遠くの世界と近くの世界

2014年4月30日(水)
遠くの世界と近くの世界

00
特養ホームに義母を訪ねるときは首にカメラをぶら下げている。限られた世界の中で何か目新しいものを探すのは、写真という趣味の最小の楽しみ方の一つでもある。それでも写すものが見つからない季節もあるので、望遠や接写のきく飛び道具的なカメラを持っていくことにしている。

01
入所者居室ベランダに面した庭には、花が咲いて実がなる植物が植えられている。五月の主役は柚子の花かなと思って望遠で覗いてみたら、膨らんできた蕾の脇にカマキリの卵鞘(らんしょう)があった。一度に数百匹が生まれるので、孵化したした小さなカマキリが、枝から列をなして下っていく様子は感動的だと思う。そして、その中で生き残るのは数匹だけだという。過酷なものだ。

02
柚子のそばにあるブドウ棚に白いものがたくさんあるのでアップにしてみたら、ブドウの新芽は白く見えるのだということがわかった。小さな粒々の蕾がそばにあり、やがて花開き、受粉したものが房状の実になるのだろう。

03
遠くの屋根のアンテナに小枝をくわえた小鳥がとまったのが見えたので、超望遠で撮影し、帰宅してパソコンで見たら思いがけないものをくわえたモズだった。ちょんと止まって一瞬休憩し、さっと飛び去ってしまったので枝と見間違った。

04
老人ホーム玄関前のハナミズキを写真に撮ったら、花びらのように見える総苞(そうほう)の上に小さなアリがいた。幼い頃から思っていたことだけれど、アリの身長に人間をあてはめたら、とてつもない距離を歩いて、とてつもない高さへの登頂を果たしているわけで、大雪渓で手を振る登山家に見えた。

(2014年4月29日の老人ホーム訪問にて)

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