電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
男のスケール
2014年5月1日(木)
男のスケール
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00
八十歳近くなった叔父と清水で墓参りをした。仏花の丈を揃えるため、バッグの中から折り畳み式のハサミを取り出したら
「俺はそれのいかい(大きい)やつを持ってる」
と叔父が嬉しそうに言う。
01
線香に火をつけるため、使い捨てライターを使ったアウトドア用トーチを取り出したら
「俺はボンベ式のやつを持ってるけどやっぱ強力だな」
と叔父が嬉しそうに言う。
02
年をとって計算が苦手になったと言うので、僕も最近は電卓の世話になることが多いと言ったら、
「電卓はだめだ。小数点の数字なんていくら詳しくても実際の役に立たない。屋根を葺く瓦の数を計算するにしても、算盤の割り算なら余りが玉の数で出るんて、大工に見せて玉の数だけ左右を詰めてくりょうと言えば話が早いだ」
と嬉しそうに言う。
03
昔はルート計算まで算盤でやったと言う叔父が、最近は自分が何をしようとしてここに来たのかさえ忘れると苦笑いする。僕も仕事場で席を立って数歩歩いたら、何のために席を立ったか忘れることがあると言ったら、
「俺は玄関を出て家の脇を通って裏の物置の戸を開けようとして、何を取りに来たのか忘れてる」
と嬉しそうに言う。
04
叔父と話すとつねに年齢分くらいスケールを大きくした答えが返ってくる。幼い頃に別れてほとんど覚えていないが、父親とは常にこういう存在なのだろうかと思えて興味深い。
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