shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

太陽の彼方に / アストロノウツ

2010-03-15 | エレキ・インスト
 エレキ・インスト特集最終回は日本におけるエレキ・ブームの火付け役と言われている「太陽の彼方に」、演奏はもちろんアストロノウツである。時は1964年、太平洋の向こうアメリカはビートルズ上陸で上を下への大騒ぎだったが、日本ではアストロノウツの「太陽の彼方に」が大ヒット、それに追い打ちをかけるように藤本好一がこの曲に “のってけ のってけ のってけ サーフィン、波に 波に 波に 乗れ乗れ~♪” という摩訶不思議な歌詞を付けてカヴァーし、この “のってけ~♪” フレーズが日本中で大流行、ここにベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」(←邦題が“急がば廻れ” って...???)や「パイプライン」が怒涛のように押し寄せ一気に日本のエレキ・ブームは沸点に達したという。
 当時の音楽雑誌に載ったアストロノウツの広告ページを見てみると、そこには “全世界で爆発的大流行、'64の新リズム...サーフィン!!!” という文字がデカデカと踊っている。いつから “サーフィン” がリズムの名称になったのかは知らないが(笑)、まぁ何もかもが大らかで平和な時代だったということだろう。
 この曲、よくよく聴けば同じフレーズを転調して繰り返しているに過ぎず、起承転結もエンディングに向けての怒涛の盛り上がりもない、非常に単調な構成なのだ。まぁだからこそ先の “のってけ のってけ~♪” という単純な歌詞と結びつき、東京オリンピックで浮かれていた一般大衆の頭の中で脳内ループ現象を起こしたのかもしれない。ということで、今日は「太陽の彼方に」5連発で乗ってけぇ~♪

①Astronauts
 アストロノウツはサーフィンとは全く縁のないコロラド州の、しかもインスト専門というワケでもない、単なるローカル R&R バンドだった。アメリカではほぼ無名に近かったのに、何故か日本だけでこの曲がサーフィン・サウンドとして大ヒット。まぁベンチャーズとは次元も格も大違いだが、素晴らしき一発屋として日本洋楽史に永遠にその名を残すグループだ。
太陽の彼方にMovin' [Mono]/The Astronauts #1963#


②藤本好一
 この人のことはよく知らないが、寺内タケシとブルージーンズのバンド・シンガー(?)だったらしい。歌手そのものよりも、タカオ・カンベ(神戸孝夫...アニマルズの「悲しき願い」の訳詞は傑作!)という人が書いた歌詞、コレがアホらしいけれどめっちゃキャッチーでインパクトは抜群だ。
太陽の彼方・・・藤本好一&寺内タケシとブルー・ジーンズ


③寺内タケシとブルージーンズ
 こちらは歌なしのインスト・ヴァージョン。アストロノウツ・ヴァージョンを凌駕する勢いで、寺内御大も気合いの入り方が違います(≧▽≦) この曲は御大のお気に入り曲らしく何度もレコーディングしているが、私は疾走感溢れるこのヴァージョンが一番好きだ。
太陽の彼方に


④ゴールデン・ハーフ
 私が初めてこの曲を聴いたのは多分このゴールデン・ハーフ・ヴァージョン。まだ小学生だったが「黄色いサクランボ」とか「チョットマッテクダサイ」とか大好きで、ドリフの全員集合も毎週見ていた。エバ好きやったなぁ...(^.^)
ゴールデン・ハーフ 太陽の彼方


⑤シュガー
 このシュガーに関しては、確か “クタバッチマエ~♪” と高音でハモッてたコーラス・グループという記憶しかない。そんなことよりも特別ゲスト(?)で張り切る西城秀樹のドラミングが結構サマになっててカッコイイ... (≧▽≦) まさにヒデキ感激!と言いたくなるお宝映像だ。
太陽の彼方に  シュガー

Spotnicks In Japan

2010-03-14 | エレキ・インスト
 私がエレキ・インスト・バンドでベンチャーズに次いで好きなのがスウェーデンのスプートニクスだ。今でこそこう言い切っているが、アメリカやイギリスのヒット・チャートしか知らなかった私は数年前までは彼らの演奏どころかその名前すら知らず、 “スポットニックスって何?” 状態だった。たまたま G3 の “欧米エレキ対決” 企画で901 さんや plinco さんに聴かせていただいた「霧のカレリア」に昭和歌謡と共通する哀愁を感じ、すっかり気に入ってしまったのがすべての始まりだった。
 日本人の心の琴線を震わすマイナー・メロディー(←サビに挿入されたロシア民謡の「トロイカ」がテーマのメロディーと絶妙に溶け合ってます!)をいかにも北欧らしい澄み切ったクリアーなトーンのギターが奏でるこの曲は、スプートニクスがまだ無名だった1961年にフィーネーズ名義でフィンランド・フィリップスから「AJOMIES」というタイトルでリリースしたものものを、1963年のアルバム「イン・ベルリン」に「KARELIA」と改題して再レコーディング、日本では1965年に大ヒットしたというエレキ・インスト屈指の大名曲だ。私はすぐにベスト盤CDをゲットし、ネットでディスコグラフィーを調べ、当時 SWEDISC というレーベルから出ていたボートラ満載のオリジ盤 CDを探す日々が始まった。“スポットニックス”(笑)から比べれば大きな進歩だ。
 当時は既にレコードや CD はネットで買うようになっており、大阪や神戸まで足をのばすことは滅多になかったのだが、天の啓示か、何となく出かけた大阪CDハンティングで思わぬ大収穫(^o^)丿 梅田のディスクJJ でベンちゃんの廃盤 CD を大量に買い込んだ勢いで、一気にミナミも根こそぎいったれとばかりに立ち寄った日本橋のサウンドパックで私を待っていたのがこの「スプートニクス・イン・ジャパン」CD だった。確かオリジ盤ディスコには載ってなかった気がするが、「イン・ジャパン」ということでベンちゃんのケースと同じように日本盤がオリジに違いないと直感した私は1,400円という安さもあって即決した。
 全14曲中、ベスト盤で既に知っていたのは①「ザ・スプートニクスのテーマ」、②「ジャニー・ギター」、④「ハヴァ・ナギラ」、⑦「霧のカレリア」、⑧「空の終列車」の5曲だが、私が断トツで気に入ったのが⑥「涙の太陽」という、ベスト盤には入っていない1曲だった。作詞作曲は Y.Nakajima - R.Hotrivers... ナカジマって、日本人??? ネットを駆使して色々調べ、作詞の R.Hotrivers が湯川れい子さんだと分かりビックリ(゜o゜) 湯川で Hot river というオチだが、日本では1965年にエミー・ジャクソンでヒットしたこの曲を翌66年2月の来日公演で初披露という手際の良さだ。とにかくこの⑥は疾走するようなスピード感がめちゃくちゃカッコ良く、この後にリリースされる「イン・トーキョー」に収録されたスタジオ録音ヴァージョンを遥かに凌ぐ素晴らしさで、私が「涙の太陽」収集を始めるきっかけになった名演なのだ。因みに大張り切りでドラムを乱打してるのは64年ビートルズのオーストラリア公演で扁桃腺のリンゴの代役を務めたジミー・ニコルだ。
 このライヴ盤では⑥以外にも③「何も云わないで」や⑭「見上げてごらん夜の星を」といった日本の歌が何曲か収録されているが、その中で⑥に次ぐ名演としては⑩「夏の日の想い出」が彼らの北欧トーンにピッタリ合っていてエエ感じだ。と、ここまで書いてきて、「夏の日の想い出」って、以前当ブログの「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」でみながわさんに教えていただいた日野てる子の曲ではないか!今の今まで気がつかなかったが、間違いなく “きれいな月ぃがぁ~♪” で始まるあの曲だ。哀調曲の極北に位置するような鈴木道明メロディーを、ボー・ウィンバーグの哀愁を帯びた切ないギターの音色で聴けるのだからたまらない。それにしてもこんな風に思わぬところで繋がるから音楽ブログは面白い(^.^) 一人でネチネチ聴いてたら日野てる子なんて名前、知らないままスルーしていただろうから...
 ⑤「聖者の行進」、⑨「ヘイ・グッド・ルッキン」、⑪「オーヴァー・アンド・オーヴァー」、⑬「ホワット・アイ・セイ」といった曲はヴォーカル入りの平凡なロックンロールで、スプートニクスならではの持ち味が生かされているとは言い難い。彼らはこの頃から徐々に “怪しげな宇宙服を着てスペース・サウンド(笑)を奏でる北欧のギター・インスト・バンド” というイメージからの脱却を図るようになっていくので、このアルバアムはいわゆる過渡期突入直前のライヴと言え、見方を変えれば “爛熟期” 、花で言うと散り始める間際の最も美しい時期の彼らのサウンドを見事に音盤に封じ込めた傑作ライヴと言えるだろう。ただ、この盤は録音レベルがかなり低いので、私はデジタル・ヴォリュームを使って CD-R に焼き直し、ルディ・ヴァン・ゲルダー録音みたいな迫力満点のサウンドにして楽しんでいる(^o^)丿

