酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

20世紀最大の謎~ケネディ暗殺に新仮説

2006-07-07 01:53:41 | 社会、政治
 先日(4日)、NHK衛星第1で「暗殺のランデブー~ケネディとカストロ」が再放送された。日独共同制作のドキュメンタリーである。

 ケネディ暗殺は「20世紀最大の謎」だが、ミステリー的要素は薄まっていた。<軍産複合体=保守派=差別主義者=CIA=FBI=マフィア=亡命キューバ人らが協力してケネディを暗殺した>という<定説>が、小説や映画で補強され、<史実>と化していたからである。

 番組では数々の証言を基に、<ケネディ暗殺はキューバ諜報機関(G2)の単独犯行>という衝撃的な<新仮説>を提示していた。「実行犯」オズワルドとG2が接触したのはメキシコシティーだが、世紀を超えた現在も、当地には深い傷跡が刻まれている。オズワルドについて証言することに、身の危険が伴うという。

 ヘイグ元国務長官は少佐時代、ケネディ兄弟の指令でカストロ追放作戦に加わり、交通網、砂糖工場、基幹施設に対する破壊活動に従事した。カストロ暗殺は最低でも8度計画されたが、いずれも事前に察知されたという。元CIAのハルパーン氏は「ケネディ兄弟はたやすく敵を抹殺できると信じていた」と寛容さに欠いた点を批判していた。同氏は番組の最後に「カストロは表彰台に立ち、我々は打ち負かされた」と語り、ケネディ暗殺が<カウンターパンチ>であったことを認めている。

 西ベルリンで行った演説、黒人差別撤廃を国民に訴える語り口に、ケネディの理想主義者の一面が窺える。ケネディは遠からずカストロと和解するという予測もあったが、両者の対立は抜き差しならぬ状況に進んでいたようだ。

 今回の<新仮説>に全幅の信頼を置くわけにはいかない。オズワルドは熟練した狙撃手ではなく、彼を公衆の面前で射殺したジャック・ルビーの背景も謎のままである。G2が実行犯だとしても、<定説>に現れる諸グループが追認することにより、<共犯関係>が成立したと考えるのが、妥当な線ではないだろうか。

 暗殺後、ケネディは偶像になり、クリントンのようなフォロワーを多く生んだ。一方のカストロはアメリカで大ヒールになる。「スパイ大作戦」は全シリーズ(171話)見たが、カストロ風の悪い奴が頻繁に登場した。理念を訴える革命指導者が、実は利権を貪り、東欧の独裁国と結び付いていた……という設定である。

 イメージ戦になると、生き延びたカストロに分が悪いが、戦友ゲバラはケネディ並みに語り継がれている。「モーターサイクル・ダイアリーズ」の稿(昨年10月10日)に記したが、主演のガエル・ガルシア・ベルナルとロドリゴ・デ・ラ・セルナは、ゲバラへの憧憬と尊敬を隠さなかった。志半ばで斃れた者の輝きは、永遠に失せることはないのだろう。

 この世で陰謀史観(コンスピラシー)ほどエキサイティングなものはない。ケネディ暗殺にも新たな一節が書き加えられた。真実が明かされる2039年まで生きていたいが、無理だろうな……。
コメント (2)
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