レッテル


D800E + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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昔マカロニ・ウエスタンで、The good, the bad and the ugly という映画があった。
邦題は「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」である。
原題の意味は、良いやつ、悪いやつ、汚いやつ、とでも言うべきか。
要は、3人の一筋縄ではいかない男たちの、騙し合いを描いた作品であった。
それぞれのキャラクターを、クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォラックが演じた。

良いやつ、悪いやつ、汚いやつ・・という3種類の性格分けは、案外わかりやすいキャラクターの分類方法である。
映画の内容はパンチが効いていて、良いやつ(確かテレビの吹き替えでは「良い人」であった)のはずのイーストウッドが、単なる善人ではなく、実は一番頭の切れる策略家でもあった。
良い行いというのも、価値観の相違により様々な見方が出来る。
良いやつというのは、皮肉をこめての呼び名でもあった。

ところで動物にも、生まれながらのキャラクター・・というものがあるように思う。
もちろん単に外観からそう見える、というだけの、人間が勝手に決めてしまったレッテルである。
当人には可哀想な話であるのだが・・・

たとえばサメ・・・
これは「悪いやつ」の代表であろう。
「汚いやつ」に見えないのは、単純な生き物で、あまり頭が良くなさそうだからだ。

一方同じ海洋生物でも、シャチの場合は、頭がいいのに「悪いやつ」のキャラクターが合っている。
アシカを残忍に食べる映像や、集団で頭脳的な攻撃を仕掛ける映像が、よく流されるからかもしれない。
悪くて危険なやつという印象が強いのは、「海の殺し屋」の異名も効いているのだろう。

キツネやハイエナなどは、「汚いやつ」のイメージが強い。
これも微妙にキャラクターが異なり、キツネは「トラの威を借る」の印象が強いのか、悪知恵は働くが、実力が伴わないので「悪いやつ」までいかない印象。
ハイエナは外観でも損をしているが、あまり知的な印象はないし、残飯漁り専門という、そのダーティな行動も良くない。

カラスは世界的に、あの真っ黒な姿で、強い偏見に晒されている生き物だ。
「悪いやつ」と「汚いやつ」の中間くらいのキャラクターだろうか。
頭の良さでは群を抜いており、実際に生物界の頂点に立つという説もある。
人間から忌み嫌われ、いじめられても、それを跳ね返すだけの実力を持っている。

先日のヘビなどは、多くの人から嫌われ、いかにも「悪いやつ」に見える。
身近な存在でありながら、攻撃的な性格で、その上毒をもっている場合が多いため、極めて危険な生き物であることは確かだ。
しかし青大将などは大人しいし、なかなか思慮深そうにも見える。
付き合ってみると、案外そう悪いやつではないのかもしれない。

「いいやつ」といえば何だろう。
ツバメはいいやつだが、ハトは少々頭が足りなそうで、いいやつと呼ぶには弱い。
イヌは忠実であるし、これは本当にいいやつだと思う。
ネコの場合はもう少し高度で、性格も複雑に見える。
集団で復讐するといった行動も報告されており、単純に「いいやつ」の部類には入れづらい。

カバはユーモラスな外観から、いいやつの印象が強い。
最近はカバ同士が血まみれになって戦う映像が流れ、見かけと違って凶暴な生き物なのだという解説がつく。
しかし、大分以前であるが、傷ついて倒れそうになるシカを、カバが何とか助けようと寄り添う映像を見たことがある。
野生の動物が、自分以外の種族を助けようとするのを見たのは初めてだったので、ショッキングでさえあった。
もしかすると、カバは本当にいいやつかもしれないと思っている。

「いいやつ」に該当する生き物は、なかなか思いつかない。
そもそも自然界では、単純にいいやつでは、とても生き残ることなどできないだろう。
悲しいが、自分以外の種類の生き物とは、初めに対立ありきの関係なのだ。
もちろん実際に会話が出来るわけではないので、実のところ、彼らが本心で何を考えているのかはわからないのだが・・・
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