電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【手紙とメール】
【手紙とメール】
手紙は物質なので時の経過とともに古びていく。紙も、インクも、折あとも、見えない指の痕跡も、時の経過とともに朽ち果てようとする。
それに対してメールは電子情報に過ぎないのに、開くたびになまなましく、書き手の息づかいまで封じ込められたように古びない。
気になっていた友人のブログをのぞいたら他界され、息子さんが代筆で挨拶を書き込まれていた。もう手紙もメールも届くことはない。
メールボックスを開くと 2006 年以前のメールはパソコントラブルで失われているけれど、それ以降は、こんなにメールをもらっていたのかと意外に思うほどの本数が残されている。
古いものを開いたら、お父さんに続いてお母さんを亡くされ、無人となった実家に自分が戻ると決めたこと、そしてとぼとぼと親の遺品を片付けながら、片付けきれなかったものが自分の遺品とともに、この家ごと朽ち果てていくのかもしれないと書かれていた。
「ほんとうにそうなっちゃいました」
と笑い声が聞こえそうなほど電子メールは古びない。もう便りが届くことのないメールボックスがまたひとつ増えた。
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