路上にて

2014年3月20日

路上にて

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血圧が高いので長いこと薬を飲んでいる。そして血圧が高いこととはほとんど関係なさそうではあるけれど毎日早寝を心がけている。早寝をすると早起きしすぎてしまい、たいがい未明に目が覚めてしまうのだけれど、そちらは血圧と大いに関係がある。血圧が高まって目覚めたのかもしれないのに、あたたかい布団から抜け出して急に体を冷やすとさらに血圧が上がるはずなので、冬の間はなるべく布団から出ず、枕元に置いたスマートフォンで静かに新聞や電子書籍を読むことにしている。

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開高健の文庫本『ずばり東京』の電子書籍版を、寝床で横になったまま長いことかけて読み終えた。あまり読みたい本のない電子書籍の品揃えの中から未読の文庫本を見つけ、喜び勇んで購入してみたのだけれど開高健らしいすばらしい出来映えで感心した。やっぱり開高健はいいなぁと唸りながら読み終えたら、巻末ページに「昭和五十二年七月文芸春秋刊『路上にて 開高健全ノンフィクションⅢ』に所収」と書かれていた。所収と書かれた元の全集自体を持っているはずだと最後の最後になって気がついて「えーっ」と驚いた。

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大学は昭和四十九(1974)年入学で五十三(1978)年卒業なので、開高健全ノンフィクション刊行時はまだ学生だった。卒業して社会人になっても薄給ではおいそれと手の出せる全集ではなかったのだけれど、当時つきあっていた結婚前の家内が、誕生日に何か欲しいものを買ってくれるというので、当時住んでいた高円寺南近く、青梅街道沿いにあった阿佐ヶ谷の書店へ行って全巻揃いで買ってもらったのだった。

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本棚から『路上にて 開高健全ノンフィクションⅢ』を取り出して埃をはらい、奥付を見たら、1979年の四刷とあって大学卒業の翌年なので、やはり阿佐ヶ谷の書店で棚に並んだのを物欲しげに眺めていた頃と合致する。値段を見ると当時としてはずいぶん高いプレゼントをもらったものだと思う。



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全集の方は600頁近い丸背の上製本で、目次を見たら文庫本の『ずばり東京』はいくつかの章を抜き出して文庫本化したものらしい。元は昭和三十八(1963)年十月~三十九(1964)年十一月にかけて、「ずばり東京」と題して週刊朝日に連載されたものだが、文庫版に収録されていないものがずいぶんある。



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買ってもらって喜んで読んだはずなのに、全く記憶になかったというのも無礼な話だと思うが、35年も前の自分には今ほどの感受性がなかったということだろう。開高健は我が両親と同い年なので、記憶にないのは自分の頭が悪くて理解力がなかったからじゃないと甘えてそういうことにしておき、いい年頃になったのだというこで、もういちど開高健をすべて再読してみようと思う。

コメント ( 2 ) | Trackback ( )
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コメント
 
 
 
1930年生 (いがり)
2014-03-23 00:53:53
私の父も、開高健と同じ年の生まれです。
弟の名前は、開口さんと全く同じ名前(読み方も)だったりします。
そんな縁のせいか、私にとっても開高健は特別な作家です。中学生のころから配達されるサンデー毎日に載っていたエッセイ(多分、「開口閉口」)を楽しみにしていました。

その開高健の享年まで、あと3年となった自分に、ちょっと驚いています。

血圧ってちょっと前までは160以上が高血圧だったのが、今や130以上。業界(薬やさんたち)の要請ですかね?
私も震災後、高いから飲め、と医者に言われ、処方されていますが、飲んでも下がりません。飲むのをさぼっても、土日などのお休みの日に測ると平血圧なのですよ、本当に...。
 
 
 
1930年生 ()
2014-03-23 11:53:45
なんとまあ自分の友だちに1930年生まれの親を持つ人が多いのかと驚いてしまいます。陶然年格好的にそうなるわけですが奇遇ですね。

享年を見て自分が恥ずかしくなってしまう作家の一人が開高健で、博覧強記ぶりに圧倒されてしまいます。

震災と血圧に相関性を持ってしまわれた方も多いかもしれませんね。自分の場合は震災以降ひどく涙もろくなって、ちょっとしたことですぐ涙が出てしまいますが、たんに歳のせいなのかもしれません。
 
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