弁理士の日々

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原発事故関連政府会議の議事録がない

2012-01-29 10:10:33 | 歴史・社会
原発議事録―「検証」阻む政権の怠慢 信じられない。政権の怠慢である。
朝日新聞 社説 2012年1月26日(木)付
『福島第一原発事故に対応する政府の原子力災害対策本部が、昨年末まで計23回開いた会議の議事録をまったく作っていなかったことがわかった。
未曽有の危機に際し、どのような情報に基づき、どんな検討を経て、判断したのか。一連の過程を克明に記録しておくことは、振り返って事故を検証し、二度と同じ過ちを繰り返さないために欠かせない作業だ。
緊急対応に追われた事故直後だけならまだしも、昨年5月に議事録の不備が明らかになったあとも、今日まで放置してきたとは、どういうことか。
自分たちの失策が後で露見しないよう、あえて記録しなかったと勘ぐられても、申し開きできまい。』

原子力災害関係の政府の会議体で議事録が作成されていなかったことに対し、このところ急に問題が大きく取り上げられています。事故から1年も経って、何で今ごろ問題が顕在化したのでしょうか。
私は、一部の会議体ではありますが議事録を作成していないことを去年の5月から知っていたので、最近になって騒ぎ立てる意味が良く分かりません。

昨年5月22日の記事「1号機海水注入の中断」の中で、翌23日の追記として、
『1号機の海水注入が一時中断となった経緯については、政府内部で混迷を極めています。
最初は、原子力安全委員長の斑目春樹氏が海水注入による再臨界の危険を主張したからだとの政府発表があり、班目氏がこの発表に激怒して政府にねじ込み、政府はすでにした発表の中味を修正するに至るという体たらくです。
3月11日の政府部内の会合における「言った、言わない」の話ですから、打合せメモを読み返せば一件落着だろう、と普通なら考えますが、ここへ来て「議事録は存在しない」ことが明らかになりました(「海水注入問題めぐる議事録はない」福山官房副長官~産経新聞 5月23日(月)12時37分配信)。
国家の一大事に対して政府が緊急に対応を協議するに際し、誰も発言メモを取っていないというのはあまりにも杜撰です。後の責任を回避するために意図的にメモを取っていなかったのだとしたら、政府首脳として姑息すぎます。
ただし、発言メモが存在しないことに私はさほど驚きませんでした。東電社長が病気療養で東電の会長がピンチヒッターに立ったとき、会長が「政府との連絡会議の議事録をオープンにしたい」と会見で述べたのに対し、「連絡会議の議事録など存在しない」と政府側が発言したのを覚えていたからです。』
と書いたとおりです。

東電の勝俣会長の議事録発言に関し、調べてみました。多分以下の報道でしょう。
枝野官房長官の会見全文〈30日午後5時前〉
2011年3月30日21時10分
『枝野幸男官房長官の午後5時前からの記者会見の内容は次の通り。
・・・・
【対策統合本部の議事録】
――勝俣会長が会見で、統合対策本部の会議で議事録があるが、政府とすりあわせて公開するならしたいと発言した。議事録はあるのか、あるなら公開するつもりか。

「統合本部はいわゆる会議というより、会議を始めます、会議を終わりますというような会議体というよりは、随時関係者間で様々な議論や情報交換を行っている場だ。そのやりとりを、個人的に適宜メモしている方はいるかもしれないが、統合本部として、あるいは政府として議事録を作成をしているものではない。その議論や情報交換の中身については、すみやかに記者会見などで報告し、また質問にお答えして東電の方で発表させて頂いている」』

この記事にあるように、少なくとも統合対策本部については、議事録を作成していないことが昨年の3月30日には明らかになっていたのです。大手マスコミとしては、「それではこの会議以外の例えば原子力災害対策本部の議事録はどうなっているか」とこのときに追求できたはずです。そして、そちらについても議事録が作成されていないことがわかったら、そのときに大騒ぎすべきです。そうすれば、まだ事故から20日しか経っていませんから、出席者の記憶を呼び起こして事後的に議事メモを作成することも可能だったでしょう。

事故から1年も経過して騒ぎ立てる大手マスコミの姿勢には呆れます。
朝日社説の『事故直後だけならまだしも、昨年5月に議事録の不備が明らかになったあとも、今日まで放置してきたとは、どういうことか。』については、そのまま朝日新聞にお返しします。
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