大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年04月28日 | 写詩・写歌・写俳

<2311> 余聞、余話  「キジ」

        炯炯と皇帝の眼光耀かせ花の舞台(うてな)に現はれし雉

 繁殖の時期を迎えた野鳥には活発な動きが見られ、オスの囀る声もその一つで、そこここで頻繁に聞かれる。灌木の高枝に止まって囀るのはホオジロ。竹薮からはウグイスの声。レンゲソウが一面に咲き広がる田の中からはときおりキジの鳴き声が上がる。首だけが花の隙間からちらちら動いているのが目に留まる。よく見ていないと見失う速さで移動している。そして、いつの間にか方角違いに現われて、大きく羽ばたき声を上げる。縄張りを守り、メスへのアピールをしているのに違いない。その声は一定の間隔を置いて聞かれ、結構遠くにまで聞こえる。

            

 日本のキジは大陸に生息するコウライキジの亜種とされる日本固有の鳥で、記紀や『万葉集』などの古文献にも登場を見る昔から馴染みのある鳥である。桃太郎の家来になって鬼退治をする昔話は誰もが知るところ。戦後、他の鳥たちを退けて国鳥に選ばれ、今に至っている。

  里の近辺に多く、その点、よく見かけるので親しみがある。体長はオスで八十センチ、メスで六十センチほど。尾羽が長く、オスとメスの違いがはっきりし、メスよりもオスの方が艶やかで、美しく、顔の赤い肉種と目の周りの金色の虹彩が印象的で、その風貌には「皇帝」の言葉がぴったり来る屹然として貴品に満ちたところがうかがえる。

 この間、以上のような印象のキジのオスに出会い、その印象によって歌を詠むに至った。 写真は一面にレンゲの花が咲く田んぼに現われたキジのオス。羽ばたきながら鳴いて草叢に姿を消した (広陵町の馬見丘陵公園近くの田んぼ)。

    流れゆく時を共有するものが風景にゐる雉もその一

    夢は語るものにはあらず内に秘めゆくべくあるをそらみつ大和

    楽園を統ぶるがごとく現はれし雉の風貌皇帝の燦

    皇帝の尊厳をもて現はれし雉の立ち居を彩る紫雲英(げんげ)

    系譜あり継ぎ来て今にある我ら雉にも言へる我らに等し


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