大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年02月13日 | 植物

<2956>  大和の花 (999) ヒオウギ (檜扇)                                 アヤメ科 ヒオウギ属

              

 日当たりのよい原野や山地の草地に生える多年草で、観賞用に植えられることもある。葉は長さが30センチから50センチほどの広線形で、扇状につき、ヒノキで作った檜扇を思わせるところからこの名があるという。

 花期は7月から9月の夏の盛りのころで、高さが60センチから1メートルほどの花茎を伸ばし、上部で枝を分け、2個から3個の花をつける。花は直径3、4センチで、橙色に赤い斑点がある内外の花被片6個が平開し、6弁花のように見えるところがある。また、花は朝開いて夕方萎む1日花で、次々に開く。

 蒴果の実は長さが3センチほどの楕円形で、熟すと裂開し、直径5ミリほどの球形の種種子を多数現わす。種子は黒く光沢があり、古くはこれをヌバタマ(射干玉、烏玉)と呼ばれ、艶のある黒色に因み、黒髪、夜などの言葉につく枕詞として用いられ、この用法で『万葉集』には81首に登場する馴染みの草花だった。所謂、万葉植物として知られ、ウバタマとも言われた。

 本州、四国、九州、沖縄に分布し、国外では朝鮮半島、中国、台湾のほかアジアの広い範囲に見られるという。大和(奈良県)では自生地が覚束ないため、レッドリストの希少種にあげられている。天川村の観音峰展望台の草原に見られた群落はシカの食害の影響か、失われて見えなくなった。 

   なお、漢名は射干(しゃかん)、別名はカラスオウギ(烏扇)。観賞用に植えられるほか、漢方では乾かした根茎を漢名に同じ射干と称し、煎じて服用すれば、扁桃腺炎や去痰に効くという。 写真はヒオウギ。左から川岸の草地で花を咲かせる個体群(上北山村)、花のアップ、黒く光沢のある種子を見せる蒴果の実。 

   大と小二つの皿が並びゐる二つは一様ならずあるなり


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