大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年02月05日 | 植物

<2948>  大和の花 (994) カキツバタ (杜若・燕子花)                                     アヤメ科 アヤメ属

            

 池沼などの水辺に生える多年草で、葉は長さが30センチから70センチほどの剣状になり、先はやや垂れ、基部は茎を抱く。花茎は分枝することなく、高さが50センチから70センチほどになる。

   花期は5月から6月ごろで、茎頂に2個から3個の花をつける。花は普通青紫色で、ときに白色のものも見られる。また、花は6花被片からなり、外花被片は楕円形で、3個あり、垂れる。内花被片も3個あり、外花被片より細く、立ち上がる。実は蒴果で、熟すと3裂し、褐色から赤褐色の種子を現わす。

 アヤメ属の花は6花被片で似るが、ことにカキツバタ、アヤメ、ノハナショウブは紛らわしく、見分け難い。だが、垂れる外花被片の模様の異なりで判別出来る。カキツバタは斑紋が白く、ノハナショウブは黄色を帯び、陸生のアヤメは網状の模様が入る。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、中国東北部、シベリア東部に見られるという。日本では愛知、京都、鳥取3県の群落が国の天然記念物に指定されているが、中でも『伊勢物語』でお馴染みの三河の国八ッ橋のカキツバタは名高い。

 植栽されることが多く、公園や社寺に見られ、珍しくなく、大和(奈良県)でもカキツバタで知られる社寺は、法華寺をはじめ、長岳寺、広瀬神社、春日大社萬葉植物園、磐之媛命陵のお濠などに群落が見られ、ときに新聞やテレビで紹介される。しかし、自生のものは大和高原の池辺にわずかばかりの生育場所が確認されているのみで、奈良県のレッドデータブックには絶滅寸前種としてあげられ、保護が呼びかけられている。

 なお、カキツバタは『万葉集』の7首に詠まれる万葉植物で、1首に「かきつばた衣(きぬ)に摺りつけますらをの着そひ猟(かり)する月は来にけり」(巻17・3921 大伴家持)とあるように、カキツバタが掻き付け(摺り付け)の技法によって衣服を染めたことによる「搔付花」が語源と言われる。因みに杜若と燕子花は漢名であるが、誤用と見られている。 

   花の美しさには定評があり、「いずれアヤメかカキツバタ」と諺にも見える。また、尾形光琳の「燕子花図屏風」は名高い。写真はカキツバタ。左から花を咲かせる群落(磐之媛命陵の濠)、自生地の花(青紫色と白色の花)、ウチワヤンマが止まる実。  早春の日差しを纏ひ行ける犬

<2949>  大和の花 (995) ノハナショウブ (野花菖蒲)                                     アヤメ科 アヤメ属

                                       

 湿地や湿った草原などに生える多年草で、葉は長さが40センチから1メートルほどの剣状で、中脈が目立つ。花期は6月から7月ごろで、高さが40センチから1メートルほどの花茎を立て、赤紫色の6花被片からなる花をつける。3個の外花被片は垂れ、3個の内花被片は上向きになる。カキツバタに似るが、カキツバタの方がスマートに見える。外花被片の中央に黄色の斑紋があり、これで判別出来る。なお、ハナショウブ(花菖蒲)は本種を原種として生まれた園芸種。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、中国、シベリアに見られるという。大和(奈良県)では大和高原の池などに点在しているが、自生地は極めて少なく、限定的で、奈良県のレッドデータブックには絶滅寸前種として載せられている。 写真はノハナショウブの花被(左)とアシが生える池の湿地で野生化して見えるハナショウブの花(右)。いずれも奈良市東部の大和高原。 紅梅に白梅そろひ空の青

 


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