あひる


SIGMA DP1Merrill

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Mrs.COLKIDが、アヒルのボートに乗ってみたいと盛んに言う。
中禅寺湖に来るたびにそう言う。
湖畔には、アヒルのボートがいっぱい並んでいるのだ。
そうか、それなら一度くらい乗ってもいいか・・と思い、今回アヒルのボートを借りることにした。

船着場のおばさんのところに行く。

「アヒルに乗りたいんですが・・・」
「・・・え?」
「アヒルのボートに乗りたいんです」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「あ・・ごめんなさい。これ白鳥ですね」

30分1500円を支払う。
ロープで陸上に引き上げられた状態のスワン号に乗り込む。
おじさんが出てきてロープを緩めると、そのまま後ろから湖に滑り込む。

一応注意として、波が来たら正面から受けるように・・と言われた。
モーターボートや遊覧船の往来がけっこう激しいのだ。
スワン号は幅が広いので、安定感があって滅多に沈むことは無いらしい。
確かに、事故が起きたという話を聞いたことが無い。

いざ水上に出てみると、自分の座っているすぐ横に湖面がくるので少し怖い。
吸い込まれるような深い青・・・その下には何も見えない。
不意に未知の生物が顔を出し、スワン号を転覆させるのではないかと不気味に感じる。

足でペダルを漕ぐと、これが意外に速い。
どんどん進んで、案外簡単に湖の中央近くまで到達した。
ハンドルで操舵するのだが、風の影響か、あるいは水に流れがあるのか、船体が真っ直ぐには進まない。
ラリーカーのように、斜めの方向を向いたまま進んでいく。

旋回する時は、逆ハンドルを切って船体の回転運動を止める。
先を読んでカウンターを当てるので、オフロードの車の運転のようで面白い。
右へ左へとハンドルを切りながら進んでいく。
写真を撮ろうと思っても、その場にピタリとは静止してくれないので、スクリューを逆回転させて、動きを微妙にコントロールする。

遊覧船が近付いてきた。
スワン号と比べると、はるかに大きく見える。
やばいと思って、スワン号の首をそちらに向けるべく旋回運動をはじめる。
すべての動作にタイムラグがあるので、先手を打たなければならず、かなり難しいのだ。

大き目の波が迫ってくるのが見える。
てっきり遊覧船の方向から来ると思って、航路に垂直になるよう船体を回したのに、波は予想外の角度でやってきた。
船の進む方向から、波は三角形を描きながら斜めに広がるのだ。

その波をスワン号はまともに横向きで受けてしまった。
ガコンガコンと船体が左右に大きく傾き、スワンの首が激しく揺れる。
ひっくり返りそうなほど大きな揺れ方に、Mrs.COLKIDが悲鳴を上げる。
漕ぐのをやめて、とにかくスワン号にかじりつく。
湖面が目前に迫り、水が船内に浸入するのではないかと、恐怖に凍りつく。

何しろ湖の中央の、一番深そうなところでそれが起こるのだから、これは怖い。
大きな湖の中で、このアヒル・・じゃなくて白鳥は、何て非力な存在なのだろう。
スリル満点の乗り物である(笑)

そろそろ時間が迫っているので、船着場に戻ろうとした。
ところがスワン号は、なかなか前に進んでくれない。
向かい風のようだ。
行きは良かったが、帰りも同じようにはいかない事が、今になってわかった。

船着場を目標としていたのに、どんどん横に流されて、気付くとあらぬ方向に向かっている。
慌ててハンドルを回し、進行方向を調整しながらも、とにかく必死になってペダルを漕ぐ。
時間が迫っているというのに、漕いでも漕いでも前に進まないのだ。

最初は楽勝だと思ったが、ここにきて大変な重労働になってきた。
汗が噴き出してくる。
これは明日は筋肉痛だ・・と思いながら、二人でペダルを必死に回した。



SIGMA DP1Merrill
(船上より撮影)

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