登校する児童は申し合わせたように水筒を持っている。曇空を気にしてか傘持参は低学年と思しき児童に多い。この辺りまでは親の威厳がまだ保たれているのだろう。そんな登校風景の中で「夏休みに行くとこは決まった」という男の子の声、まだ決まっとらん、でわいわいがやがやになった。そうか、気温は夏の様子でも梅雨明けはまだ出ていないものの、2週間もすれば夏休みになる、長い休みの話もおかしくない。
夏休みの行先、「じいじばあば」のところへという光景は新幹線や国内航空便、成田になると海外、大きな荷物を見るだけでも「大変だ」と気遣う。このところの海外の不安定な世情を知ると、無事帰国だけを祈りながらニュース映像を見る。
小学校のころの夏休みは、地域全体が「行くところ」だった。川に畑に田圃、家々は道路と山裾の間、その裏山など、行先はその日その日で決める。無計画と言われればそうだが、上級生についていき、それを伝えてきた。今、そうした場所を歩いていても多くのところが「跡形もない」変わりようで伝えることも出来ない。
そんなことを思いながら歩いていて目に留まったのは「ハゼノキ」。見上げるほどに延びたその木の葉がほんの少しだが紅葉を始めている。秋には目が覚めるような紅葉になり櫨紅葉(はぜもみじ)と呼ぶそうだが、今の時期から色付き始めているとは知らなかった。夏の山遊びでは「親にゃ負けてもハゼノキにゃ負けん」とまじないを口にしながら遊んだ。これに触れるとひどいカブレになる。幸いカブレはしなかったが、まじないを今も覚えていることを驚きながら見上げて通り過ぎる。
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