弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

公務員制度改革の進捗

2010-01-17 11:57:28 | 歴史・社会
最近は、民主党小沢幹事長の「政治とカネ」の問題で大変なことになっています。私はニュースをフォローしていないので、どのような実体なのかよくわかりませんが。
その一方で、民主党連立政権による公務員制度改革の方向が姿を見せ始めているのですね。私は新聞報道を見落としており、ネットニュースで最近気付きました。

去年の10月に民主党政権の公務員制度改革でご紹介したように、安倍政権のときに渡辺行革相と高橋洋一氏が一緒に取り組んだ『国家公務員制度改革』は、以下の5本柱でした。
1.年功序列の廃止
2.天下りの斡旋禁止
3.キャリア制度の廃止
4.内閣人事庁の創設
5.国会議員と公務員の接触制限

このうち、「2.天下りの斡旋禁止」と「4.内閣人事庁の創設」に関するニュースが最近流れたようです。

「4.内閣人事庁の創設」に関連して
内閣人事局 局長に国会議員 公務員法改正案 「脱官僚」加速
1月12日7時57分配信 産経新聞
『政府が18日召集の通常国会で提出する国家公務員法改正案の概要が11日、明らかになった。公務員制度改革の体制整備を担ってきた「国家公務員制度改革推進本部」を3月末で廃止し、幹部人事を一元管理する新設の「内閣人事局」にそのまま機能を移す。局長には国会議員を充て、公務員制度改革と人事の権限を一手に政治家が握ることにより、「脱官僚依存」を加速させる狙いがある。
新制度は、内閣人事局が、各省庁の事務次官や局長ら幹部職員の人事に先立ち、「幹部候補者名簿」を作成。これに基づき首相や官房長官、各閣僚が協議した上で任命する構想。これにより省庁横断型の人事ができるようになり、縦割り行政の弊害を排除することが可能となる。
政府は4月からの新体制移行を目指し、2月上旬にも国会に提出し、早期の成立を目指す方針。』

上記高橋洋一氏の話によると、渡辺行革でめざしていた内閣人事庁がもしできていれば、大臣が幹部を決めるときには、今までの事務次官がつくったリストに加えて、内閣人事庁が推薦するリストも参照できるようになったはずでした。官僚にとっては、痛いところを突かれたと言ったところでしょう。自分たちが一手に握っていた人事権が弱まり、外部から人材が流入してくれば、営々と築き上げた昇進ピラミッドがぶっ壊れるに決まっている。
今回のニュースによると、民主党連立政権による「内閣人事局」構想は、高橋洋一氏らによる「内閣人事庁」構想と内容ではよく似ているようです。もし「全然違う」というのであれば、どのように違うのか、その点を明確にしてほしいところです。

一点だけ、民主党政権の「天下り禁止」とはでも書いたように、渡辺行革における「内閣人事庁」はその後の麻生政権で「内閣人事・行政管理局」に変わり、当時事務官房副長官であった漆間巌氏が、「内閣人事・行政管理局」の局長職を官房副長官級から政務官級に格下げしてしまいました。今回、「内閣人事局」の局長に国会議員を充てることになるので、官僚人事の主導権を官僚から政治が取り戻す、という点では前進です。その結果、「なに級」になったのかは不明ですが。


「2.天下りの斡旋禁止」について
天下り監視機関を新設へ=官民人材交流センターは廃止-政府
1月13日19時28分配信 時事通信
『政府は13日、府省のあっせんによる国家公務員の天下り根絶のため、内閣府の官民人材交流センターを廃止し、新たに「民間人材登用・再就職適正化センター(仮称)」を設置する方針を固めた。こうした内容を盛り込んだ国家公務員法改正案を18日召集の通常国会に提出、成立を図り、2010年度中の早期に始動させたい考えだ。
 新センターは、各省庁による陰での天下りあっせんや、退職間近の幹部が職務に関係する民間企業への再就職活動をしないよう監視。また、事業の見直しや組織の再編に伴い、府省の枠を超えた職員の配置転換なども担う。このほか、民間からの人材登用の窓口ともなる。定員は35人の予定で、主に民間から採用する方向だ。』

渡辺行革における人材バンク(官民人材交流センター)は、「天下りは許すが天下りの斡旋は許さない」という趣旨で設立されたものです。その人材交流センターが実態として天下りの斡旋を許してしまっていたのかどうか、その点は不明のままですが、民主党連立政権は、実際には斡旋が行われ、天下り先に対する補助金をはじめとする「お土産」が配られていたという認識なのでしょうね。
ともかく、渡辺行革が目指したのと同様の人材バンクが設立されるのなら結構なことです。

ところで、「2.天下りの斡旋禁止」は「1.年功序列の廃止」とセットで考える必要があります。
従来、同期キャリア官僚の中から局長が生まれたとき、局長になれなかった他の同期の官僚は肩たたきを受け、退官します。このときの再就職斡旋が「天下り」だったわけです。
今後、同期キャリア官僚の中から局長が生まれたとき、局長になれなかった他の同期の官僚はどのような処遇を受けるのでしょうか。
もし、局長になれなかった人たちも定年まで役人勤めを続けるのであれば、「1.年功序列の廃止」を明確にする必要があります。
従来、役人の世界における「年次」は絶対だったらしく、入庁年次が下の人が上の人に命令するなどあり得なかったようです。今後は、下の年次の局長が上の年次の課長を部下に持つことを是認するわけですから、まずは年功序列を廃止しない限り成立しません。
また、局長になれなかった課長が、そのまま定年まで課長に居座られたのでは、官庁の昇格人事が破綻してしまいます。ある年次で「役職勇退」してもらわなければなりません。役職勇退と賃金ダウンを認める人事制度を創設しなければなりません。
しかし、そのような制度改革についてのニュースが流れません。どうなっているのでしょうか。

私は結局、渡辺行革が目指したように、『定年前退官は従来と同様に認める。ただし、再就職先は本人の実力に見合った場所に行ってもらう。天下り先に対する補助金をはじめとする「お土産」を廃止する。』という制度にせざるを得ないと思います。
民主党連立政権がそのような方向を考えているのかどうか、その点もはっきりしません。

そうそう、先日鳩山官邸の最近の様子で、首相官邸の人員構成について紹介しましたが、官房副長官補3名のうちの2名が異動になったのですね。
副長官補に佐々木、河相氏=内閣官房、人事一新検討-平野長官
『政府は14日、内政担当の福田進官房副長官補を退任させ、後任に佐々木豊成財務総合政策研究所長を、外交担当の林景一副長官補の後任に河相周夫外務省官房長をそれぞれ充てる人事を内定した。河相氏は異例の二度目の就任となる。15日付で発令する。
 佐々木豊成氏(ささき・とよなり)東大法卒。76年旧大蔵(現財務)省入り。主計局次長、理財局長、財務総合政策研究所長。56歳。佐賀県出身。
 河相 周夫氏(かわい・ちかお)一橋大経卒。75年外務省入り、総合外交政策局長、官房副長官補、官房長。57歳。東京都出身。』(2010/01/15-01:04)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「はやぶさ」地球引力圏突入... | トップ | 田中滋著「常勝ファミリー・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

歴史・社会」カテゴリの最新記事