消える革


Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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一昨年、ある大手スニーカーメーカーが、本革製のスニーカーの製造をやめるという発表をした。
以降の製品は、合成皮革製に移行していった。
本革で作られた製品も、流通在庫が少し残っていたが、現在はほとんど無くなってしまった。
新しい製品は動物を使わないヴィーガンレザーであり、リサイクル素材を取り入れたサスティナブルな設計になっている。

合皮製の製品を見たが、パッと見は見分けがつかないほど、外観は本革に近い。
合皮の問題点は、通気性が悪く蒸れやすいことで、履き心地では本皮に敵わない。
皴の入り方も何だか不自然で安っぽいイメージがある。
その上素材として長くもたないそうで、スニーカーのヴィンテージ品というものは、今後はなくなる可能性もあるという。

長くもたないとしたら、かえって環境に良くないのでは・・とも思うのだが(笑)
しかし合皮の製造技術も進歩していくであろうから、いつか欠点を克服した素材が登場するかもしれない。
それ以前に、無理に革の外観に似せて作る必要もなくなるだろうが・・・

毛皮に関しては、使用するのは「悪」という風潮になって久しい。
しかし一般的な牛革についても、いよいよ使用が許されない時代を迎えつつあるようだ。
死んだ生き物の皮を剥いで、それを身に着ける・・という行為自体が、残忍であると否定されているのだ。

牛の場合は白人のメインの食材でもあり、禁止しようにも経済的な影響も大きい事から、多少矛盾があっても押し通すのかと思っていた。
牛革という素材は、あくまで食用の牛から取れる副産物である。
今までは大量に牛肉を消費していたから、牛革も一定量の供給が維持されてきた。
牛肉を食べる生活を続けていけば、牛革もどんどん出るのである。

と思っていたら、代替肉の話を急に聞くようになってきた。
何でも最新のものは、本物と見分けがつかないどころか、下手な本物を上回るほど美味であるという。
新しい産業として注目されており、開発もどんどん進んでいるようだ。

一方で欧米の若い世代では、ベジタリアンが急増しているという。
肉自体を食べなくなってきたのだ。
たしかに筋肉モリモリのマッチョなタイプはもう時代遅れであり、スマートで淡白なタイプが主流になりつつある。
牛を取り巻く環境が、驚くほどの勢いで変化しているのを感じる。

牛肉の代替品が開発されれば、本物の牛は晴れてお役御免となる。
そもそも牛は、温室効果ガスの強烈な発生源でもある。
食用のために必要以上に増やしたことが、温暖化の大きな原因になっているのだ。
牛を消費する生活から脱する必要があるのは確かなのだろう。

SDGsでは主に2030年までに達成すべき目標が羅列されている。
あとほんの8年ほどしかないが、それまでにやっておかないと、人類の未来が危うくなることが沢山あるのだ。
期限が切られているので、当然世の中は否応なく急激に変わっていくことになる。
急に牛革を使わない話が出たのも、その一環であろう。

今後本革は貴重品となり、希少性が増していく可能性は高い。
となると、やっぱり今買うなら本革製のスニーカーだな。
・・・と思わず考えてしまったが、それではいけないのだよな。
僕もそろそろ革フェチを卒業して、合皮フェチに転向しようかと考えている(笑)
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