マルコの福音書 5章1−20節
ガリラヤ湖の東南に広がるのがデカポリス(「10の町」という意味)地方。主イエスが働きをしておられた時から、さかのぼること300年ほど前にマケドニアのアレクサンドロス大王の後継者によって建てられ、以来ギリシヤ風の町がローマ帝国の支配下にあっても栄えていました。
ここでイエスの一行を迎えたのは、汚れた霊につかれた人。この人にとりついていた汚れた霊は、イエスを拝し、「いと高き神の子イエスよ」と呼び、「私を苦しめないでください」と願います。汚れた霊は、イエスがだれなのかを知り、しかも恐れているのです。
ここで、一人の人を苦しめていた汚れた霊が「私を苦しめないでください」とイエスに願っているのはなんと皮肉なことでしょう。家族は、おそらく何度も治療を試みたことでしょう。それは、「縛っておく」や「押さえつける」ということばによってわかります。自分のからだを傷つけるというのが、彼の悲惨さを物語ります。
イエスは、この人から汚れた霊を追い出して、豚に乗り移らせます。これまでもイエスが汚れた霊を追い出す出来事が記されていますが、ここでは劇的なかたちをとっています。それは、墓場や山で大声で叫んでいたこの人から確かに汚れた霊が出て行ったことを周囲の人がわかるように、とのことだったのかもしれません。
ある時にはツァラアトに汚れていた人をきよめたイエスは、「だれにも何も話さないように」と厳しく戒めておられました。しかしここでは、汚れた霊を追い出してもらった人に「主があなたに、どんなに大きなことをしてくださったのか、…知らせなさい」と言っておられます。
異邦人の地に、一人のイエスの弟子が誕生した瞬間です。そして、私も…。