<48> 帰 り 花
どことなく さびしさがある 帰り花
帰り花は自然の状況において花期を違え季節はずれに咲く花をいう。 殊に春に咲く花が秋や冬に咲くことを言う場合が多く、俳句の季語では初冬に当たり、小春のころ思いがけず咲く花を指す。 バラ科の樹木に多いようで、よく知られるところではサクラがあげられるが、フユザクラは秋から冬に咲く桜で、これは本来の花期に当たり、サクラと言ってもひと括りには出来ないから要注意である。ナシやヤマブキなどにも帰り花があり、ナシの帰り花はよく見かける。
今年は台風の影響で樹木が傷み、例年になく葉っぱを落としている樹木が多いようで、秋になって冷え込んだ後、また暖かくなることによって樹木が春を迎えるのと同じ状況になるためか、例年よりも花をつける条件が整っているようである。要は、樹木の勘違いによるもので、言われてみると、帰り花の咲いている木には葉っぱをつけていないものが多いように思われる。
帰り花で今ひとつのポイントは小春にある。 小春とは陰暦の十月を指す言葉で、初冬に当たる。この初冬のころに見られる天気のいい暖かな日和を小春日和と呼ぶ。この暖かな日和をサクラなどが春と勘違いするのだという。つまり、帰り花は落葉、 冷え込み、 暖かな日が一定の期間をもってある条件下に生じる現象のようである。
写真はソメイヨシノの花で、この枝だけに見られた。 狂い花とも言われるが、春の華やかな花に比べ、 一抹の寂しさが感じられるのは花数のみによるものではなく、冬に向かう季節を纏って咲いているからだろう。 しかし、花もさまざま、この時期に咲く花も花ではある。あるは心意気とも受け止められよう。「来春にはみんなで咲いておいでよ」とそのようにも呼びかけたくなるところである。そこで、寂しさは紛れもないものながら、その心意気で今一句。 帰り花 あるひは 心意気の花