涙の太陽


カレリア


夏の日の想い出
コメント (8)

レッツ・ゴー「運命」 / 寺内タケシとバニーズ

2010-03-13 | エレキ・インスト
 昨日に続いて今日も寺内バニーズでいこう。アルバムは私ですら知っている超有名クラシック曲をエレキ・インスト化した「レッツ・ゴー・運命」である。ジャズやロックのミュージシャンの中にはごくたま~にクラシックかぶれの連中がいて、 “クラシックのジャズ化” とか “ロックとクラシックの融合” とかいったエラソーな能書きを垂れてジャズでもクラシックでもロックでもない中途半端な音楽を作って喜んでいるが、彼らに共通するのはクラシックを一段上に見て、自らのアイデンティティをどこかへ置き忘れてきたかのように卑屈なまでにクラシックに擦り寄っていってることである。MJQのジョン・ルイスしかり、ディープ・パープルのジョン・ロードしかり、ELPのキース・エマーソンしかりである。この手の異種音楽交配において、他人の土俵で相撲を取って上手くいった例を私は知らない。やはり自分の世界に引き込んで堂々と勝負してこそプロと言えるのではないか?
 そこで登場するのがエレキの神様、寺内タケシである。クラシックがナンボのモンじゃいとばかりに超速弾きで存在感を示し、クラシックの名曲群をあくまでも素材として扱い、バニーズと共にロックのフィールドで堂々と勝負する... それで出来上がったのが1967年9月に前作「世界はテリーを待っている」からわずか3ヶ月(!)でリリースされたこの「レッツ・ゴー・運命」なのだ。
 全12曲中、クラシックを聴かない私が元々知っていたのは①「運命」、②「白鳥の湖」、⑨「カルメン」、⑫「エリーゼのために」の4曲のみ。エレキ・インストを本格的に聴き始めてベンチャーズ経由で④「熊蜂の飛行」、⑧「ハンガリー舞曲第5番」、⑩「ドナウ川のさざなみ」を知ったというから何をかいわんやだ。残りの5曲③「ペルシャの市場にて」、⑤「ショパンのノクターン」、⑥「剣の舞」、⑦「未完成」、⑪「ある晴れた日に」は初めて耳にするメロディーだ。
 まずは何と言っても①「運命」、コレに尽きるのではないか?誰もが知っているあのメロディーを鬼神のような速弾きプレイで聴ける驚異的なヴァージョンだ。そのテンションの高さはハンパではなく、これでもかとばかりにガンガンギュンギュン弾き倒している。ベートーベンがコレを聴いたら何と言うだろう(^.^) ベンチャーズも演っていた④「熊蜂の飛行」は敢えて彼らとは違うアプローチというかアレンジで攻めているようで、バニーズ独特の重いビートとうねるようなグルーヴ感がたまらない... (≧▽≦) ベンチャーズと言えばこの⑧「ハンガリー舞曲第5番」を改題した「ラップ・シティ」でのノーキー・エドワーズの神業プレイが忘れ難いが、このバニーズ・ヴァージョンでは一味違う寺内流アレンジが楽しめ、ベンチャーズ・ヴァージョンとの聴き比べも一興だろう。
 ⑩「ドナウ川のさざなみ」は0分20秒で入ってくるリード尺八が鳥肌モノ。負けじと1分25秒から炸裂する寺内御大の針飛び状態フレーズにも言葉を失う。名曲は名演を呼ぶというが、まさに曲良し、アレンジ良し、演奏良しの三拍子そろったキラー・チューンだ。ラストの⑫「エリーゼのために」もファズをバリバリに効かせた絵に描いたようなガレージ・ロックに昇華されており、ジミヘンもブッ飛びそうな凶暴なギター・サウンドが快感だ。特に後半で爆発するアドリブは烈火の如き凄まじさで、原曲をモノの見事に破壊し尽くしている。きっとベートーベンも草葉の陰で髪を振り乱してヘッドバンギングしていることだろう。(←するかそんなもん!)

