【中心点】

【中心点】

友人のサイトに、郷里静岡県清水市の「中心点」の指標を撮影した写真が掲載されていた。
 
測量器を立てて、紐付きの三角錐を下げてぴったり位置を合わせる時に使用するような、丸に十の字の小さな釦だ。いったい何処にあるのだろう、清水の中心ってどの場所になるのかなぁと興味が湧き、気楽にメールで問い合わせれば済むのだけれど、それが一番つまらない楽しみ方なので、インターネットで調べてみた。
 
例えば日本という国の中心点。
兵庫県西脇市は東経 135 度、北緯 35 度の交差点にあたるため、「日本のへそ」と愛称をつけ、日本のへそ公園には、西脇市出身画家・横尾忠則氏の作品を展示する美術館があるという。
栃木県安蘇郡田沼町は「 X=rsin(π/2-ψ)・cosλ=rcosψ…」などという計算式で国土の中心を求め(真偽のほどは不明)、自ら日本の中心を名乗り、「日本列島中心の町」の碑を建立し、住民総出の手作りイベント「どまんなかフェスタ」を開催したりしているらしい。田沼町はその名の通り、老中田沼意次ゆかりの土地だ。
石川県珠洲市の禄剛崎にも日本の中心点であることを示す石碑が建てられている。
 
これらの「中心点」の根拠がよくわからないのに対して、なかなか面白いと思ったのは、長野県大鹿村にある分杭峠が日本の中心点であるという説である。
国道 152 号線にある峠で、20 年近く前、富山から清水に帰る時、そのまま一気に南下して浜松近くに出られそうな地図表記にだまされて通過した思い出の場所である。道が細まって農道のようになり、木の札に手書きで「国道」などと書かれている。心細いのでお百姓さんに、
「この道を真っ直ぐ行くと静岡県に出られますよね」
などと聞き、
「さぁなあ、行ったことがないから、わかんない」
と答えられたりしたものだ。秋葉神社に参詣する秋葉街道という古道で、結局車で行けるところまで行って引き返さざるをえなかった。
その分杭峠は中央構造線上にあり、日本列島の中心でぶつかり合う二つの地殻の力が盛り上げた突起で、エネルギーが蓄積された特異点であると電気通信大の名誉教授が書かれているという。

日本の中心はさておき、「清水の中心点」は何処かと、2 番目につまらない楽しみ方、「清水+中心点」で検索してみた。
ヒットした中で一番面白そうなサイトをクリックしたら、友人が管理者をしている「次郎長翁を知る会」のサイトで、「清水は東海道五十三次の中心点である」とある。その通り。
 
続いてクリックすると、清水市街地空襲を記録した頁。
1945 年 7 月 6 日夕方、テニアン島から飛び立った第 133 航空団のB29、136 機が 7 日 0 時過ぎ、油脂焼夷爆弾( M47 )を約 1 万 3000 発、テルミット・マグネシウム焼夷弾( M50 )を約 26 万発投下し、町の 52 %が焼かれ、337 名の犠牲者がでたという。その爆撃中心点は巴川に掛かる鉄橋と言うから、大正橋、僕の好きな金田食堂のあたりだろう。

さらにクリックすると、なんと静岡市・清水市合併協議会の議事録で、東静岡駅付近を中心点とするかどうかの議論をしていたらしい。最もつまらない中心点論だ。一極集中型から多極分散型へ移行することこそが求められている時代なのに恥ずかしい限り。
 
発端となった友人のサイトに戻ったら、清水中心点の画像は更新されて消えていた。
それも中心点らしくていいけど。

(閉鎖した電脳六義園通信所 2002 年 10 月 24日、19 年前の今日の日記に加筆のうえ再掲載。)

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