goo

「数の増大」「実世界モデルの実現」「知を持ったITの出現」

『ITロードマップ2014年版』より 5年後に向けた情報システムの変化

ネットワーク技術の進化と「数の増大」

 情報通信技術の発達により「いつでも、どこでも、何でも」ネットワークにつながる時代が到来しようとしている。近年では、PCやスマートフォンなど人が利用する端末がネットワークに接続されるのみでなく、あらゆるモノがネットワークに接続されるInternet of Thingsの時代に向けた新技術やサービスが提供されはじめている。

 将来、ネットワークは社会の隅々にまで張りめぐらされ、無数の端末やセンサーがネットワークに接続されるようになるであろう。このようなネットワークの拡大や帯域幅の増大、あるいはネットワークに接続されるデバイスの増大などの情報システムにおける規模拡大の方向性を、「数の増大」と呼ぶことにする。

 今後、「数の増大」に伴いプローブカーによって得られる渋滞情報やRFIDタグによる商品の在庫状況などの膨大なデータが情報システムに収集蓄積されることになる。また、人の詳細な行動履歴の取得も今まで以上に容易になる。すでに、ECやブログなどのネットワーク上のサービスで購買履歴や行動履歴が取得されているが、今後は、スマートフォンに搭載されたGPSによる位置情報やNFCなどネットワークに接続されたセンサーが増えリアルの世界においても消費者の行動履歴の取得が進むと思われる。

「数の増大」がより精密な「実世界モデルの実現」を促進

 「数の増大」に伴いさまざまな端末やセンサーがネットワークに接続され利用可能なデータの種類が増加することにより、実世界の姿をより精密にあらわすモデルが情報システム内に作られるようになる。これを仮想空間に作られた「実世界モデル」と呼ぶことにする。このモデルは、単に実世界の出来事を記録しておくだけに使われるわけではない。さまざまなシミュレーションを行って将来の動きを予測したり、データを分析して価値ある情報を発見したり、さらにはそこから問題解決の知識を引き出すことも可能になろう。

 今後、実世界モデルを構築するために重要となるのが、RFIDやセンサーネットワークなどのモノのセンシングの技術とIdentity Managementと呼ばれる人のIDの管理技術である。人のID管理技術は認証やアクセスコントロールの実現のために多くの企業情報システムやECサイトなどで利用が進んでいる。各種の情報システムには職業や住所、商品の購入履歴、嗜好などさまざまな個人情報が格納されている。現在の情報システムに格納されている個人情報の多くは時間的に変化しない静的な情報であるが、今後はセンサーから得られる位置情報など時々刻々と変化する情報も活用されるようになるであろう。その結果、サービス提供者は個人に対してよりきめ細やかなサービスを提供することが可能となる。また、人のID管理技術と同様に、モノのID管理技術も位置情報などと組み合わせることによりトレーサビリティ実現などに利用される。

 最近では、情報システムに収集されるデータをリアルタイムで分析するストリームコンピューティングのような技術に加え、現実世界の状況を正確に反映した情報を用いて分析するリアリティマイニングという考え方も登場している。最近注目が集まっているスマートシティでも各種のセンサーから現実世界の情報を集め、分析する形式のアプリケーションが適用されはじめている。今後は、リアルタイムとリアリティの2つのキーワードが情報分析の分野で重要になるであろう。しかし、これらの分析や意思決定支援を行うツールを使いこなすためには、明確な目的意識を持った情報分析やアクションプランの策定を行える人材が必須である。企業は、自社の強みを発揮するために必要となる情報がなにかを見極め、その情報の分析をするための情報システム作りを行うと同時に、高度なITツールをビジネス戦略に沿って使いこなせる人材を育成することが必要となる。

「知を持ったITの出現」

 2010年代には、実世界モデルを利用してデバイスやシステムから得られるリアルタイムのデータを分析することにより、意思決定の支援や処理の自動化を実現する情報システムが利用されるようになる。このような情報システムを「知を持ったIT」と呼ぶことにする。『ITロードマップ2007年版』において紹介しているサーバーの自律運用のためのオートノミックコンピューティング技術も「知を持ったIT」の一例である。オートノミックコンピューティングとは、生物が自律神経系によって無意識のうちに心拍や体温を保つのと同じように、システムを自律的に機能させる技術であり、システム自身が保有している障害対応の知識に基づき自動的に障害への対応などを行うことを目的とした技術である。

 また、『ITロードマップ2008年版』において紹介したセマンティック技術も着実に利用が拡大している。セマンティック技術は「データに意味を付与することで、システムがそのデータを自ら理解できるようにし、自動処理をさせるための技術」であり、近年では検索技術や企業内の情報システムにおけるデータ連携などにも利用されはじめている。現在、セマンティック技術を利用するためには、データヘの意味づけや語彙と語彙の関係の設定を人間が行う必要があり、導入へのハードルが高い。しかし、「数の増大」に伴う膨大な情報を誰もが容易に活用し、より高度な分析や意思決定支援を実現するために将来必須の技術になると思われる。さらに2010年代には、セマンティック技術を応用して情報システムや機器同士が自動的に連携を行うことも可能になると予想される。「数の増大」によって今後ますます増加し多様化するデバイスを活用するという観点でもセマンティック技術は重要な技術となるであろう。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