運命


ドナウ川のさざなみ
コメント (2)

世界はテリーを待っている / 寺内タケシとバニーズ

2010-03-12 | エレキ・インスト
 私が好きな日本のエレキ・インスト・バンドといえば、日本が誇るエレキの神様、テリーこと寺内タケシ率いるバニーズである。もちろん彼の40年以上のキャリアの大半は “寺内タケシとブルージーンズ” (←第1期から第3期まである...)として活動してきているのだが、1966年から1969年のわずか3年弱の間彼が率いていたバニーズこそが歴代寺内バンド中最強だと思うし、一度聴いたら忘れられないような強烈なインパクトを持った傑作が集中している。
 恥ずかしい話ながら私は長い間、彼のことを “歌のない歌謡曲” 専門のギタリスト、というとんでもない誤解をしていたのだが、エレキ・インスト物にハマッて色々と聴き進むうちに彼に辿り着いた。 “同じインストでもどーせカラオケっぽい演奏ちゃうん?” と思いながらも “どんな曲を演ってるんやろ?” と思いアマゾンで調べてみると、コレが驚いたことにヒット・ポップスを始めとしてジャズのスタンダード・ナンバー、クラシック、そして民謡に至るまで、ありとあらゆるジャンルの素材をエレキ・インスト化しているのだ。試聴してみると、出てきた音は私の予想に反してめちゃくちゃカッコ良い(^o^)丿 ソリッドな音色で繰り広げられる迫力満点のプレイはクラシックであろうが民謡であろうが容赦なくバリバリのロックンロールに仕立て上げている。コレはエライこっちゃとばかりに私は彼のCDを買いまくった。う~ん、まいった。ハズレはほとんどない。中でも私が一番気に入ったのが1967年にリリースされたこの「世界はテリーを待っている」である。
 このアルバムはジャズやフォークのスタンダード・ナンバーを巧くアレンジし、バニーズ流エレキ・サウンドで表現した快作で、凡百のエレキ・インスト・バンドとは激しく一線を画す豊かな音楽性が封じ込められている。収録曲は全12曲で、アルバム全編を通して彼らの最大の武器である轟音が響きわたり、彼らにしか出せない独特のグルーヴ感が横溢しているところが素晴らしい。血湧き肉躍るサウンドとはこういうのを言うのだろう。
 まずは何と言ってもジャズ・ファンなら知らぬ者のいない超有名スタンダード・ナンバー③「朝日のようにさわやかに」と⑤「モーニン」の2曲が凄まじい。へヴィーなビートに乗ってラウドでアグレッシヴなギターが轟わたるそのサウンドは圧巻で、オルガンのうねるようなグルーヴも快感を呼ぶ。穏健派のジャズ・ファンが聴いたら驚倒するだろう。この凶暴なまでのガレージ性を剥き出しにした「朝日」と「モーニン」を聴けるだけでもこのアルバムを買う価値があると思う。
 更に驚くのが②「朝日のあたる家」で、ギターとオルガンのイントロに続いていきなり耳に飛び込んでくる尺八に耳が吸いつく。その哀愁舞い散るメロディーに心を奪われていると絶妙なタイミングでギターへとソロが引き継がれ、エンディングに向かって盛り上がりまくるのだ。隠し味的に使われているヴァイブも効果抜群で、この曲の隠れ名演と言い切ってもいいくらい素晴らしいヴァージョンだ。楽器を持ち替えて寺内御大がドラムを担当する⑫「カミン・ホーム・ベイビー」もめちゃくちゃジャジーでカッコイイ(^o^)丿 オリジナルはハービー・マンのフルートの独壇場だったが、ここでは尺八がメロディを奏で、ヴァイブが縦横無尽にアドリブを連発するという実にスリリングな展開だ。このあたりにも寺内バニーズの音楽的な懐の深さを垣間見ることができる。
 ベンチャーズやスプートニクスといった大物エレキ・インスト・バンドがこぞって取り上げている①「ライダーズ・イン・ザ・スカイ」でも一聴してそれとわかる寺内節が炸裂、先の2大バンドに遜色ない躍動感あふれるヴァージョンに仕上がっている。メンバー紹介が入る⑦「ナイト・トレイン」はタックスマンなリズム(笑)が時代を感じさせるし、キューバン・ボーイズっぽい雰囲気の⑨「ブルー・ムーン」やムード満点の⑩「スターダスト」も面白い。軽快な2ビートに乗って本家レス・ポールも顔負けの自由奔放なプレイを繰り広げる④「世界は日の出を待っている」、一転してガット・ギターによる静謐なプレイに息をのむ⑥「シャイン」、トワンギーなギターの音色がエキゾチックな味わいを醸し出す⑧「夕陽に赤い帆」、ワイルドなギター・プレイがイタ気持ち良い⑪「ムーン・リバー」と、聴きどころ満載だ。
 エレキ・インスト・バンドは “シングルは面白いけどアルバム1枚聴くのは単調でちょっとキツイかも...” というケースが多いが、バニーズのこのアルバムは実にバラエティーに富んでいて何度聴いても聴き飽きないガレージ・ロックの名盤だと思う。

朝日のようにさわやかに


朝日のあたる家

Swingin' Creepers ! - A Tribute To The Ventures -

2010-03-11 | エレキ・インスト
 ついこのあいだまで “春のフレンチ祭り” で萌えてたのに、気がつきゃいつの間にか “春だ!エレキだ!ベンちゃんだ!” と、ベンチャーズ祭りに突入。まぁこの無軌道無責任ぶりこそが明日なき暴走たる所以、昭和歌謡にイエイエにテケテケと、毎日が大好きな音楽三昧で楽しーなったら楽しーな(^o^)丿 ということで、今日はアメリカで作られたベンちゃんへのトリビュート・アルバム「スウィンギン・クリーパーズ ~ア・トリビュート・トゥ・ザ・ベンチャーズ」である。
 まずは何と言ってもジャケットに注目だ。目の覚めるような赤色をバックに 60'sっぽいロゴ、無意味な美女とお約束のモズライト・ギター... そしてこれでどーだとばかりにジャケット上端には “... visual sound STEREO” の文字が躍っている。もうコレだけで十分ベンチャーズ・ファンの心をワシづかみである。秘孔をブチ抜いている。ここはもう “ひでぶ!” と言って砕け散...るんじゃなくて聴くしかないだろう。とにかくアイ・キャッチャーという点でもこのジャケット・デザインのセンスは最高だし、実際のところこの盤はジャケ買いしたようなものだ。
 中身の方はガレージ系のバンド23組によるベンチャーズ・トリビュートで、ベンちゃんの硬派なロックンロール・バンドとしての側面にスポットライトを当てている。それが如実に表れているのが選曲で、「パイプライン」も「ワイプ・アウト」も、そしてあろうことか「10番街の殺人」すら入っていない。「二人の銀座」なんか論外だ(笑) 日本のレコード会社の企画なら即却下だろう。何と言ってもアルバム・タイトルからしてマニアックな「スウィンギン・クリーパーズ」なのだ。さすがはロックンロール発祥の国、アメリカである。
 まず圧倒的に素晴らしいのがキング・ファズことデイヴィ-・アラン & ジ・アロウズの⑮「木の葉の子守唄」だ。参加アーティストの中で私が唯一知っていたのがかつて「アパッチ'65」のヒットを飛ばした彼らなのだが、さすがは年の功というべきか、こんなアグレッシヴな「木の葉」は中々おまへんで(^.^) 特にギターのフレーズがユニークで、めっちゃ気に入っている。ちょっとベースとドラムスのリズム隊が弱いのが玉にキズだが、それでも他のバンドとは次元が違う。格が違う。私はこの演奏を聴いて、ベンチャーズに潜むガレージ性を再認識した。とにかくカッコイイ、このアルバム中一番好きなトラックだ。
 ザ・ヒプノマンの⑧「若さでゴー・ゴー」とザ・ミステリー・アクションの⑲「バード・ロッカーズ」もエエ感じ。どちらもファズ・ギターを活かした演奏で、「ベンチャーズ・ア・ゴー・ゴー」や「ノック・ミー・アウト」といった私が一番好きな60's中期の音作りに挑んでいるのがいい。やっぱりベンチャーズ・サウンドは歪んだギターの音に限るわ(^.^)
 逆に、このアルバム中一番の有名曲カヴァーであるジョン & ザ・ナイトライダーズの⑪「ダイアモンド・ヘッド」だが、何と肝心カナメの “テケテケテケ~♪” がない!当然 “テケテケテケ~♪” が出てくるものと期待しているところへドラム・ロールでは腰砕けになってしまう。これではまるで気の抜けたビールではないか!そういう意味では②「ウォーク・ドント・ラン」も不完全燃焼なスカスカのサウンドで、イマイチ盛り上がりに欠けるのは否めない(>_<) 
 全23曲一気聴きしてみて感じたことは、玉石混交でそれも石の方が多いこと。特にイマイチなのがドラムスで、本家ベンチャーズがメル・テイラーという屈指の名ドラマーを擁していたせいもあるが、とにかくグルーヴ感があまり伝わってこない平板なドラミングのオンパレード(⑯「イエロー・ジャケット」をカヴァーしたサターン・V のリズム隊はかなり良かったけど...)にはガッカリ(>_<) 比べるのも失礼なハナシだが、改めて本家ベンチャーズの凄さが実感できるし、日本のカヴァー・バンドである Dr.K プロジェクトやエド山口&東京ベンチャーズのレベルの高さが浮き彫りになるという実に皮肉なオムニバス迷盤だ。

