相撲と笑い

2017年3月22日
僕の寄り道――相撲と笑い

相撲中継をつけたら、まだ取り組みの最中で勝敗が決していないのに、観客が拍手喝采して笑っており、なんとはじき出された行司が土俵下に転がり落ちているのだった。

笑いが生じた原因は、土俵内を逃げ回るようにいつもうまく体をかわしている行司が転落するという気の毒な滑稽さとは別に、行司なしでとられ続ける相撲がひどく奇妙に見えるということもあるだろう。

歌舞伎や文楽で黒衣(くろご)の存在が気にならないのは、役者や人形の動きに関心を集中しているからで、相撲もまた熱戦の最中に行司の存在が気になることは少ない。勝敗が決まる決定的瞬間は行司など見えないと言ってよい。

相撲取りに弾かれて土俵下に転落した行司に怪我はないかと感心が移動し、その悲劇的な瞬間も裸の大男が土俵上で熱戦を続けている。その厳粛と愉快が共存する奇妙さが、見る人に突発的な笑いをもたらしたのだと思われる。笑いは興味深い。

光文社古典新訳文庫からベルクソンの『笑い』増田靖彦訳が出ているので Kindle 版で読んでいる。


コメント ( 2 ) | Trackback ( )
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コメント
 
 
 
結構あるんですね。 (中子)
2017-03-24 21:57:39
 以前、行司さんが突き飛ばされたの見ました。
もちろん、テレビで。必死の形相で土俵に這いあがってました。
 
 
 
Re:結構あるんですね。 ()
2017-03-25 04:40:42
慌てて土俵に上がって勝敗を土俵下の審判員に聞いたりしています。命がけの仕事です。
 
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