ガス欠


SIGMA DP3Merrill

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ふと目をやると、ガソリンの残量がかなり少なくなっている。
仕事に追われていて、気を回す余裕が無かった。
一定以下になった時点で警告が出るので、残り少ないことは承知していた。
しかしスタンドに立ち寄って補給する時間さえ惜しかった。
もう少し後でいい・・と思っているうちに、本当に危険な領域に入っていた。
針はほとんどゼロを指している。

あと何キロ走行可能か・・が算出されて、インジケ-ターに表示される。
その数値が10キロを割っていた。
それでも、次のスタンドで補給すればいい・・と思っていたが、スタンドの少ない郊外に出かける用事が出来て話が変わった。

緊張しながら運転する。
なるべくアクセルを踏み込まないようにして、惰性を利用した運転に徹する。
先の信号の状況を考慮し、無駄に停止しないようにタイミングを計算する。
かといってあまりに遅いと周りに迷惑をかける。
なかなか難しい。

それにしても走行可能距離の数字は、何のデータを基に計算しているのだろう。
一定区間の平均燃費だろうか。
それとも今この瞬間の燃料消費量だろうか。

信号の少ない真っ直ぐな道を走っていると、けっこう数値が延びていく。
8キロと表示されていた走行可能距離が、パラパラと15キロくらいに増えたりする。
ところが市街地に入ると、今度は一気に5キロくらいまで減ってしまう。
意外に短い区間での消費量を、計算のベースに使っているようだ。

狭い道を通らねばならず、停止、発進、曲がりが多くなった。
すると、5キロと表示されていた走行可能距離が、4、3、2・・・と数秒で一気に減ってしまった。
あれだけ気を遣って運転していたのに、いきなりこんなラフな下がり方なんてありかよ!・・と言いたくなる。
慌ててアクセルから足を離したが、数値の減少の勢いは止まらず、あっという間に0になってしまった。
その時点でインジケーターに横棒が表示されて、数字が消えてしまった。

それきり二度と数字は出ない。
もう計測できない、後はしらないよ・・と車が言っているようだ。
エンジンは回ってはいるが、いつ止まってもおかしくない状態ということだ。
焦りながら、とにかくガソリンスタンドを目指す。

免許を取得して何年も経つが、ガス欠でストップするなんて一度も経験したこと無い。
それも街の真ん中である。
肝を冷やしながら車を進めた。
いくら正確無比なドイツ人だって、少しくらい余裕はみているだろう・・と祈るような気持ちで走る。

やっと営業しているスタンドを見つけて飛び込んだ。
とにかく、ハイオク満タン!・・にしてもらう。
手に汗かいたが、これで一安心である。
車のガソリンタンクの容量とピッタリの量のガソリンが入り、妙に感心した。
走り出しても、しばらくはケチケチ走る癖が抜けなかった。
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