木の葉の子守唄


若さでゴーゴー

On Stage Encore ! & Live Again / The Ventures

2010-03-10 | エレキ・インスト
 ベンチャーズ日本公演のライヴ盤は、かの有名な「ベンチャーズ・イン・ジャパン」以降、日本でのベンチャーズ人気を反映して毎年のようにリリースされてきたが、ノーキー、ドン、ボブ、メルという最強ラインナップのオリジナル・メンバーによる録音は私の知る限り4枚('65~'67)しか存在しない。小雪の舞う中ギターを抱え、神社の前で蛇の目傘を持った着物姿の女性と談笑するジャケが印象的な「ベンチャーズ・イン・ジャパンVol. 1」('65 Jan)、茶室と思しき部屋でメンバー4人があぐら姿でニッコリ微笑む「イン・ジャパンVol. 2」('65 Jul)、神社の石段の前でハッピ姿で腰をかがめて“ハイ、ポーズ!”的なジャケが笑える「オン・ステージ・アンコール」('66 Jul)、そして何の工夫もないスタジオ・ライヴっぽいジャケが悲しい「ライヴ・アゲイン!」('67 Jul)である。内容的にはやはりヒット曲満載で彼らの絶頂期をピンポイントで捉えた1965年録音の前者2枚が一番充実しており、ベンチャーズのライヴ盤といえばこの2枚!みたいな感があるが、ほとんど話題に上らない66~67年のライヴ2枚だって少々問題はあるにせよ決して悪い出来ではない。ということで、今日は “ベンチャーズ歌謡” つながりでこの2枚を収めた 2 in 1 CD を取り上げたい。
 まず66年夏のライヴということになっている「オン・ステージ・アンコール」だが、コレはスタジオ演奏に拍手を被せた疑似ライヴ。この盤だけ他のライヴ盤と明らかに音が違うし、何よりも拍手の入り方がめっちゃ不自然だからだ。まぁ私としては演奏さえ良ければ別にどっちでもエエのだが...(^.^) 曲目は①「ラ・バンバ」、②「蜜の味」、③「秘密諜報員」、④「カリフォルニア・ドリーミン」、⑤「バットマンのテーマ」、⑥「ナポレオン・ソロのテーマ」、⑦「二人の銀座」、⑧「君といつまでも」、⑨「夜空の星」、⑩「007-0011」、⑪「ワイプ・アウト'66」で、65年のライヴ盤と重なるのは⑪のみというのも嬉しい。雰囲気としてはそれまでのリフ主体のスリリングな演奏から流れるようなメロディを重視した演奏へとシフトしつつあり、③⑤⑥⑪といったメロディアスなロックンロールや⑦⑧⑨といった一連のベンチャーズ歌謡モノがメインの選曲からもそういった路線変更がハッキリと見て取れる。私はポップな曲を辛口に処理した演奏が好きなので、この路線は大歓迎(^o^)丿 かったるい甘さが苦手な⑧以外は全て好きだが、中でも疾走系の③⑨⑩で聴ける超絶技巧のアメアラレ攻撃は圧巻だ。
 67年夏のライヴ盤「ライヴ・アゲイン!」は本物のライヴ音源から取られているようだが、どういうわけか全12曲のうち「二人の銀座」、「ラ・バンバ」、「カリフォルニア・ドリーミン」、「蜜の味」の4曲は先の「アンコール」と全く同じ音源を流用しているのだ。これって詐欺やん!まぁ疑似ライヴの件といい、同一音源流用の件といい、東芝EMI のやることは全くワケがわからないが、そういった諸々の理由でこの2枚のアルバムが黙殺されているのだろう。演奏自体は良いだけに勿体ない話だ。先の4曲を除く収録曲は①「ブルー・シャトウ」、②「北国の青い空」、③「ブラック・サンド・ビーチ」、④「恋はちょっぴり」、⑤「ウリー・ブリー」、⑦「涙のギター」、⑪「夕陽が沈む」、⑫「ダイアモンド・ヘッド'67」の8曲で、②では奥村チヨがフィーチャーされるなど、かなり日本色の濃い内容になっている。ちょうど本国アメリカではビートルズの「サージェント・ペパーズ」が発売され、ロックそのものの価値観が変わろうとしていた時期で、インスト・ロック・バンドとしてのベンチャーズは苦しい時期を迎え試行錯誤を繰り返していただけに、日本における歌謡路線推進に拍車がかかったのかもしれない。この盤の収穫は、スタジオ録音盤ではイマイチ生気に欠けていた①⑦⑪といった日本の曲にライヴならではのグルーヴ感が宿ったことと、モンキーズの④やファラオズの⑤をライヴ・ヴァージョンで聴けることだろう。取って付けたような⑫に思いっ切り違和感を感じてしまうのは、わずか3年という短期間のうちに彼らがそれだけ遠くへ来てしまったということだろう。それでも聴かせてしまうのは彼らの高い演奏力の賜物という他ない。
 ということで色々と怪しい点はあるが、細かいことさえ気にしなければ66~67年のベンチャーズのヒット曲の数々が手軽に楽しめる超お買い得盤といえる。ただ残念なことに、イギリスの See For Miles というレーベルから復刻された一連のこの2 in 1 CD シリーズはすぐに廃盤になり、今となっては法外なプレミアが付いてしまっているのだが...(>_<)

