大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2011年10月27日 | 写詩・写歌・写俳

<55> すくも焼き
            穫り入れを 終へし田が見ゆ すくも焼く
  すくもは籾殻のことで、兵庫、岡山、鳥取の一帯でこう呼ぶと言われる。私の出身地備前でも籾殻をすくもと呼ぶ。田舎ではよく納屋などに穴を掘り、 イモ類などの貯蔵をするが、 私の小さいころには四角く掘った人の背丈ほどの穴にすくもの籾殻を入れて、 その中にサツマイモなどの収穫物を埋めて保存していた。
  すくもは気温の寒暖に左右されず、 温度を一定に保つことが出来、 湿気を寄せつけないので、どの家でも保存庫に用いていた。 また、リンゴやタマゴなど傷みやすいものを送るときにはよくすくもを緩衝用に入れていた。焼いて炭化したすくもは田畑に鋤き込んだり、種を播いた上に被せたりしたもので、霜や雪避けになって被害を防ぐのに役立ち、ここでもその効用があって、農家ではよく利用していた。 つまり、すくも焼きは 稲作地帯でよく見られる風物詩として私たちの 年代には懐かしい晩秋の光景である。だが、最近は稲作も機
械化が進み、すくも焼きもめっきり少なくなった。

                   
 昨日は 低気圧にともなう前線が 日本列島を通過し、 その後、 寒気が張り出し、 急に寒くなって、木枯らし一号の報があったが、 今日の大和は朝方冷え込み、終日雲一つない快晴の天気となって、懐かしいすくも焼きが見られた。 今日のすくも焼きは背景が悪いので、写真は以前明日香村で撮影したものを使用した。今日のすくも焼きも煙突を立て、写真と同じようなやり方だった。 ここで焼きイモをすればうまいのが出来るだろう。
 とにかく、すくもを焼く光景には穫り入れを終えて一服する農家の心持ちのようなものがうかがえ、晩秋の田園風景として私には伝わって来るものがある。