電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【アリバイ】
【アリバイ】
日常生活で「アリバイ」という言葉を使う機会は少ない。もとの言葉はラテン語の alibi で「他の所に」を意味するらしい。
刑事ドラマでは容疑者が事件現場にいなかったとことの証明を「アリバイ」という。他人の行為を犯罪に見立てて「アリバイづくりをしてるだけ」などといって「責任逃れ」を糾弾したりもする。「アリバイ」にはそういう汚れた語感がこもっているためか、あえて「不在証明」と書いて「アリバイ」とルビをふっている本を読んでなるほどと思う。心理学はフロイトが示してみせた自我の不在証明にしがみついていると批判している。
犯罪者の「不在証明(アリバイ)」は、その人間が別の場所にいたことの「存在証明」をもってなされる。別な場所にいた証拠があるから、その場所には不在だったのだと。責任逃れの不在証明は、人間はそこにいたが責任を負うべき中身の人間が不在だった、つまり肝心なときに心が「他の所に」いたということだろう。
たとえて言えばブレーキを踏むべきときにアクセルを踏んでいた場合、故意なら犯罪、故意でなければ過失で責任を伴う。そうではなく「間違いなくブレーキを践んでいた」と責任自体の不在を言いつのるなら、争点は「自動車は正常だった」ことのアリバイ崩しになるだろう。
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