shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

REBIRTH / アン・ルイス

2010-03-07 | J-Rock/Pop
 私はいわゆるひとつの “歌謡ロック” と呼ばれるジャンルの音楽が大好きだ。要するに昭和歌謡の王道とも言うべき日本的な湿っぽいメロディー・ラインを持った楽曲をギター、ベース、ドラムスを中心とするロックのバンド・サウンドで表現したもので、その源流はテンプターズの「エメラルドの伝説」や加山雄三&ランチャーズの「夜空の星」といった60年代 GS あたりにあると思うのだが、いささか乱暴に言えば日本のロックは基本的にはすべてこの “歌謡ロック” の範疇に属すると思う。
 そんな “歌謡ロック” の女王的な存在がアン・ルイスだ。私が彼女を聴き始めたのは高校時代、ユーミンがアンちゃんに送った「甘い予感」を「OLIVE」というアルバムでセルフ・カヴァーしているのを聴いて興味を持ったのがキッカケだった。「グッバイ・マイ・ラヴ」を始めとするアイドル時代の楽曲には興味が湧かなかったが、「リンダ」や「チーク」といったアルバムは大好きでよく聴いたものだった。もちろん結婚→活動再開後の、日本の歌謡曲に洋楽ロックのエッセンスを融合させた “歌謡ロック” 路線もめちゃくちゃ好きで、ほぼ洋楽一色だった私が80年代でも聴いていた数少ない邦楽アーティストの一人だった。ただ、90年代に入って洋邦問わずヒット曲を追いかけるのをやめたこともあって、彼女を聴くこともなくなってしまった。
 そんな私が彼女と再会したのが2年ほど前のこと、この「REBIRTH」を偶然ネットで見つけ、 “おぉ、懐かしいやん!” と軽い気持ちで試聴クリックすると、いきなりハードなギター・サウンドが飛び出してきてビックリ(゜o゜) “えっ?この曲ってこんなにハードやったっけ?” と思って解説を読んでみると何と2005年に新録音でセルフ・カヴァーしたものだという。コーフンした私は片っ端から試聴クリックしていき、わずか数十秒の断片ながらその凄さを実感、速攻でこの CD をゲットした。
 女性シンガーが若い頃のヒット曲をセルフ・カヴァーしたものには “やめといたらよかったのに...(>_<)” と言いたくなるようなモノが多い。若さや勢いに勝るものはないからだ。しかしそんな時の試練もアン・ルイスには通用しなかった。このアルバムで聴ける姐御のヴォーカルは衰えるどころか80年代よりも声の張り、艶、そして押し出し感がグーンと増し、キーが下がったこともあるが凄味すら感じさせるのだ。しかもバックのサウンドはエッジの効いたギターが唸るバリバリのハードロックで、ツボを心得た絶妙なアレンジも功を奏し、過去のヒット曲に新たな生命を吹き込むことに成功している。私はオリジナルも好きだが、コレを聴いてしまうとパワー不足に感じられてしまい、もう元には戻れない。
 収録曲は①~⑭がセルフ・カヴァーによるリメイクで、⑮~⑰が新曲という構成だ。ニュー・アレンジで21世紀に蘇った①「リンダ」、めちゃくちゃカッコ良いロッカ・バラッドに生まれ変わった②「グッバイ・マイ・ラヴ」、へヴィーなビートと秀逸なコーラス・アレンジ(“ビィチボォイズ~♪” に “California dream~♪” と被せるところが好き!)がたまらない③「甘い予感」、ウエストコースト・ロック・フレイヴァーが曲想にピッタリ合った④「Woman」、まさに大排気量のアメ車のような余裕のヴォーカルを聴かせる⑤「恋のブギウギ・トレイン」とスローなナンバーから徐々にシフト・アップしていって、⑥「立ちっぱなしのBad Boy」、⑦「ラ・セゾン」、⑧「あゝ無情」のハードロック3連発で一気にクライマックスへ持っていく流れもニクイ。姐御の野太いロック・ヴォイスが全開だ。 70'sの歌謡曲と80'sの良質なハードロックのエッセンスを抽出してかき混ぜ、21世紀のサウンドとして提示したところが成功のポイントだろう。
 モトリー・クルーのミック・マーズみたいなギター・リフが炸裂する⑨「In Pleasure」や⑩「Four Seasons」、ヘタな洋楽ロックなんか吹き飛ぶくらいカッコ良いアレンジが圧巻な⑪「六本木心中」、ハイ・エナジー・ハイ・パワーを地で行く⑫「Honey Dripper」、嵐の前の静けさ⑬「美人薄命」、イントロからB'zと間違えそうなぐらいノリノリなロックンロール⑭「天使よ故郷を見よ」と、まさにアルバム・タイトル通りに過去の名曲を見事に RE-BIRTH、生まれ変わらせている。新曲の中ではゼッペリンみたいなサウンドの⑯「Truth Or Lies」が面白い。
 裏ジャケに写る姐御は相変わらずド派手なメイクに星条旗ファッションと、まるでアメリカの女子プロレスラーのような貫録に圧倒される。そーいった一切合財を含めてとにかくめちゃくちゃカッコイイこのアルバム、 B'z やボン・ジョヴィ系のキャッチーでメロディアスなアメリカン・ハードロックが大好きな方に絶対的オススメのスーパー・ウルトラ愛聴盤なのだ。

♪ アン・ルイス 「六本木心中」 ~REBIRTH版~


ラ・セゾン (REBIRTH ver.)


立ちっぱなしの Bad Boy (REBIRTH ver.)