弁理士の日々

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クラウドの世界シェア動向

2021-12-08 08:34:39 | 歴史・社会
クラウド「業界特化型」激戦 Amazonは金融・車向け 2021年12月4日  日経新聞
『企業向けクラウドコンピューティングサービスの分野で、特定の業界に特化した製品が激戦区になってきた。最大手の米アマゾン・ドット・コムは金融や自動車といった業界向けの製品を相次ぎ投入する。クラウドの競争激化を背景に大手が個別業界への対応を強めており、IT(情報技術)業界における役割分担の見直しにつながる可能性がある。』
アマゾンのクラウド事業会社である米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は従来、高性能なサーバーやデータベースなどを割安な価格で使えることを前面に押し出していました。業界や企業ごとの対応は「システムインテグレーター」などと呼ぶIT企業が担うことが多かったといいます。
それに対してこれからは、「長年にわたって注力してきた基盤となるサービスの開発に加え、業界特化型のサービスへの需要が高まっていることに対応する」との方針を示しました。
『背景にあるのはクラウドをめぐる競争の激化だ。米シナジー・リサーチ・グループによると、2021年7~9月期のインフラを主体とするクラウドの世界市場は前年同期比37%増の454億ドル(約5兆1000億円)まで拡大した。先行したAWSは首位を守っているが、米マイクロソフトや米グーグルが追い上げて差を縮めている。』
記事に載っている、クラウドの世界シェアの推移を示す図面をトレースしました。

私は12年前、このブログで「クラウドコンピューティングとは何か 2009-11-25」との記事を書きました。2009/4/23発売の「クラウド大全」という書物の内容をレビューした記事でした。
当時、クラウドの御三家は、アマゾン、グーグル、セールス・フォースでした。
クラウドという言葉を初めて使ったのは、グーグルのCEOであるエリック・シュミット氏です。「従来ユーザーの手許にあったデータサービスやアーキテクチャが、サーバー上に移ろうとしている。我々はこれを、クラウドコンピューティングと呼ぶ。(データやアーキテクチャは)“クラウド”のどこかにある。ブラウザのようなアクセスできるソフトウェアがあれば、PC、Mac、携帯電話、BlackBerryなどどのようなデバイスからでも、クラウドにアクセスできる。」
2006年、アマゾンがAmazon EC2(仮想マシンサービス)とAmazon S3(ストレージサービス)を開始しました。
2008年、アメリカのセールスフォース・ドットコムが、同社のアプリケーション基盤を使ったカスタムアプリケーションを第三者が開発できるForce.comの提供を開始しました。
同年、グーグルが第三者のWebアプリケーションをホスティングするGoogle App Engineを開始しました。

12年前の当時、マイクロソフトの名前は挙がっていませんでした。それが変化し、少なくとも2018年にはマイクロソフトが2番手にあがってきたのですね。最近の3年でマイクロソフトはさらにシェアを伸ばしています。
12年前に御三家の一角だったセールス・フォースの様子は分かりません。最近はテレビCMも行っているようなので、上位陣には残っているのでしょう。

さて、元に戻って『クラウド「業界特化型」激戦』です。
米マイクロソフトや米グーグルは、アマゾンのAWSとの違いを出すために、業界特化型に力を入れてきました。それに対して『AWSは企業が老朽化した情報システムからクラウドに移行するのを支援するサービスも拡充。例えば対応技術者の減少が社会的な課題になっている「COBOL(コボル)」で開発したプログラムを、クラウドで使えるように自動変換する製品を加える。プログラミングの知識が乏しくても機械学習を活用できるようにするサービスも発表した。』
COBOLが登場したのにはびっくりしました。
『AWSが基盤となる技術に加えて業界特化型にも注力することにより、技術力や資金力が高い米大手がIT業界をけん引する傾向が一段と強まる。マイクロソフト、グーグルを加えた「3強」のクラウドの世界シェアは7~9月期に63%に達し、3年前より約10ポイント上昇した。巨大IT企業の独占・寡占への批判が高まるなか、新たな火種になる可能性がある。
日本には有力なクラウドのインフラ企業がない。デジタル庁が行政サービスに活用するクラウドの提供企業としてAWSとグーグルを選定したが、官民ともに利用は遅れてきた。
障害などのリスクを冷静に評価して使いこなさなければ、人工知能(AI)やIT人材の活用などでさらに劣後することになりかねない。』

私が「クラウド大全」を参照して記事を書いてから12年間、日本でクラウドインフラに関する技術や事業が大幅に拡大した話を聞くことができません。もちろん、テレビ広告では奉行クラウドなど、クラウドを名乗る商品はよく耳にしますが、いずれも記事にいう「システムインテグレーター」なのでしょうね。あるいは、商品名に「クラウド」は名乗っているものの、実態としてクラウドの良さを十分に活用しているのかどうかはわれわれにはわかりません。
クラウドインフラに関して日本企業の躍進は見られず、デジタル庁が選定したクラウド提供企業も、結局はアマゾンとグーグルなのですね。クラウドインフラを提供する日本発の事業が立ち上がる気配はないのでしょうか。
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