秘密諜報員


007-0011

Pops In Japan No.1 & No.2 / The Ventures

2010-03-09 | エレキ・インスト
 私はベンチャーズが大好き。若い頃は彼らのことを誤解していて単なるテケテケ・ギター・インスト・バンドだと思っていたが、数年前に plinco さんのおかげで彼らが偉大なるロックンロール・バンドだということを知った。特に60年代のアルバムはどれもこれも傑作揃いでロック・ファンは必聴だ。彼らが凡百のインスト・バンドと決定的に違っていた点は、ロック・シーンの流れを敏感に読んで様々なスタイルの楽曲をカヴァーすると同時に、いち早くフェンダー一辺倒を脱して高出力ピックアップ搭載のモズライトへとギターを変え、独特のベンチャーズ・サウンドを確立、更にファズをかけたり多重録音をしたりとアグレッシヴな姿勢でザ・ワン・アンド・オンリーな世界を築き上げたところにあると思う。それでいて他の追従を許さない圧倒的なグルーヴとドライヴ感... これこそがまさに若き日のジミー・ペイジやエディー・ヴァン・ヘイレンが夢中になったベンチャーズ・サウンドの魅力なのだろう。
 そんな彼らにはもう一つ大きな引き出しがあった... 作曲の才能である。66年のアルバム「ゴー・ウィズ・ザ・ベンチャーズ」に収められた「ギンザ・ライツ」は昭和歌謡のエッセンスがギュギュッと凝縮されたようなオリジナル曲で、特に日本を意識して書いたワケではないが出来上がってみるとどことなく日本的な感じがしたのでこういうタイトルを付けたのだという。彼らの前世はきっと日本人だったに違いない(笑) ヘタな日本人作曲家の作る曲よりも遥かに日本的なメロディーを持ったこの曲に目を付けた東芝EMIは永六輔による歌詞と「二人の銀座」という邦題を付けて、山内賢 & 和泉雅子のデュエットででリリースし大ヒット、これこそまさに “ベンチャーズ歌謡” の始まりだった。
 この「ポップス・イン・ジャパン」というアルバムは、ベンチャーズによるジャパニーズ・ポップスの集大成というべき内容で、1960年代後半になって新たなアプローチを模索していたベンチャーズがGSやフォークソングを中心とした当時の日本のヒット曲を演奏したもの。この企画は70年代に入っても続編が次々と制作されていき、アルバム5枚ぐらい出ていたように思う。私はベンチャーズに開眼してレコードやCDを集めまくっていた時に、今はもう閉店した大阪梅田のDisc JJ でベンチャーズの超入手困難 2 in 1 CDシリーズ を大量に発見(←何と1枚1,000円だった...)して狂喜したことがあるが、この「ポップス・イン・ジャパン №1 & №2」もその中の貴重な1枚だ。
 №1の方では⑤「東京ナイト」、⑩「横浜の灯は遠く」、⑪「ブラック・サンド・ビーチ」、⑫「銀色の道」の4曲がオススメ。期待していた GS 歌謡の最高峰①「ブルー・シャトウ」はスローなテンポ設定が災いして生気に欠けるし、③「涙のギター」は悪くはないが、スプートニクス版の方が優れているように思う。それ以外はまるで “歌のない歌謡曲” みたいな感じで、何でベンチャーズがこんなことせなアカンねん!と言いたくなるようなトホホなトラックだ。 №2の方では⑬「いとしのマックス」、⑳「青空のある限り」、(22)「風が泣いている」といったGS系の曲がいい。リズム歌謡屈指の名曲⑲「真っ赤な太陽」はベンちゃんらしさが発揮できず今一歩といったところ。この曲をもっとドライヴさせて聴かせてほしかった。⑭「小指の思い出」はハッキリ言ってちょっと堪忍してほしい(>_<)
 ボートラ7曲の中では上記の(26)「二人の銀座」と(28)「夜空の星」の2曲が抜きん出て素晴らしい。特に加山雄三&ランチャーズの「夜空の星」は哀愁をまき散らしながらハイスピードで疾走するキラー・チューンで、「ベンチャーズ・EPコレクション」という4枚組ボックスの中に入っていたこの曲を初めて聴いた時の衝撃はとても言葉では言い表せない(≧▽≦) もちろん加山ヴァージョンも素晴らしいが、ベンちゃんのヴァージョンはスピード、パワー、テクニックの切れ味と、全ての面で最高のロックンロールに仕上がっており、当のベンチャーズですらこのヴァージョンを超える「夜空」を出していない。とにかく全ベンチャーズ・ソングの中で私的トップ3に入るほど大好きなナンバーがこの「夜空」であり、私に “60年代ベンチャーズの音源を根こそぎ全部イクぞ!!!” と決意させ “テケテケ地獄”(笑)へと引きずり込んだ張本人(?)なのだ。

夜空の星(Yozora No Hoshi・Live Version)・・・ザ・ベンチャーズ (The Ventures)


Ginza Lights(二人の銀座)・・・The Ventures (ザ・ベンチャーズ)