公開講座の課題と対応

『地域をひらく生涯学習』より 岐路に立つ大学公開講座

①受講者が思うように伸びない

 これまでにも指摘してきたように、1992年51万人、2002年89万人、2012年118万人と、一見すると順調に伸びているように見えるが、カルチャーセンターと比較すると、それぞれ71万人、510万人、636万人と、カルチャーセンターの伸びは大きい。

 両者の受講者数は大きく違ってくるが、事業者の数は両者とも700ヵ所で、常勤スタッフはどちらも平均―人で、非常勤スタッフ、アルバイトの数がカルチャーセンターが若干多いという実態である。どこが違って両者に差が出るのか、私は勤務年数の違いと職種希望の有無に注目してきた。このことが受講者の増加に関係していると思う。

②受講料収入よりも経費がオーバーになって赤字の大学がほとんどである

 経費的には、講師料50%、人件費20%、広告費20%、郵便・通信費10%で構成される。文科省調査で計算すると、講師料は50%以上になってしまうことは間違いないから、多くの大学は講師と交渉して、学内7680円、学外19978円という数字よりも安い料金で依頼している。

 そうでないと赤字額はもっと多くなり、長期的に運営していくことはできなくなる。多くの大学が職員人件費は他の業務の方に振り分けて、赤字額を少なくする計算をしている。黒字を計上している大学は1割と言われている。

③利用者の求める講師の選定

 講師の供給源は学内教員か学外の専門家であるが、前者は本業に時間を取られて公開講座への出講は難しくなっていて、出講する余裕はなくなっている。かつてのように大学人の研究成果の伝達という役割は薄れている。代わって、受講者にとって関心のあるテーマや分野を専門とする外部の人を招いて講座を依頼するケースが増えている。

 外部の専門家は講師という肩書きが役立つので、講師料が安くても出講することを強く希望する人が増えている。だが、特別に教授法を学んだという人は少なく、受講者のニーズを正しく受けとめることは難しいので、開講しても受講者を集めることができないことが少なくない。

④運営体制に問題がある

 公開講座を円滑に提供するためには、専門のスタッフと部署が不可欠である。前掲の文科省調査では、「専門機関・組織がある」という割合が65・9%と高い割合になっている。ここで問題にしなければならないのは、専門の常勤スタッフが配置された部門が存在するかということである。スタッフの数は同調査によっても、1人という割合が圧倒的に多い。

 専門部署として、国立の生涯学習センターが全国に約20カ所、私立の同センター、エクステンションセンター、コミュニティカレッジなどが100くらいの数と考えると、先の専門機関の設置割合は、あまりにも高いとみないわけにいかない。

 私は人数よりも公開講座を担当することができるノウハウを持っているかを問いたい。多くの場合、職員人事はローテーション方式で、本人の希望や素養に関係なく2~3年で代わる。前述のようにカルチャーセンターは専門の人を採用して、ローテーション人事はやっていない。

これらの課題は、大学の経営層が考え解決について努力しないと、運営の正常化ができずに、提供側のスタッフも需要側の受講者も苦労しなければならない。しかし、その点の解決は経営層が、数の多い18~22歳の正規学生のマネジメントを重視して、学外とみなす非正規生の大学公開講座は、経営上重視されないので、いつまでも放っておかれてきた。担当レベルとしては、大学公開講座研究会が私立大学を対象とした『公開講座実施状況調査』(2006年)にみる運営上の問題点を引用してみることにした。

 1教室、会場の確保 59%

 2実施に対する学内意識 55%

 3講座内容、企画 49%

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

岡崎図書館の10冊

豊田駅前のスタバで4冊読了。

 昨日、購入した黄色のタートルを着ていたら、バリスタに「黄色ですね。今年の流行色ですね」と言われた。そうなんだ。

 これで4月から1477冊。来週で1500冊を越えます。207万円分ですね。

岡崎図書館の10冊

 336.1『ビジネスモデル・イノベーション』ブレークスルーを起こすフレームワーク10b

 289.3『オバマ「黒人大統領」を救世主と仰いだアメリカ』

 015.5『走れ!移動図書館』本でよりそう復興支援

 302.2『10年目の真実 9.11からアラブの春へ』

 209.7『ホロコーストとポストモダン』

 304『危機とサバイバル』ジャック・アタリ 21世紀を生き抜くための<7つの原則>

 152.1『愛する力。』続 愛する人に。

 130.4『哲学は何を問うてきたか』

 367.2『ハウスワイフ2.0』

 070.1『報道人の作法』メディアを目指す人たちへ
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )