<2307> 大和の花 (493) ヒメオドリコソウ (姫踊子草) シソ科 オドリコソウ属
ヨーロッパ原産の越年草で、明治時代の中ごろ渡来した帰化植物の外来種である。最初、東京で発見され、今では全国的に広まり、各地で普通に見られるようになった。茎は下部で分枝し、4稜があって、高さは大きいもので30センチほどになる。葉は対生し、長さが2センチ前後の卵円形で、鋸歯があり、網目状の脈が目立つ。上部の葉は密につき、赤紫色を帯びる。
花期は3月から5月ごろで、上部の葉腋に長さが1センチほどの筒部が長い淡紅色の唇形花をつける。日当たりのよい草地などに生え、群生することが多く、花どきにはよく目につく。 写真は草地に群生して花を咲かせるヒメオドリコソウ(左)、セイヨウタンポポと混生して花を咲かせるヒメオドリコソウの群落(中)と花をつけた上部のアップ(右・4稜の茎がうかがえる)。
野を広く占拠してゐる外来種日本の未来を示唆するごとく
<2308> 大和の花 (494) ホトケノザ (仏座) シソ科 オドリコソウ属
日当たりのよい道端や草地などに生える越年草で、休耕地などにも生え出して群生することが多く、よく見られる。茎は基部で分枝し、高さは10センチから30センチほどになる。上部の葉は長さが1センチから2センチの扇状円形または半円形で、縁には鈍鋸歯があり、網目状の脈が目立ち、茎を抱くように対生する。
花期は3月から6月ごろで、上部の葉腋に長さが2センチほどの紅紫色の唇形花を密につける。オオイヌノフグリやタネツケバナなどとともに春一番に咲き出すので、よく目につく。茎を抱く葉を台座、筒部の長い花を仏さまに見立ててこの名がある。別名のサンガイグサ(三階草)も花による名であろう。なお、花を開くことなく結実する閉鎖花も見られる。
北半球の温帯に広く自生し、日本では本州、四国、九州、沖縄に分布、大和(奈良県)でも普通に見られる。ところで、春の七草にあげられているホトケノザはキク科のコオニタビラコのことで、花は黄色。こちらのシソ科のホトケノザは食用にするという話は聞かない。 写真はホトケノザ。群生する花(左)と花のアップ(右)。 何処にも仏ゐませり仏座
<2309> 大和の花 (495) ヤマジオウ (山地黄) シソ科 オドリコソウ属
山地の半日陰になる木陰に生える多年草で、地下茎を長く伸ばして繁殖する。地上茎は高さが5センチから10センチで、下向きに白い毛が生え、毛深い。葉は長さが2センチから7センチの倒卵形で、縁に粗い鋸歯があり、表面にしわがあるのが特徴で、2、3対が輪生状に茎の上部につき、地面に貼りついているように見える。
花期は8月ごろで、茎頂の葉腋に淡紅色で白い縁取りのある濃淡に変化が見られる唇形花を1個から数個つける。花冠は長さが2センチ弱で、上唇は直立、下唇は3裂し、全体的に毛が多い。葉が薬用植物のジオウ(地黄)に似ることによりこの名があるという。
本州の神奈川県以西の太平洋側と四国、九州に分布する日本の固有種で、その分布域から蘇速紀要素植物と考えられている。大和(奈良県)では紀伊山地の登山道でときおり出会う。写真はヤマジオウ(天川村)。 何処まで桜前線向かひしか大和は概ね葉桜のとき
<2310> 大和の花 (496) マネキグサ (招草) シソ科 オドリコソウ属
山地谷筋の林下や林縁、岩場に生えるオドリコソウの仲間の多年草で、高さは40センチから70センチほど。葉は長さが3センチから8センチの卵円形もしくは長卵形で、縁には鈍鋸歯があり、表面には少ししわが見られ、長い柄を有し、対生する。
花期は9月ごろで、上部の葉腋に長さ2センチほどの暗紅紫色の唇形花をつける。花冠は上唇が直立、下唇は3裂する。この花が手招きをしているようだとしてこの名がつけられた。キセワタ(着綿)に似るのでヤマキセワタ(山着綿)の別名でも呼ばれる。
マネキグサもヤマジオウと同じく、日本の固有種で、本州の関東地方西部以西、四国、九州に分布、大和(奈良県)では紀伊山地の深い渓筋などで見かけるが、ヤマジオウより生育場所が限定的で、個体数も少なく、レッドリストの希少種にあげられている。 写真はマネキグサ(上北山村の渓谷)。 新緑に包まれ大和奈良盆地
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