昨日の春散歩

2014年4月23日(水)
昨日の春散歩

00
雨が上がって乾き始めた歩道を歩くと、なぜか落ち葉の周りだけが濡れている。たいていそうなっているのが面白くてよく写真に撮る。濡れそぼった落ち葉と地面の間に毛細管現象で水が入り、雨が上がって地面が乾き、落ち葉も乾き初めて立体世界に戻り、毛細管現象が緩んで落ち葉の周りに水が染み出すのではないだろうか。

01
染井霊園はずれ、芥川龍之介の墓がある慈眼寺門前にある猫の額のような場所に「染井 花の会」の人びとが手入れされている花壇があって、牡丹が見事に開花していた。
「牡丹花は咲き定まりて静かなり花の占めたる位置のたしかさ」
という白樺派の歌人木下利玄(1886年 - 1925年)の歌を思い出した。利玄(りげん)を本名では「としはる」と読む。結核のため四十歳で亡くなられ、墓は木下家菩提寺がある岡山市北区足守にあるが谷中墓地にも分骨されている。

02
桜の花が散り、若葉が芽吹いて葉桜となると葉の間に赤いものが見える。萼(がく)についていた蕊(しべ)で、桜並木を歩くと頭の上へ間断なく降り注ぐ。雨上がりということもあり、それらが赤い絨毯のようになっていた。「桜蕊降る(さくらしべふる)」は春の季語になっている。

03
カラスノエンドウ(烏野豌豆)は通称で、正しくはヤハズエンドウ(矢筈豌豆)といい、マメ科ソラマメ属の越年草。中国名で野豌豆(のえんどう)というように、葉も実も食用になり、古代農業では栽培作物だった。現代人は食用となることを忘れてしまったが、カメラで寄ってアップにしてみると、アリたちがやって来て蜜腺をなめているのがわかる。

04
通称ペンペングサの果実が膨らんできた。春の七草でこれもまた食べられる植物。子どもの頃は文鳥の餌にするためよく摘んだ。果実を引っ張ってぶらぶら垂れ下がらせ、指で順転逆転させるとしゃらしゃらと音がする。子どもの頃、ちっとも三味線の音に似ていないではないかと思ったが、似ているのは果実と三味線のバチのかたちだ。

05
藤の花を鉢植えで咲かせているお宅をこのあたりでよく見かけるような気がする。本当にこのあたりでよく見かけるのか、植木職人が集まっていた染井村という先入観がそう思わせているのかはわからない。

06
染井霊園に隣接した専修院は染井村の植木屋伊藤伊兵衛の屋敷跡だと言われている。代々染井村の伊兵衛は襲名されることになっており、霧島から取り寄せた躑躅の生産者として名を馳せた伊兵衛は五代目(1667-1757?)。約6000坪といわれる庭に地植え、鉢植えの植物が配され、栽培種の見本園を兼ねた観光名所だった。専修院門前の藤棚も満開になっていた。

コメント ( 4 ) | Trackback ( )
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コメント
 
 
 
Unknown (浮雲)
2014-04-28 10:16:48
藤を家に植えると、「縁起が良くない」いや「とても縁起が良い」の両極端があるそうですが、どちら派ですか?
 
 
 
Unknown ()
2014-04-28 11:25:35
「藤を植えると家運が下がる」という話は初めて聞きました。「ビワを植えると病人が出る」という話は母からよく聞きました。また迷信ではなく「イチジクの木の下には蛇がいるから気をつけろ」というのは、清水の実家でも富山の実家でも、本当にイチジクの下に蛇がいたので面白いものだなと思います。

縁起が悪いと言われるヤツデも、我が母は人を招くと言って店や自宅前に植えており、本当に来る人には困らない人生でしたし、それによって良いことも多かったようです。

鰯の頭も信心からというし、自己充足的予言(self-fulfilling prophecy)という言葉もある通り、人は信じたことを意識しないうちに自分で実現してしまう傾向があるそうなので、両方ある言い伝えは「良い方を信じる」のが吉だと思います(笑)
 
 
 
Unknown (浮雲)
2014-04-28 12:02:23
そう言って頂いて、正解!を打ちたい気分です。
反対派は、おっしゃるとおり、花が垂れ下がるから「家運が下がる」らしいです。と、妻が少し言い張りました。
賛成派は、あのグングン伸びる弦の勢いが「隆盛」や「生命力の強さ」を表すとのこと。実は、ささやかな抵抗を押し切って小さな藤棚をつくったのです。
 
 
 
Unknown ()
2014-04-29 06:20:48
「どちら派ですか?」
と力がこもっていた理由がわかりました(笑)
藤棚、いいなあ。
 
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