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日経「官邸変化、心臓部に岸田流」

2021-12-07 08:23:07 | 歴史・社会
官邸変化、心臓部に岸田流 風見鶏 2021年12月5日 日経新聞
『岸田政権の発足後、権力装置である首相官邸はどう変わるのか。霞が関や与党の視線はここに集中するといっても過言ではない。衆院選で勝利した後、早速、変化の兆しが見え始めた。
2021年度補正予算案の柱となる経済対策づくりが官邸、省庁、与党のパワーバランスを映す試金石として関心を集めた。首相周辺はこう明かす。「岸田文雄首相へのレクは最終確認の場だった。そこでひっくり返った案件はほとんどなかった」』
『今回、政策調整を担ったのは官邸の官僚と総裁派閥である岸田派の側近だった。官僚は元経済産業事務次官の嶋田隆秘書官ら、派閥は木原誠二官房副長官だ。
「10万円給付の所得制限は960万円」「企業向け給付金は事業規模などに応じて一括支給」。財務省などの省庁は秘書官室と木原氏に列をなし、首相への説明の前さばきをうけた。
官邸の内部に目をこらすと政策調整の仕掛けに細心の注意を払った痕跡がうかがえる。
心臓部にあたる首相執務室に隣接する秘書官室。首相は菅前政権で8人に拡充した秘書官の定員をフル活用し、省庁との情報共有などチーム力を高めた。
さらに秘書官室に勤務する内閣事務官の人事だ。菅義偉首相時代に交代した職員を呼び戻した。この職員は第2次安倍政権時代から続けていたが、管氏は官房長官時代からよく知る長官室の職員を代わりにあてた。
秘書官室の内閣事務官は政務秘書官のそばに座り、首相の日程調整や来客の整理などにあたる。官邸の運営ノウハウを熟知するようになり、霞ヶ関からも一目を置かれる。』
『岸田政権は官邸と各省との距離にも腐心する。各省から派遣される内閣参事官を数日交替で首相秘書官室に入れるようにした。
参事官のチームを官邸に常駐させるのは小泉政権が導入した。』
『首相、官房長官と副長官らで構成する正副官房長官会議(仮称)は平日ほぼ毎日、開催する。要所で情報を共有し官邸一体で目標や戦略を明確にする知恵を引き継いだ。』
『首相の運営手法は2000年以降の長期政権とは異なる。官邸がこれまで集めてきた力を一部手放すやり方ともいえる。党や官僚に譲りすぎれば統治は揺らぐ。官邸主導の修正は危うさもはらむ。』

小泉政権よりも以前、日本の政治は、「官僚内閣制」と呼ばれていました。国権の最高機関たる国会が方向を定めるのではなく、実質、官僚によって牛耳られていると。そしてその官僚は、政治の方向を「国益」で判断するのではなく、自分たちの「省益」を最優先していると。
「官僚内閣制」の問題について、このブログでは2010年頃、問題意識を持っていました。
公務員制度改革の進捗 2010-01-17
原英史「官僚のレトリック」 2010-08-24
古賀茂明「日本中枢の崩壊」 2011-07-15

その後、政策立案の主体を官僚から政治が取り戻すべく、その手段として官邸の力を強める方向で対策が打たれてきました。ところが、「官邸主導」が行き過ぎ、安倍政権末期から菅政権にかけてはその弊害が目に余るものとなっていました。
このブログでは2018年頃から問題視してきました。
内閣人事局はどうなる? 2018-03-25
内閣人事局の功罪 2020-05-31
検察を官邸忖度型に 2020-06-01
安倍長期政権で霞ヶ関がガタガタ 2020-09-12
菅次期政権による霞ヶ関支配 2020-09-14
以上のブログ記事で明らかにしてきたように、安倍長期政権での管官房長官、菅政権での菅総理が、内閣人事局の権限の濫用によって霞ヶ関官僚を萎縮させ、忖度させ、日本の政治実行力を極めて毀損していることが明らかです。

このブログの記事「新総理は内閣人事局を封印すべし 2021-09-23」では以下のように述べました。
『次期総理には、次のことを提案します。
総理になったら、「内閣人事局は伝家の宝刀であると認識し、濫用は慎み、本当に必要なとき以外は、原局から上がってきた人事案を極力尊重する」と宣言するのです。
これを聞いた霞ヶ関官僚は、安心して官邸に対して政策を献策し、あるいは官邸の示した方向が正しくなければ意見をするようになるでしょう。
また、片山氏が言うような、「今の霞が関の雰囲気はこうです。国民のためではなく政権に言われたことをやる。それで失敗したら官邸のせいにして留飲を下げる。国民のためにならないのであれば、直言する気骨が失われてしまいました。」という状況から脱することができるでしょう。』

冒頭の日経記事によると、岸田政権の運用は、私が望んだ方向に進んでいるような気がします。日経の記者も、末尾で「官邸がこれまで集めてきた力を一部手放すやり方ともいえる。党や官僚に譲りすぎれば統治は揺らぐ。官邸主導の修正は危うさもはらむ。」と警告はしているものの、この変化を全体としては好感を持って報じています。

取り敢えず、岸田政権が具体的にはどのような政権運用を行っているのか、その具体的な内容について今回記事で知ることができたので、引き続き注視していきたいと思います。
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