弁理士の日々

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角川まんが「日本の歴史」

2016-08-14 15:42:30 | 歴史・社会
新聞広告で、以下のような「まんが 日本の歴史」が出版されていることを知りました。
角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 全15巻定番セット
クリエーター情報なし
KADOKAWA/角川書店
新聞広告では、本の帯にも書かれているように『東大の入試問題や近年の歴史教育の現場で重視されている「歴史の流れをつかむ」という考え方にもとづいた「東大流」にて構成。』とうたっていました。
当方の孫はまだ6歳と4歳で、このような歴史シリーズを読みこなせるのはまだ先でしょうが、このうたい文句に引かれ、面白そうだったので購入してみました。

(左から)武田信玄、徳川家康、足利尊氏、厩戸皇子(後の聖徳太子)、平清盛、伊藤博文、江戸火消し


(左から)坂本龍馬、平塚明(らいてう)、源義経、卑弥呼、織田信長、紫式部、大久保利通

平安時代について読むと、その内容が細部にわたっていることには驚かされます。
3巻 平安時代前期(表紙は紫式部と清少納言)    4巻 平安時代後期(表紙は若い頃の平清盛)

下は、3巻の巻頭に書かれたこの巻の全体像です。絵の外周に描かれた人たちは知っていますが、中央に「藤原氏」として描かれた10人のうち、私が知っているのは藤原道長ただ一人です。

2巻(明日香~奈良時代)と3巻から、藤原氏だけを取り出し、どのように記述しているかを列挙してみます。
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○ 藤原不比等(藤原(中臣)鎌足の長男)による大宝律令の完成
○ 藤原不比等の娘である光明子が、聖武天皇の妃となる。後、皇族出身以外ではじめて皇后となる。
○ 藤原不比等の息子4人(武智麻呂(南家)、房前(北家)、宇合(式家)、麻呂(京家))が朝廷で大きな力を持つ。
○ 藤原種継が長岡京建設中に暗殺される。
○ 藤原薬子の乱(式家没落)
○ 藤原冬嗣(北家)の娘と親王との間の男子が文徳天皇となる。冬嗣の息子が良房。
○ 藤原良房の娘と文徳天皇との間の男子が清和天皇となる。
○ 良房の養子の藤原基経は出世し、摂政・関白を務める。
○ 藤原氏の全盛に不満の宇多天皇(上皇)が、菅原道真を重用する。しかし菅原道真に謀反の疑いがかかり、太宰府に流罪となる。2年後に死去。
○ 藤原基経の子孫である藤原兼家の嫡男が藤原道隆。道隆の娘、定子は一条天皇の中宮。清少納言は中宮定子の女房。
○ 関白道隆が急死し、後を継いだ弟の道兼も病死。さらに弟の藤原道長は、道隆の嫡男である藤原伊周と跡を争う。
○ 権力闘争に勝利した道長。道長の娘の彰子が一条天皇の元に入内する。道長は画策し、一条天皇の中宮だった定子を皇后、自分の娘の彰子を中宮の位に就け、どちらも正室とした。
○ 定子の死後、紫式部が彰子のもとに女房として入る。
○ 彰子に男子(後の後一条天皇)が生まれる。
○ 一条天皇のいとこである三条天皇には藤原道長の次女・妍子を、孫である後一条天皇には三女の威子を入内させた。
○ 道長は「わが世とぞ思う望月の欠けたることもなしと思えば」と歌った。
○ 道長の息子の頼通。みかどに嫁がせた娘に皇子が産まれず。後三条天皇は、藤原氏を祖父に持たない天皇であった。後三条天皇とそのあとの白河天皇は、藤原氏に依らない政治を行い、藤原氏全盛の時代は終わりを告げた。
-----以上-------------
これだけの内容が、2巻の途中から3巻の終わりまで、まんが物語として延々と語られます。歴史に興味を持つ私でさえ、この内容のほとんどは今回のまんがで身につけた知識でした。最近の日本の学生は、平安時代についてこんなに詳しく教わっているのでしょうか。

14巻 大正~昭和時代初期(表紙は平塚らいてう)       15巻 昭和時代~平成
                                      (表紙作者は近藤勝也(スタジオジブリ))

さて、対比すべきは日本の近現代史です。張作霖爆死事件から終戦に至るまで、まんがとして描いて欲しい事象を以下に記します。そのうちで、今回のまんが「日本の歴史」の14巻、15巻に登場した事象には「○」、登場しなかった事象には「×」、ちょっとだけ登場するが不十分な事象には「△」を冒頭に記します。
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△ 張作霖爆死事件(真相究明不十分と昭和天皇の怒り)・田中義一内閣
× ロンドン軍縮会議と統帥権干犯問題(軍部の独走を許す
△ 満州事変勃発と満州国建国(国民の喝采)・若槻礼次郎内閣
× 第一次上海事変
○ 五・一五事件・犬養毅内閣
○ リットン報告書
△ 国際連盟脱退(その真の理由)・斎藤実内閣
○ 二・二六事件・岡田啓介内閣
× 軍部大臣現役武官制復活(軍部が気に入らない内閣は崩壊)・広田弘毅内閣と、宇垣流産内閣
× 日独防共協定
○ 盧溝橋事件・近衛文麿内閣
× 第二次上海事変(蒋介石による日本追い落とし計画
△ 南京侵攻(参謀本部が現地指揮官に引きずられて決断)と南京大虐殺
○ 国民政府(蒋介石)を対手とせず
× ノモンハン事件・平沼騏一郎内閣
△ 日独伊三国軍事同盟・近衛文麿内閣
○ 南部仏印進駐
△ 日米交渉とハルノート(日本政府は最後通牒と受け取った)
× 対米英開戦(宣戦布告遅延の実態と米国による日本外交暗号の解読)
-----以上-------------
14巻、15巻における上記期間の記述は、1巻分のページ数の半分にも満たない量です。
一応、主立った事件について触れてはいますが、日本政府はなぜ軍部に引きずられたか、なぜ勝ち目のない戦争に突入していったか、といった疑問に少しでも迫るような詳細な記述には至っていません。平安時代における藤原氏の記述が詳細を極めている状況と対比すると、そのアンバランスが目立ちます。

ところで、15巻の表紙イラストは、近藤勝也(スタジオジブリ)とあります。この表紙イラストが本文に登場するかというと・・・、残念ながら登場しません。戦時中の空襲で焼け出された直後なのか、それとも戦後なのか。また、描かれている少女と背負った赤ん坊が孤児なのか否か、いずれも不明のままです。炎が見えることからすると、空襲でまだくすぶっている時期を描いているのでしょうね。

さて、このまんが「日本の歴史」に対する孫たち(6歳、4歳)の食いつき状況ですが・・・。
背表紙や表紙のイラストが興味をそそるので、まずは開いて見ます。中身もまんがですから、どんな面白いことが描かれているのかと「おじいちゃん、読んで」とせがまれます。もちろん、歴史の記述についてはわかりません。その中で、1巻の縄文時代は、ある集落の竪穴式住居で生まれた二人の子どもたちの成長を描いていることから、一番興味が持てたようです。
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