円形や長方形の台に布を張って色糸を使ってなにかの模様などを作ることを刺繍と思っていた。近くの展示場で「刺繍画展」が開かれていることを知り出かけた。というのは「刺繍画」とはどんな作品なのだろうという興味からだった。出かけ前に刺繍とは何か辞書で確認してみた。「刺は針で縫うこと、繍は衣に文様を施すこと。布地に色糸で絵画や文様を縫い表すこと」とある。
作者は市内の高齢者施設で暮らされている89歳の女性、45歳から作り続けた18点を展示。報道では卒寿を祝って作者の弟妹が企画したという。展示場に入ってすぐの真っ赤に染まる富士山、写真かと思い近寄ると、隙間なく色違いの糸で縫われている。クジャクの羽もボタンの花びらも、風景も色糸の綾でしかない。
竹林のトラは目を怒らせ牙を見せるトラの全身画。背景の孟宗竹を思わせる竹は一本一本が実物にたがわない表現で簡略したところがない。葉もひと葉ごと縫われている。そんな一部、顔は写真の通りで、白く光る剛毛そうな口周りの表現には思わず触ってみたくなった。全身の一本一本の体毛が実写以上にリアルに見えるのは錯覚ではない。
刺繍だが陰影もはっきり見分けがつき、作品から離れて観ると絵画か写真のように感じる。しかし、色糸が織りなす立体感と温かみを感じさせところが異なる。刺繍やパッチワークの作品は拝見しているが、展示の刺繍画作品はいづれも大判で、これまでにない創作展を見させてもらった。卒寿だそうだが創作を続けられ次回を期待しながら展示会場を後にした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます