電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【雷門と雷おこし】
【雷門と雷おこし】
東京で過ごした小学生時代、郷里静岡県清水に帰省する際の手みやげは、決まって浅草雷門脇にある常磐堂の『雷おこし』だった。
軽いのに嵩(かさ)があって見栄えが良く、嵩があって見栄えが良いのに手頃な値段であり、たとえ長いこと仏様の前に供えておかれても日持ちのするもの、と考えると必ず常磐堂の『雷おこし』を思いついたのだと思う。
浅草名物『雷おこし』なら上野駅や東京駅でも買えるのだけれど、春・夏・冬の休みに息子を連れて帰省する母は、数日前になるとわざわざ都電を乗り継いで浅草に出て、雷門脇常磐堂本店で『雷おこし』を買うのだった。
ちゃんと本店で買うことにこだわり、清水で暮らすようになって上京する際も、お土産の清水名物『追分羊羹』は旧東海道追分の本店に行って買わないと気が済まない人だった。土産物には贈る者が込める精神的な重さがあり、雷おこしは軽くて重かった。
東京都台東区浅草、雷門前に立って大提灯を見上げると、なんだか郷里清水に帰る日が近いようで今でもそわそわした気持ちになる。
( 2009 年 3 月に閉鎖した電脳六義園通信所 2008 年 6 月 16 日、14 年前の日記に加筆のうえ再掲載。)
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