酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

甘味が効き過ぎた「青い塩」

2012-03-26 23:15:54 | 映画、ドラマ
 「TPPはビートルズ」の野田発言に愕然とした。アメリカがジョン・レノンで日本がポール・マッカートニーなら両国は対等だが、日本はことごとくアメリカに追随している。この上下関係を前提にした日本の政治風土に、地殻変動の兆しがある。原発事故とTPPが、排外主義と無縁の<健全なナショナリズム>を胚胎させたのだ。

 ビートルズを生んだ英国で、宮市(ボルトン)が先週末、決勝アシスト(CK)でチームを降格ラインから浮上させた。いずれ宮市がアーセナルに戻り、香川(ドルトムント)がマンチェスターUのオファーを受けたら、本場で夢の対決が実現する。〝日本から来たジョンとポール〟……。現地メディアはこんな風に2人の才能を絶賛するかもしれない。

 新宿で先日、甘味たっぷりの韓国映画を見た。「青い塩」(11年、イ・ヒョンスン監督)である。中年男のドゥホン(ソン・ガンホ)と謎めいた若い女性セビン(シン・セギョン)の相寄る魂を描いている。

 ソン・ガンホといえば「義兄弟~SECRET REUNION」(10年)が記憶に新しい。「義兄弟」と「青い塩」には以下の共通点がある。

□背景…「義兄弟」は南北の緊張関係、「青い塩」は闇世界の勢力争い
□W主演…「義兄弟」は元韓国情報員のハンギョ(ガンホ)と北朝鮮工作員(カン・ドンウォン)、「青い塩」は元ヤクザとその命を狙う女スナイパーとの葛藤と交流
□テーマ…「義兄弟」は体制を超えた友情、「青い塩」は年齢差を超えた恋愛

 ドゥホンとセビンの出会いは料理教室で、レシピが滑車の役割を果たしている。塩田での銃撃からラストへの急転回はいわば予定調和で、伏線はたっぷり用意されていた。青がベースの画集のような作品で、ソウルの花火や海の光景など、監督の美学が全編にちりばめられている。

 及第点は付けられるが、絶賛とはいかない。時系的に逆になるが、「青い塩」⇒「義兄弟」の順に見たら納得しただろう。最初にシャープな「義兄弟」を見た以上、「青い塩」に散漫な印象は拭えない。息詰まる展開のはずなのに、切迫感を覚えないのだ。牛乳、バター、生クリーム、アーモンド、チョコ、イチゴ、シロップ、ビスタチオetc……。タイトルと裏腹に、贅を尽くしたデコレーションケーキを供された感じがする。

 前稿で記した「おとなのけんか」の登場人物は4人だけだった。そこまでは無理でも、登場人物と設定を省けば、「青い塩」は締まった作品になったと思う。全体のトーンに準じ、ドゥホンも非情の牙を抜かれていた。元とはいえ、闇世界で名を成した男が裏切り者と妥協していた。
 
 あれこれケチを付けたが、「青い塩」はチョイ悪のやさぐれ中年と、アンニュイを滲ませる若い女との(疑似?)恋愛映画だ。プリクラに興じ、カラオケを楽しむ2人の様子も微笑ましい。ドゥホンとセビンの触れ合いをどう捉えるかは、見る側の年齢や人生経験によって変わると思う。

 俺にも男女関係について持論がある。理想は肉親の情に至ることだが、その過程には肉体的結びつきが不可欠というもの……。ピント外れの可能性大で、恋愛の真理を知らないまま召されることは確実だ。


コメント
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