みことばの光的毎日

聖書同盟「みことばの光」編集者が綴るあれこれ

動かなかったことが…

2024年08月14日 | サムエル記第二

サムエル記第二 14章1−17節

 今さらですがオリンピックでの日本選手の活躍をビデオで見、二人で感動しています。「これもオリンピックの種目なのか!」というものもあったり、鉄棒の「離れ業」を見て、昔はあんなふうに鉄棒から離れてまたつかむなどなかった(たぶん)、ずいぶん難しくなったと思ったりしました。

 14章は、アムノンを殺して他国の王のもとに逃れたアブサロムと父ダビデとの間にできた深い溝のようなものを埋めようとする、ダビデの側近ヨアブの画策と結果を描きます。

 13章最後に「アブサロムのところに向かって出て行きたいという、ダビデ王の願いはなくなった。アムノンが死んだことについて慰めを得たからである」とあります。

 ここを新共同訳聖書は「アムノンの死をあきらめた王の心は、アブサロムを求めていた」と訳し、聖書協会共同訳聖書は「アムノンの死の痛みが和らいできたダビデ王は、アブシャロムに会いたいと思うようになった」と訳します。これらの訳は、14章1節に「王の心がアブサロムに向いている」とあるということばへとスムーズにつながるようです。

 一方で新改訳2017の「アブサロムのところに向かって出て行きたいという、ダビデ王の願いはなくなった」とはどのような意味で用いているのでしょうか。アブサロムのところに攻め込んで行くという意味に取ることができます。ドイツ語のある聖書(NeÜ)も「その後、ダビデはアブサロムに対する行動しようとするのを止めた。アムノンが死んだことについて納得したから」と訳しいています。

 アムノンを殺したアブサロムへの複雑なダビデの思いが、これらのことばからも想像できます。

 ヨアブは王とアブサロムが会わないままでいるのは、この国にとって良いことではないと考えました。そこで、知恵ある女に訴えを持って王に会いに行かせ、何を話すかも与えたのです。

 王は最終の裁判官として、女性の訴えに耳を傾け、冷静で的確な判断を下しました。しかし、ここで女性が訴えている事例とは、ダビデ自身が抱えている問題でした。

 女性のことばは相手が王であることゆえのためらいなどなく、まっすぐなものでした。ヨアブが仕組んだこととはいえ、神は一人の女性を用いて、動かないままでいたダビデを動かそうとしておられるのです。

 自分の前にある膠着状態を、神はどのような手段で動かそうとしておられるのだろうかと、心探られます。


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