弁理士の日々

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日経「ニッポンの統治 危機にすくむ⑤」

2021-12-06 08:45:06 | 歴史・社会
前回、「ニッポンの統治 危機にすくむ④」について記事にしました。今回は「危機にすくむ⑤」を取り上げます。

本末転倒の政治主導 無気力と無責任の連鎖
ニッポンの統治 危機にすくむ⑤ 2021年11月26日 日経新聞
『日本の政治主導に綻びが目立つ。細かな政策に固執し、国を揺るがす危機への判断は先送りする。
菅義偉内閣だった7月、政府が緊急事態宣言下で酒を出さないよう金融機関から飲食店への「働きかけ」を求める通知を出したのが典型例だ。
銀行が飲食店に圧力をかけるのは独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」にあたりかねない。それを知りつつ発出した理由を担当の官僚に聞いた。
答えは「やらないと閣僚に怒られるから」。』
『冷戦終結やバブル崩壊後の変化に対応すべく官僚の情報を基に政治家が判断を下す政治主導の流れが生まれた。それ自体は間違った選択ではなかったはずだ。
ところが四半世紀経ち、省庁幹部の人事を内閣人事局が握っても、閣僚は国会答弁を官僚に頼りがちだ。・・・こんな政治主導の下で発言権が弱まった官僚はやる気を失い、無責任がまん延する。
国の舵取りを任されたはずの政治が思考を止め、将来ビジョンを描くはずの官僚は気概を失った。政治も官僚も動かない本末転倒な状況に日本はある。』

日経新聞記事は以上のように記しています。以下に私の意見を述べます。

私はこのブログ記事「新総理は内閣人事局を封印すべし 2021-09-23」で以下のように提案しました。
『安倍長期政権での管官房長官、菅政権での菅総理が、内閣人事局の権限の濫用によって霞ヶ関官僚を萎縮させ、忖度させ、日本の政治実行力を極めて毀損していることが明らかです。
そこで次期総理には、次のことを提案します。
総理になったら、「内閣人事局は伝家の宝刀であると認識し、濫用は慎み、本当に必要なとき以外は、原局から上がってきた人事案を極力尊重する」と宣言するのです。』

さて、岸田政権はどんな様子でしょうか。
オミクロン株出現に対応する水際対策について、政府の動きは迅速ですね。
このブログの記事「厚労省の大罪(続き) 2021-05-16」で以下のように書きました。
『インド変異株が大問題だというのに、インドからの入国者に対する水際対策が遅々たる歩みです。
先日のテレビ番組で、佐藤正久自民党外交部会長が発言していました。『外交部門から厚労省に「インドからの水際対策を強化しろ」とプッシュするたびに、厚労省は小出しで対策を打ってきた。厚労省は、エビデンスが明確になるまで対策を打とうとしない。』ということです。』
厚労省のスタンスは、今年5月段階では「危険性が不明だから何も対策を打たない」でしたが、この12月には「危険性が不明だから最悪を想定した対策を打つ」ということで、様変わりです。「何だ、やればできるではないか」とあきれてしまいます。

一方で、「国際線新規予約の一律停止を撤回、邦人帰国に配慮-国交相謝罪 2021年12月2日 Bloomberg」という問題も出ました。
『政府は、日本に到着する国際線の新規予約停止要請を撤回し、邦人の帰国需要に十分配慮するよう航空会社に通知した。松野博一官房長官が2日明らかにした。
国交省航空局の担当者は、12月は旅客需要が高い月で配慮が必要だったと説明。今回の措置は航空局が独自に判断し、斉藤国交相や官邸などへの報告は1日までしていなかったという。』
私も、内情を十分に把握しているわけではありません。もし「コロナ対策」としての対応なら、国交省単独ではなく、厚労省、あるいは政府のコロナ専門家集団と共同で政策を立案したはずです。そうではなく、国交省のそれも航空局が単独で判断したということは、単に「そうしないと国際航空便が混乱するから」というだけの理由だったのではないか、と推測します。
問題がここまで大きくなることを航空局のお役人が想定できなかった、という点が残念なところです。
しかし、菅政権時代の「役人は官邸から言われたことしかやらない」から、「必要と思うことは官邸から言われなくてもやる」に変化しているようで、私はこの変化は好ましいものと思います。
「岸田政権は官僚の言いなり」との批判もありますが、菅政権時代よりはずっとましだと思います。

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