潮風のメロディ / 南沙織

2010-03-08 | 昭和歌謡
 私がリアルタイムで体験した歌謡アイドルは76年から78年ぐらいまでで、キャンディーズで言えば「春一番」~「微笑がえし」、山口百恵なら「イミテイション・ゴールド」~「絶体絶命」あたりまでが一番思い出深いのだが、それ以前の世代、つまりアイドル黎明期の歌手になると自分が小学生だったこともあって余程強いインパクトがないと印象に残っていない。私は山本リンダのイケイケ系ソングが一番好きだったが、それ以外では “左利き” で一世を風靡した麻丘めぐみ、裏声を使ったモノマネが楽しかった天地真理やアグネス・チャン、曲が覚えやすかった小柳ルミ子ぐらいしか記憶にない。今日取り上げる南沙織は1971年のデビューということで、天地真理、小柳ルミ子と並んで3人娘と呼ばれていたらしいが、残念ながらアイドルとしてもヒット曲としてもほとんど記憶にないというのが正直なところだった。
 そんなシンシアを本格的に知るきっかけになったのが5年ほど前のこと、フランス・ギャルの「夢シャン」が好きになり、この曲の入っている盤は全部買うぞ宣言をして世界中のありとあらゆる「夢シャン」を発掘していてこのアルバムにブチ当たった。曲目を見るとカヴァー・ポップスのオンパレードだ。ジャケットも可愛い。3人娘の中でも断トツの可愛さではないか。早速ヤフオクでゲット、1,000円だった。
 この2nd アルバム「潮風のメロディ」は、何とデビュー・アルバム「17才」の2ヶ月後(!)にリリースされたもので、シングル①「潮風のメロディ」とそのB面④「なぜかしら」以外はすべてカヴァー、しかもその2曲とも前アルバム「17才」に既に収録済みというから驚きだ。大胆不敵というか、商魂たくましいというか、ファンに二度買いさせて涼しい顔の日本のレコード会社らしいやり方だ。まぁテキトーにでっち上げたような無味乾燥な埋め草オリジナル曲よりも古今東西の名曲をシンシアの瑞々しい歌声で聴けるので、私のようなカヴァー・ヴァージョン・ハンターにとってはありがたいことなのだが...(^.^)
 ①「潮風のメロディ」は文字通り爽やかな風を感じさせるようなナンバーで、シンシアの清潔感溢れる歌声が耳に心地良い。私の少し上の世代の方なら甘酸っぱい思い出が蘇ってきて胸キュンしてしまうのではないだろうか?楽曲としても実によく出来ていて、特に転調サビの “一人で歩く港~♪” のラインが最高にキマッている!!! 筒美メロディーの真髄ここに極まれり、と言いたい1曲だ。メリー・ホプキンの②「悲しき天使」(Those Were The Days)は彼女の伸びやかな歌声によって実に瑞々しい印象を与えるヴァージョンになっている。少しテンポが速すぎて原曲が持っていた独特の哀愁が感じられないのが玉にキズか。欧陽菲菲(←この人も大好き!)の③「雨の御堂筋」はベンチャーズ歌謡の中でも「京都の恋」と一、二を争う大傑作で、その哀愁舞い散るメロディーが好きで好きでたまらない。そんなスーパーウルトラ愛聴曲をシンシアの歌声で聴ける喜びを何と表現しよう? A面では①と並んで好きなトラックだ。
 前後左右をカヴァー曲に挟まれてポツンと居心地が悪そうな④「なぜかしら」はいかにもアイドル歌謡のB面らしいイキそうでイカない展開の曲。曲としては平板だがアレンジはかなり工夫されていて聴き易い。ビージーズの⑤「小さな恋のメロディ」(Melody Fair)はゆったりした曲調が彼女に合っているのか、気合いの入ったヴォーカルを聴かせてくれる。一人追っかけ二重唱も懸命さが伝わってきて思わず “もっとリラックスしてエエねんで~(^.^)” と肩を抱きたくなってしまう(笑) ②と同じく原曲よりもかなり速いテンポで歌われるジリオラ・チンクエッティの⑥「雨」は彼女自身がこの曲を好きなのか、あるいはたまたま曲想と彼女の歌唱スタイルが合っていたのか、実に溌剌と歌っている。特にBメロからの流れるような展開が素晴らしい。
 ディオンヌ・ワーウィックの⑦「小さな願い」(I Say A Little Prayer)ではアップテンポで水を得た魚のようにバカラック・メロディを歌うシンシアの清々しい歌声が楽しめる。ヘレン・シャピロの⑧「悲しき片想い」(You Don’t Know)は若さ溢れる熱唱だし、ドリス・デイの⑨「先生のお気に入り」(Teacher’s Pet)はこのアルバム中一番唯一の50'sヒットソングながら、ハジケるような軽快なノリでめちゃくちゃキュートなナンバーに仕上がっている。コレ、結構な掘り出し物かも...(^o^)丿
 ダイアナ・ロス & ザ・スプリームズの⑩「ラヴ・チャイルド」は歌いこなすのは中々難しいナンバーだと思うが、高速で一気にたたみかけるように歌うパートなんか、かなり善戦している。フランス・ギャルの⑪「夢みるシャンソン人形」は浅田美代子や小林麻美など、当時の新人歌手がこぞってカヴァーしていた女性アイドル御用達の名曲だが、シンシアの堂々たる歌いっぷりも聴き応え十分だ。シーカーズの⑫「ジョージー・ガール」はちょっとバックコーラスがクドイが、寄り添っていたコーラスが離れて彼女の独唱になるパートが聴き所。この歌声、めちゃくちゃ萌えまっせ(^o^)丿 それにしても私の好きな曲ばかり歌ってくれるのが何よりも嬉しい。デビューして2ヶ月足らずということで、まだ歌の表現力とか吸引力とかいう次元には達していないが、洋楽ポップスのカヴァーに取り組む17才のシンシアの初々しい歌声が楽しめる、70'sアイドル・ファンにとってはたまらない1枚だと思う。

潮風のメロディ


雨の御堂筋
コメント (6)

