クリスマスケーキだけではなかろうが、ケーキにイチゴは欠かせない品。さて、ケーキの中のイチゴはいつ食べるか。始めというのは若い人、現れたところで食べるのは年配層という。私はケーキをあまり好まないので思いつかない話だが、別のことで思い出した。それはあるパティシエのイチゴへの思い。
何十年という昔になる。知り合いのイチゴ農家の人と我が家の炬燵で話していた。その年は、関西以西で知人の数張りのビニールハウス以外に収穫が見込めない、というくらいイチゴの大凶作の年だった。そのハウスはある企業の散水用設備の試験農場ですくすく育ち、そのおかげで例年以上の収穫ができた。
さて本題。突然、神戸のケーキ店の店主が訪ねてきた。持っていた手持ちのカバンを開けて「これで売ってもらえるだけイチゴを分けて欲しい」と頭を下げたという。バックには大金が入っていた。気の毒だったが、農業が本職、地元との約束は崩せないと、真摯な姿勢に断腸の思いでお断りしたという。後で聞くと「有名なお店」と教えられ驚いたそうだ。
たかがケーキの飾りに使うイチゴ、パティシエにすればそんな単純なものではないと知った。創作したケーキのためにこの地まで探しに走る、そこまで執着するのか、話を聞きながら思った。何事もこうまでしなければ成し遂げられないことがある。そのパティシエは知人と同年配というから、ご生存なら90歳に近い。
(今日の575) パティシエはイチゴひとつに執着す
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