shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

レッツ・ゴー「運命」 / 寺内タケシとバニーズ

2010-03-13 | エレキ・インスト
 昨日に続いて今日も寺内バニーズでいこう。アルバムは私ですら知っている超有名クラシック曲をエレキ・インスト化した「レッツ・ゴー・運命」である。ジャズやロックのミュージシャンの中にはごくたま~にクラシックかぶれの連中がいて、 “クラシックのジャズ化” とか “ロックとクラシックの融合” とかいったエラソーな能書きを垂れてジャズでもクラシックでもロックでもない中途半端な音楽を作って喜んでいるが、彼らに共通するのはクラシックを一段上に見て、自らのアイデンティティをどこかへ置き忘れてきたかのように卑屈なまでにクラシックに擦り寄っていってることである。MJQのジョン・ルイスしかり、ディープ・パープルのジョン・ロードしかり、ELPのキース・エマーソンしかりである。この手の異種音楽交配において、他人の土俵で相撲を取って上手くいった例を私は知らない。やはり自分の世界に引き込んで堂々と勝負してこそプロと言えるのではないか?
 そこで登場するのがエレキの神様、寺内タケシである。クラシックがナンボのモンじゃいとばかりに超速弾きで存在感を示し、クラシックの名曲群をあくまでも素材として扱い、バニーズと共にロックのフィールドで堂々と勝負する... それで出来上がったのが1967年9月に前作「世界はテリーを待っている」からわずか3ヶ月(!)でリリースされたこの「レッツ・ゴー・運命」なのだ。
 全12曲中、クラシックを聴かない私が元々知っていたのは①「運命」、②「白鳥の湖」、⑨「カルメン」、⑫「エリーゼのために」の4曲のみ。エレキ・インストを本格的に聴き始めてベンチャーズ経由で④「熊蜂の飛行」、⑧「ハンガリー舞曲第5番」、⑩「ドナウ川のさざなみ」を知ったというから何をかいわんやだ。残りの5曲③「ペルシャの市場にて」、⑤「ショパンのノクターン」、⑥「剣の舞」、⑦「未完成」、⑪「ある晴れた日に」は初めて耳にするメロディーだ。
 まずは何と言っても①「運命」、コレに尽きるのではないか?誰もが知っているあのメロディーを鬼神のような速弾きプレイで聴ける驚異的なヴァージョンだ。そのテンションの高さはハンパではなく、これでもかとばかりにガンガンギュンギュン弾き倒している。ベートーベンがコレを聴いたら何と言うだろう(^.^) ベンチャーズも演っていた④「熊蜂の飛行」は敢えて彼らとは違うアプローチというかアレンジで攻めているようで、バニーズ独特の重いビートとうねるようなグルーヴ感がたまらない... (≧▽≦) ベンチャーズと言えばこの⑧「ハンガリー舞曲第5番」を改題した「ラップ・シティ」でのノーキー・エドワーズの神業プレイが忘れ難いが、このバニーズ・ヴァージョンでは一味違う寺内流アレンジが楽しめ、ベンチャーズ・ヴァージョンとの聴き比べも一興だろう。
 ⑩「ドナウ川のさざなみ」は0分20秒で入ってくるリード尺八が鳥肌モノ。負けじと1分25秒から炸裂する寺内御大の針飛び状態フレーズにも言葉を失う。名曲は名演を呼ぶというが、まさに曲良し、アレンジ良し、演奏良しの三拍子そろったキラー・チューンだ。ラストの⑫「エリーゼのために」もファズをバリバリに効かせた絵に描いたようなガレージ・ロックに昇華されており、ジミヘンもブッ飛びそうな凶暴なギター・サウンドが快感だ。特に後半で爆発するアドリブは烈火の如き凄まじさで、原曲をモノの見事に破壊し尽くしている。きっとベートーベンも草葉の陰で髪を振り乱してヘッドバンギングしていることだろう。(←するかそんなもん!)

運命


ドナウ川のさざなみ
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