REBIRTH / アン・ルイス

2010-03-07 | J-Rock/Pop
 私はいわゆるひとつの “歌謡ロック” と呼ばれるジャンルの音楽が大好きだ。要するに昭和歌謡の王道とも言うべき日本的な湿っぽいメロディー・ラインを持った楽曲をギター、ベース、ドラムスを中心とするロックのバンド・サウンドで表現したもので、その源流はテンプターズの「エメラルドの伝説」や加山雄三&ランチャーズの「夜空の星」といった60年代 GS あたりにあると思うのだが、いささか乱暴に言えば日本のロックは基本的にはすべてこの “歌謡ロック” の範疇に属すると思う。
 そんな “歌謡ロック” の女王的な存在がアン・ルイスだ。私が彼女を聴き始めたのは高校時代、ユーミンがアンちゃんに送った「甘い予感」を「OLIVE」というアルバムでセルフ・カヴァーしているのを聴いて興味を持ったのがキッカケだった。「グッバイ・マイ・ラヴ」を始めとするアイドル時代の楽曲には興味が湧かなかったが、「リンダ」や「チーク」といったアルバムは大好きでよく聴いたものだった。もちろん結婚→活動再開後の、日本の歌謡曲に洋楽ロックのエッセンスを融合させた “歌謡ロック” 路線もめちゃくちゃ好きで、ほぼ洋楽一色だった私が80年代でも聴いていた数少ない邦楽アーティストの一人だった。ただ、90年代に入って洋邦問わずヒット曲を追いかけるのをやめたこともあって、彼女を聴くこともなくなってしまった。
 そんな私が彼女と再会したのが2年ほど前のこと、この「REBIRTH」を偶然ネットで見つけ、 “おぉ、懐かしいやん!” と軽い気持ちで試聴クリックすると、いきなりハードなギター・サウンドが飛び出してきてビックリ(゜o゜) “えっ?この曲ってこんなにハードやったっけ?” と思って解説を読んでみると何と2005年に新録音でセルフ・カヴァーしたものだという。コーフンした私は片っ端から試聴クリックしていき、わずか数十秒の断片ながらその凄さを実感、速攻でこの CD をゲットした。
 女性シンガーが若い頃のヒット曲をセルフ・カヴァーしたものには “やめといたらよかったのに...(>_<)” と言いたくなるようなモノが多い。若さや勢いに勝るものはないからだ。しかしそんな時の試練もアン・ルイスには通用しなかった。このアルバムで聴ける姐御のヴォーカルは衰えるどころか80年代よりも声の張り、艶、そして押し出し感がグーンと増し、キーが下がったこともあるが凄味すら感じさせるのだ。しかもバックのサウンドはエッジの効いたギターが唸るバリバリのハードロックで、ツボを心得た絶妙なアレンジも功を奏し、過去のヒット曲に新たな生命を吹き込むことに成功している。私はオリジナルも好きだが、コレを聴いてしまうとパワー不足に感じられてしまい、もう元には戻れない。
 収録曲は①~⑭がセルフ・カヴァーによるリメイクで、⑮~⑰が新曲という構成だ。ニュー・アレンジで21世紀に蘇った①「リンダ」、めちゃくちゃカッコ良いロッカ・バラッドに生まれ変わった②「グッバイ・マイ・ラヴ」、へヴィーなビートと秀逸なコーラス・アレンジ(“ビィチボォイズ~♪” に “California dream~♪” と被せるところが好き!)がたまらない③「甘い予感」、ウエストコースト・ロック・フレイヴァーが曲想にピッタリ合った④「Woman」、まさに大排気量のアメ車のような余裕のヴォーカルを聴かせる⑤「恋のブギウギ・トレイン」とスローなナンバーから徐々にシフト・アップしていって、⑥「立ちっぱなしのBad Boy」、⑦「ラ・セゾン」、⑧「あゝ無情」のハードロック3連発で一気にクライマックスへ持っていく流れもニクイ。姐御の野太いロック・ヴォイスが全開だ。 70'sの歌謡曲と80'sの良質なハードロックのエッセンスを抽出してかき混ぜ、21世紀のサウンドとして提示したところが成功のポイントだろう。
 モトリー・クルーのミック・マーズみたいなギター・リフが炸裂する⑨「In Pleasure」や⑩「Four Seasons」、ヘタな洋楽ロックなんか吹き飛ぶくらいカッコ良いアレンジが圧巻な⑪「六本木心中」、ハイ・エナジー・ハイ・パワーを地で行く⑫「Honey Dripper」、嵐の前の静けさ⑬「美人薄命」、イントロからB'zと間違えそうなぐらいノリノリなロックンロール⑭「天使よ故郷を見よ」と、まさにアルバム・タイトル通りに過去の名曲を見事に RE-BIRTH、生まれ変わらせている。新曲の中ではゼッペリンみたいなサウンドの⑯「Truth Or Lies」が面白い。
 裏ジャケに写る姐御は相変わらずド派手なメイクに星条旗ファッションと、まるでアメリカの女子プロレスラーのような貫録に圧倒される。そーいった一切合財を含めてとにかくめちゃくちゃカッコイイこのアルバム、 B'z やボン・ジョヴィ系のキャッチーでメロディアスなアメリカン・ハードロックが大好きな方に絶対的オススメのスーパー・ウルトラ愛聴盤なのだ。

♪ アン・ルイス 「六本木心中」 ~REBIRTH版~


ラ・セゾン (REBIRTH ver.)


立ちっぱなしの Bad Boy (REBIRTH ver.)

恋はみずいろ / ヴィッキー

2010-03-06 | European Pops
 いつもコメントを下さるみながわさんから “恋はみずいろ” 大会のリクエストをいただいた。 “春のフレンチ祭り” のきっかけを作ってくださったことへの感謝の意を込めて、早速 “恋はみずいろ” 大会、気合いを入れてやらせていただきます☆彡
 この曲は1967年にヴィッキー・レアンドロスがユーロヴィジョン・コンテストにルクセンブルク代表として参加した時のエントリー曲だったのだが、結局優勝したのはイギリスのサンディ・ショウで、彼女は4位に終わってしまう。しかしその翌年、ポール・モーリアのインスト・ヴァージョンが突如全米で大ブレイク、5週連続№1に輝いたのだから世の中一体どーなってるのかワケが分からない。聞くところによるとフランス産ポップス唯一の全米№1らしいが、私の耳には上質なイージー・リスニングにしか聞こえない。まぁこの頃のアメリカン・チャートって何でもアリのグチャグチャ状態やったけど...(>_<) 
 手持ちのレコードやCDをチェックしてみて思ったのは、この曲のカヴァー・パターンは大きく分けて4つに分類できるということ; (1)60'sフレンチ女性シンガー、(2)60's~70's歌謡曲の女性歌手、(3)ギター・インスト・バンド、(4)その他の特殊楽器、である。因みにイージー・リスニング系は持ってません。私が好きなのは(1)と(2)で、(3)ではベンチャーズ、スプートニクス、それにジェフ・ベック大先生なんかもこの曲を取り上げているのだが、どれもこれも “歌のない歌謡曲” みたいでピリッとしない。(4)はウクレレやハープなど、マイナーな弦楽器に向いているようだ。

①Vicky
 私にとっての “恋はみずいろ” はヴィッキーが原点であり、スタンダードであり、そして最高峰である。これほどこの曲の髄を見事に引き出した歌唱を私は他に知らない。彼女の伸びやかな歌声を最大限に活かした絶妙な器楽アレンジも素晴らしい。
ヴィッキー=レアンドロス ♪L'AMOUR EST BLEU <邦題:恋はみずいろ> (67)


②Claudine Longet
 舌っ足らずのフランス語がたまらないクロディーヌ・ロンジェがこの名曲を甘~いウィスパー・ヴォイスで歌うのだから萌えるなと言う方が無理(≧▽≦) 私と同じくその筋系が好きなご貴兄はフニャフニャと腰砕けのメロメロ状態になること請け合いだ。
Claudine Longet- L'amour Est Bleu (Love Is Blue)


③Sylvie Vartan
 70年代初め、洋邦問わずこの曲をカヴァーするシンガーが多かったが、シルヴィも1974年の日本企画アルバム「サバの女王」でこの曲を取り上げている。歌は良いが、この時代特有の薄っぺらいバックの演奏がイマイチ好きになれない(>_<)
シルヴィ・バルタン Love is blue 恋はみずいろ


④サンディー
 アジアン・ビューティ、サンディーが巨匠ハーブ・オオタの哀愁舞い散るウクレレ演奏をバックに歌うこのヴァージョンはヴィッキー版に比肩するぐらい気に入っている。彼女の優しく包み込むような歌声は癒し効果抜群だ(≧▽≦)
恋はみずいろ


⑤天地真理
 70年代前半に活躍したアイドル歌手の初期アルバム用埋め草には欧米ポップスのカヴァーが使われることが多くて結構狙い目なのだが、これはそんな中でも掘り出し物のひとつ。彼女の透明感溢れる歌声が曲想と上手く合っている。
天地真理【恋は水色】LOVE IS BLUE

コメント (6)

