【夏の二股】

【夏の二股】

二股(ふたまた)を辞書で引くと「もとが一つで末の二つに分れたもの」と広辞苑にある。

二股というのはぼんやり眺めているだけでもおもしろくて見飽きることがない。topology(トポロジー)とか位相などというむずかしい言葉を知らなくても、人生のさまざまな場面に嫌というほど登場する二股はすべての人にとってきわめて現実的な学問対象になっている。


OLYMPUS E-410 LEICA D VARIO-ELMARIT 14-50mm F2.8-3.5 ASPH

東京都荒川区西日暮里五丁目。左右に別れた道も、左右に別れた道によって挟まれた空間(家)も、どちらも都市の股である。

二股膏薬(ふたまたごうやく)という言葉があって内股膏薬(うちまたごうやく)とも股倉膏薬(またぐらこうやく)とも言い、「内股に貼った膏薬のように、あちらについたりこちらについたりして、定見・節操のない者」と広辞苑第五版にある。

具体的にどういう膏薬の貼り方なんだろうかと想像するとき、股を「脚の、膝よりも上の部分」(広辞苑第五版)と考えると具体的な股間への貼り方が分かりづらい。股間に限らず一つの領域が二つの領域に別れる分岐点に貼るということなんじゃないだろうか。

ぎっくり腰とまではいかないけれどちょっと腰が怪しいので、親たちが病院でもらって余っている膏薬を貼ってもらうことになり、腰の右と左とどちらに貼ればいいかと聞かれ、
「うーん、わかんないから真ん中に貼っといて」
などと言うのを二股膏薬(ふたまたごうやく)と言うのだろう。

辞書が言わんとするところをさぐれば、股は「脚の、膝よりも上の部分」であり、「脚の、膝よりも上の部分によって挟まれた空間」に広がりを持ち、「一つの領域が二つの領域に別れる分岐点のうちそと」を広汎にさす言葉でもあるのだろう。

( 2009 年 3 月に閉鎖した電脳六義園通信所 2007 年 7 月 30 日、15 年前の日記に加筆のうえ再掲載。)

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