【夏の地鳴り】

【夏の地鳴り】

7 月 20 日早朝、郷里静岡県清水に実家片付け帰省して目覚めた朝、近所の八幡神社でクマゼミが鳴いており、それが今年聞いたセミの初鳴きとなった。

その前日、JR 草薙駅に到着し、静岡鉄道草薙駅まで歩いたいたら街路樹から虫の声が聞こえ、日暮れの空を見上げて耳を澄ましたけれどどう考えてもアオマツムシの声であり、東京では夏の終わりを感じさせる風物詩であるアオマツムシの合唱が、郷里では梅雨明けと共に始まるのかしらと首をかしげたのだった。

東京に戻ったらまだ蝉は鳴き始めていなかったけれど、24 日早朝、六義園内からかすかにアブラゼミとミンミンゼミの鳴き声が聞こえた。「(清水より 4 日遅れの初鳴きか、これから賑やかになるぞ)」と嬉しくなったのだけれど午前 9 時近くになったらまたひっそりしてしまった。

坂下の商店街に買い物に出ると好物のトウガンが八百屋の店頭に並んでいる季節になっていた。

丸いトウガンの 1/4 カットが 150 円くらいであり、郷里清水の友人が聞いたら「いや高い!」と呆れそうな値段だけれど東京価格はそんなもので、150 円で一家四人の食卓に夏が来るのが嬉しい。今年は枝豆が高いような気がしてまだ一袋 500 円近くする。枝豆の名産地に生まれたせいか枝豆にはけちくさくて、晩酌時の「とりあえず枝豆」には贅沢すぎるのでまだ買えずにいる。八百屋が昔懐かしいアルマイト製の蒸し器で今年もトウモロコシをふかし始め、茹でたものより滋味があって 1 本 100 円なのでそちらを買って帰る。

断続的にセミの大合唱が勢いを増し、店頭にトウガンが無造作に転がされるようになり、高下しながら枝豆の価格が安値安定し、どこをどう切っても同じ夏の断面が現れるような日々が続くようになるなるまで、町を歩くと微かな夏の地鳴りがきこえている。

( 2009 年 3 月に閉鎖した電脳六義園通信所 2008 年 7 月 25 日、14 年前の日記に加筆のうえ再掲載。)

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