弁理士の日々

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岩波書店の「縁故採用」問題

2012-02-05 00:26:18 | 歴史・社会
岩波書店の「縁故採用」が問題となっているようです。
<岩波書店>就職応募条件に「社員紹介必要」
毎日新聞 2月3日(金)11時33分配信
『岩波書店(東京都)が2013年度の定期採用の応募資格について、「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」を条件にしていることが3日、分かった。
同社のホームページで公開されている。「縁故採用」ともとられる方法だが、同社は「応募条件であり、採用条件ではない」と反論。また「毎年採用は若干名なのに対し、応募は1000人に及ぶこともある。現在は、結果的に落とすための試験になっており、できるだけそれを避けるため」としている。』

<小宮山厚労相>岩波書店の縁故採用に言及
毎日新聞 2月3日(金)11時10分配信
『小宮山洋子厚生労働相は3日の閣議後の記者会見で、岩波書店が13年度の定期採用で同書店の出版物の著者や社員の紹介を応募資格にしたことについて「公正な採用・選考に弊害があるという指摘かと思うので、早急に事実関係を把握したい」と述べた。
厚労省職業安定局によると、年齢・性別を限定して採用することは雇用対策法や男女雇用機会均等法に抵触するが、縁故採用について明確に規制する法令はないという。』

最近の新卒者の就活状況は悲惨な状況になっています。学生は何十社にも応募しなければなりません。応募して面接に持ち込むだけでも大変な労力をかけています。しかし、そのことごとくで内定がもらえず、学生生活の最終学年を就活でつぶすことになります。

学生生活の最終学年というのは、本当であれば学業に勤しんで一生の糧となる基礎を身につけるべき大切な1年です。先日このブログで「日本のリーダー教育で何が足りないか」として書きましたが、18歳から24歳までの時期に習得した教養は一生の糧となります。その大事な1年を、みじめな就活に費やす今の学生さんは本当に気の毒です。

私が理系の学校を卒業して就職した頃は、各企業から学校(学科単位)に求人が寄せられ、その求人枠に見合った人数に求職者を絞った上で教授が推薦し、就職試験に臨みました。特定の企業に求職者が集中した際には、何らかの手段で人数を絞り、求人数と求職者数を合致させていました。
これって、結局は実質的に「教授の紹介があること」となっており、今回の岩波書店とかわりません。しかし、就活はスムーズであり、最後の学年をみじめな就活に費やすことなく学業に勤しむことができました。
私は現在の悲惨な就活よりも、当時の方法の方がまともだと思います。

学卒として一般企業に就職するのであれば、どの企業に就職しても差異は五十歩百歩だというのが私の実感です。何十社と採用試験を受けまくって初めて相性のあった企業を見つけることができる、などということはありません。そもそも、会社というものを何も知らない学生と、採用担当の社員との間の面接で、その学生とその会社との相性などがわかるはずもありません。

上の記事で、厚労省は「年齢・性別を限定して採用することは法律違反」と言っているようです。しかし実態は、採用条件で「年齢・性別不問」と言いながら、実は35歳オーバーを最初から採用するつもりがない、あるいは女性を採用するつもりがない、という会社の方がよっぽど学生にとって酷です。秘密にしている採用条件に合致しない学生は、そうとは知らずに無駄な就職活動をさせられているわけです。

今回の岩波書店問題を契機として、健全な議論が開始されるといいのですが、マスコミは表面的に岩波書店を責め、厚労省も表面的にマスコミに迎合した対応を取ることになるのでしょうか。
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2 コメント

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Unknown (椿事)
2012-03-08 10:29:17
岩波の動きは、ある意味、仕方ないと思います。ITの発達で簡単に応募できる時代、何千何万も届く書類に目を通すことは、難しい。何らかの一次ハードル(この場合は縁故)を設けるのは、仕方ないと思います。

日本は、財の需給で相当、供給過剰ですが、人材もそうです。例えば、新産業たるITは、知識集約だから少人数で経営できます。収益力は高くとも、雇用力は低い。これでは、ますます人材の需給ギャップが高まります。
例えば、介護の従事者に一律5万円の給与上乗せをするなど、新しい成長産業を育てないと、ますます人はあぶれていきます。政治よ、しっかりしてくれ、と叫びたくなります。
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雇用創出 (snaito)
2012-03-09 20:07:07
椿事さん、こんにちは。

今の新卒の就活は本当に不毛です。学生最後の1年間を就活に明け暮れる学生さんが気の毒です。

若い人たちの雇用の場を拡大することが政府の仕事なのに、最近は国家公務員の新卒採用を減らそうとしています。「民間がそうしているから」という岡田副総理の発言は寂しすぎます。
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