原価計算


Z7 + NIKKOR Z 24mm f/1.8 S

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当たり前のことではあるが、会社で製造する製品の原価に関しては、製品ごとに細かく計算する必要がある。
原価には、その製品を製造するのにかかった様々な費用を集計して出す実際原価と、資材の標準的使用量や加工に要した標準時間などを基にした標準原価がある。
現実の材料費や労務費、諸経費などを合計させた実際原価は特に重要である。
それが出なければ、その製品の販売金額を決めることが出来ない。

いくらで仕入れた材料をどのくらい使用しているか。
製品の製造にどのくらいの労務費がかかっているか。
会社の運営にどのような費用がかかるか。
福利厚生費や修繕費、電力費など直接的ではない費用も考え、実際にかかった金額をすべて考慮した上で、利益の出る販売価格を設定しなければならない。

言葉で言えばそうなるが、計算方法をよほど吟味しないと、机上の空論になりかねない。
各工程に時給いくらの人が何人がかりで何分間かけて製造するか。
その数値を積み上げていくことで、その製品の製造にかかった費用が出ると考えがちであるが、実際にはそう単純ではない。

そもそも人間が仕事をする時は、休んだり考えたりする。
それは必要な工程であり、それが入ることで、仕事の効率が上がっていく。
作業場を整理整頓したり、掃除したりする時間だって必要であろう。
また資材を準備したり、交換したりする時間も予想以上にかかる。
単純に製造工程にかかる時間だけを計測しても、実際にかかっている人件費とはかけ離れたものになる。

さらには作業員の能力の問題もある。
単純作業でも個人差が出るが、複雑な機械のオペレーションなどは、その能力差で稼働時間や効率に大きく違いが出る。
新人が入れば能力が低いので当然生産効率は落ちるし、それを向上させるための教育にも時間とお金がかかるだろう。

そこまでなら年間で支払った金額を生産量で割る事で平均を出せばいい・・と言うことになる。
それで1年間の平均的な数値は得られるだろう。
頭の中だけで計算してしまうと、そう考えがちである。

しかし実際に生産してみると、機械の突然の故障のように、製造上のイレギュラーなトラブルが加わる。
まったく予期しないタイミングで機械は壊れる。
30年以上安定して動いていたものが、ある日突然壊れたりするのだ。
こうなると平均もへったくれも無い。

機械を毎日動かせば、当然各パーツは日々磨耗していくし、それに応じて機械の調子も変わってくる。
パーツを定期的に交換すれば安定して動く・・というほど単純なものではない。
新品のパーツにした後の調整作業には大変な工数と技術が必要になる。
逆にひとつのパーツを交換した影響で、他のパーツの痛みが早まってしまうといった事も起きる。

しかもそういう古い機械が壊れた場合、補修パーツが手に入らず、修理に何日かかるか分からない。
基幹部分を生産するマシンが壊れた場合、ラインが全面停止するような事態が発生し、被害額も莫大なものになる。
それらをどうやって原価に織りこむのだろう。
機械の稼働を維持するには大変な労力と経験が必要で、単にスイッチをオンオフすれば動いたり止まったりするような単純なものではないのだ。

資材の使用量に関しても、現実には非常に複雑である。
たとえば気温や湿度によって機械の調子が変動し、上手く動くように調整した結果、使用する資材の量が大幅に変わってしまことがある。
さらにはその資材の供給元の会社でも同じことが起きるので、仕入れた資材の品質にも変動があり、外的要因で生産効率が変わってくる。

あまりに変動する要因が多すぎて、しかもその変動が定期的なものではなく、数十年単位でいきなり発生したりするので、正確な数値はおろか、平均さえ出すのが難しいのだ。
必ずどこかで「エイヤッ!」と勘で数値を入れざるを得ない項目が出てくる。
要はどこかで妥協が必要になってくる。
この商品の原価率は〇〇%です・・なんて簡単に言うが、それほど完璧な値では無いということだ。

「多分このくらいだろう」という担当者の直感に基づいた数値がどうしても混ざったものとなる。
しかしその結果の数字は、現実にはそれほど狂ってはいないのではないかとも思う。
エイヤで数字を入れても、担当者の長年の勘が生かされれば、「適当」ではなく「適切」な数値になるだろう。

要は原価の精度には限界があるということだ。
多分その事は皆がある程度分かっているのだろう。
ただ「原価は大体こんなものかと思いますよ」なんて真実を言ってしまうと怒られるので、まるでそれが正確な数字であるかのように「原価率は○○.○%です」と言い切っているに過ぎないのだ(笑)
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