S坂のクリスマス

2016年12月21日
僕の寄り道――S坂のクリスマス

仕事の打ち合わせ帰りに根津権現前から坂を上って本郷通りに向かって歩く。本郷通りに出る手前、駒込大観音方向から漱石の「猫の家」前を通って右手からやってくる道と、坂上でぶつかって丁字路になっている。その角にちいさな教会がある。

新坂(権現坂・S坂)
 本郷通りから、根津谷への便を考えてつくられた新しい坂である。根津権現(根津神社の旧称)の前に下る坂なので権現坂ともいわれる。
 森鴎外の小説『青年』(明治42年作)に、
「純一は権現前の坂の方へ向いて歩き出した。……右は高等学校(注・旧制第一高等学校)の外囲、左は出来たばかりの会堂(注・教会堂 今もある)で、…… 坂の上に出た。地図では知れないが、割合に幅の広い此坂はSの字をぞんざいに書いたように屈曲してついている」
とある。旧制一高生がこれを読み、好んでS坂と呼んだ。したがってS坂の名は近くの観潮楼に住んだ森鴎外の命名である。

文京区教育委員会

日本聖公会・東京聖テモテ教会、鴎外が「出来たばかり」と書いたその教会は 1903(明治36)年アメリカ人宣教師ウェルボーンによってこの地にひらかれた。

暖色と寒色が溶け合ってブルーブラックのインクで満たされる夕暮れの壺に、窓の灯とクリスマス飾りの温もりが浮かび上がって美しい。よい風景を見た。

丁字路を右折してまたすぐ左折し、文京学院大脇の私道くさい路地を足ばやに抜けると本郷通りに出る。今年は新年挨拶のポストカードを多少吸い込みのあるヴァンヌーボーで印刷したので、白山上「かみもと文具店」に寄り、宛名書き用にブルーブラックの筆記具を買って帰宅した。

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