弁理士の日々

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定額減税、事務負担重く

2024-05-30 15:20:48 | 歴史・社会
定額減税、事務負担重く
自治体、追加給付の対象特定 企業は扶養親族再確認
2024年5月30日 日経新聞
『政府が6月に定額減税を始めるのを前に、実務を担う地方自治体や企業は煩雑な事務作業に苦心している。減税額の計算や対象者の特定などを迫られているためだ。納税者本人と配偶者らを含む3200万人程度には減税と給付の両面から対応しなければならない。
定額減税は国の所得税を1人あたり年3万円、自治体の住民税を同1万円差し引く。会社員や公務員といった給与所得者の場合、6月以降の給与とボーナスの納税額を減らす。』
『住民税の非課税世帯など低所得層の1700万~1800万世帯は減税による恩恵を受けられないため、代わりに1世帯あたり10万円を軸に給付する。
・・納税額が少なく4万円分を減税できない世帯には給付を組み合わせる。4万円に足りない分を1万円単位で切り上げて給付する。』
『減税と給付を組み合わせる対象者は3200万人ほどとされる。給付の実務は市区町村が担う。』
『源泉徴収している企業の負担も重い。・・・定額減税の対象者数の把握には扶養親族の再確認が欠かせない。
給与明細には所得税の減税額を明記するよう義務づけられた。』

「減税」といいながら、何千万世帯もが減税と給付の組み合わせ、あるいは給付のみになる、という煩雑さです。そして市区町村は、給付が生じる世帯を割り出して連絡し、本人に銀行口座を含めて申告してもらわなければなりません。それを6月までに終える必要があります。

地方自治体と各企業での事務負担量の増加は半端なさそうです。これを経費に換算したら、大変な金額になるのではないでしょうか。

最近のテレビでのニュース番組では、定額減税の問題が大きく取り上げられています。
しかし、今回始まる制度で、このような問題が生じることについては、税務に携わる人であれば容易に把握できたはずです。主管官庁ならなおさらです。なぜ、このような制度の新設が提案されたときに、「このような問題が生じるので、定額減税はやめるべきだ。給付オンリーの制度とすべきだ」と進言しなかったのでしょうか。
最近の官邸主導の行政では、官邸から政策が降りてきたとき、問題点を指摘することなく、制度が成立して実施段階で大問題が生じても「ざまーみろ」という態度を取っているようです。
今から4年前、菅次期政権による霞ヶ関支配 2020-09-14において私は以下のように記述しました。
片山善博氏(元総務大臣)曰く『かつての官僚組織には問題もありましたが、プロフェッショナルとして国民に奉仕するという気概を持った方もたくさんいました。内閣人事局が悪用されている現在よりも過去の方が相対的にマシです。
役所のいいところを潰してしまいました。今の霞が関の雰囲気はこうです。国民のためではなく政権に言われたことをやる。それで失敗したら官邸のせいにして留飲を下げる。国民のためにならないのであれば、直言する気骨が失われてしまいました。』」

今回の定額減税制度についても、上記のようないきさつで馬鹿げた制度が成立してしまったのでしょうか。
上記記事を書いてから4年近くが経過しますが、霞ヶ関の劣化状況は改善されていないようです。

報道機関も報道機関です。ちょっと専門家の意見を聞けば、このような問題が生じることはすぐに判明するはずです。立法の段階で問題点を大々的に報道すべきでした。それが今になって、このような問題点を指摘されても後の祭りです。
日本の報道機関も劣化が激しいですね。
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