を買って帰宅した。
 
片付けの続きを汗だくになってやっていたらクルンクルンと日が暮れたので、北大でフランス語教授をしている友人から届いたホワイトアスパラを茹で、六甲おろしを歌いながら、四半世紀暮らした部屋で最後の晩餐にした。
 
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