さよならを教えて / フランソワーズ・アルディ

2010-03-05 | European Pops
 フレンチ・ポップスというとどうしてもシルヴィ・バルタンやフランス・ギャルといったイエイエ・アイドルのイメージが強いが、もちろん60年代フレンチ女性歌手のみんながみんなキャピキャピしていたわけではなく、落ち着きがあって知的でお洒落という “カッコイイ女性” 一派もちゃーんと存在していた。そんな一人が今日取り上げるフランソワーズ・アルディである。
 数年前、フレンチ・ポップスに目覚めて様々な女性シンガーを聴き漁っていくうちにフランソワーズ・アルディという名前に出くわした。フランソワーズか... もう名前だけで雰囲気抜群である。早速試聴してみると、どっかで聞いたことのあるような懐かしいメロディーが流れてきた。それがテレビの CM だったのかドラマの主題歌だったのかすら思い出せないが、フランス映画のワン・シーンを思わせるようなそのアンニュイなヴォーカルには確かに聞き覚えがあった。途中のボショボショボショ...という “語り” の部分が何を言ってるのかサッパリわからないため、まるでサウンドの一部に同化したように響き、それがかえってめちゃくちゃカッコイイのだ(^o^)丿 それがフランソワーズ1968年のヒット曲「さよならを教えて」(Comment Te Dire Adieu)だった。
 この曲、元々は第2次大戦時に “イギリス軍の恋人” と言われたヴェラ・リンが1954年に歌った “It Hurts To Say Goodbye” のカヴァーなのだが、それにあのセルジュ・ゲンスブールがフランス語詞をつけ、アンニュイな魅力横溢のフレンチ・ポップスとして再生したのがフランソワーズの「さよならを教えて」というワケだ。英米のロック/ポップスに慣れた私の耳には、そのどこか物憂げでけだるい感じが気持ち良く、 “こんなフレンチもエエよなぁ~(^o^)丿” とすっかり彼女の魅力にハマッてしまった。
 彼女のデビューは1962年、BMG 系の Vogue レーベルから「男の子女の子」という、郷ひろみの曲と間違えそうなタイトルの曲でデビュー、当時のフランス音楽シーンはイエイエ胎動期で、バックの演奏なんかシルヴィ・バルタンらの曲と似たような感じながら、彼女の憂いを含んだクールなヴォーカルは他のイエイエ・アイドルとは異質な雰囲気を醸し出していた。やがてイエイエ・ブームの終焉と時を同じくして1967年で Vogue レーベルを離れ、それ以降は年に1回アルバムを発表するだけというマイペースの活動になっていくのだが、そのサウンドもよりメランコリックで繊細なものになり、フォーキーな色合いを増していく。そんな “中期のフランソワーズ” を代表する1曲がこの「さよならを教えて」で、同時期の「もう森へなんか行かない」や「月の妖精」と並ぶフランソワーズ屈指の名唱だ。日本で一番聴かれているのも多分この頃の彼女だろう。私はフランス原盤EP、日本盤LP、日本盤シングル、日本盤CDと4種類持っている(笑)が、日本ではその後原盤権がEMIジャパンに移り、彼女の諸作がアホバカ CCCD になっているので要注意、堅気の音楽ファンにはエピックソニーから出た20曲入りベストCDが選曲・音質共にオススメだ。

Comment Te Dire Adieu
コメント (2)

トマト・ジュース 乾杯!! / リタ・パヴォーネ

2010-03-04 | European Pops
 今日はフレンチ・ポップスとは親戚みたいな関係(?)のイタリアン・ポップスでいこう。シャンソンやカンツォーネを源流とする独特のリズムとメロディー、英語とは一味違った雰囲気を醸し出すフランス語やイタリア語の歌声、そしてめちゃくちゃ可愛いジャケットと、そのすべてが新鮮に感じられた私は、シルヴィ・バルタン、フランス・ギャル、シェイラの “イエイエ3人娘” にミーナとジリオラ・チンクエッティというカンツォーネの歌姫2人を加えた5人の女性歌手をメイン・ターゲットに集めていったのだが、ビッグ・ネーム5人の音源収集が一段落すると次はそれ以外のシンガーも聴きたくなり、フィールドはどんどん狭く、対象はマイナーになっていった。英米ポップスでいうところの “ワン・ヒット・ワンダーズ” 探しの始まりだ。
 しかしこれは困難を極めた。英米のようにビルボードやキャッシュ・ボックス、ニュー・ミュージカル・エクスプレス、メロディ・メイカーといったヒットチャートのデータがあるワケじゃなし、ネットで調べようにもフランス語やイタリア語では何のこっちゃサッパリで、大げさでなく砂漠で針を探すようなものだった。そうなると頼りになるのはリアルタイムで60年代を体験してきた人の記憶だけである。そこで登場するのが毎度おなじみの 901 さんだ。もちろん40年以上も前のことなのであやふやな記憶なのだが、まったく何の知識もない私に調べるための様々なヒントを提供して下さった。ある時 “「トマトジュース何たら」っていう曲あったで。アレ誰やったかなぁ... 確か「にんじん娘」とか呼ばれとったなぁ...” 私はワラにもすがる思いで(←何でやねん!)ググりまくり、ついにその歌手と曲の名前を突きとめた。それがリタ・パヴォーネの1965年のヒット曲「トマト・ジュース 乾杯!!」で、原題は「Viva la pappa col pomodoro」という。
 60'sオールディーズをフル・コーラス聴けるサイト(←今はアクセス不可状態みたいだが...)で聴いてみたら、これがもう楽しいのなんの... ウキウキワクワクするようなメロディーに弾けるようなリズム、映画「第三の男」のテーマでお馴染みのアントン・カラスが奏でる軽快なチターに乗ってイタリア版ブレンダ・リーみたいなパワフルな歌声で開口一番 “ビィバ ラ パッ パッ パッ パッ、コル ポポポポポポ ポモドォーロ♪” とくるのだ。これで “オモロイなぁヽ(^o^)丿” と思わなければポップス・ファンではない。こんな楽しい歌、洋邦問わず最近ではちょっとお目にかかれないだろう。
 60年代にはこのように一緒に口ずさみたくなるような楽しさ一杯のヒット曲が巷に溢れていた。難解な音楽を好む人たちから見れば “ポポポポポポって...アホか...” の一言で片付けられそう(笑)な盤だが、 “音” を “楽” しむのが音楽の原点であるとするならば、このように聴いているだけで元気が出てくるようなノーテンキなハッピー・チューンの復権こそが、沈滞気味(というか壊滅寸前?)の今のミュージック・シーンに必要なのではないかと思う。それにしてもホンマにオモロイ曲やなぁ... もう1回聴こっと(^o^)丿

Rita Pavone "Viva la pappa col pomodoro"
コメント (4)

Irresistibilmente / Sylvie Vartan

2010-03-03 | European Pops
 私は本格的に音楽に目覚めた時からずっと洋楽を中心に聴いてきた。しかし外国の歌を聴く時に一番のネックになるのが言葉の壁である。ビートルズやカーペンターズで鍛えられたせいか英語の歌はまだすんなり心に入ってくるが、英語以外の歌は何を唄っているのかサッパリ分からない。だから大好きなギャルやバルタン、オーラの歌もタイトルの読み方どころかその区別さえつかない、まさにお手上げ状態だ。
 それに比べ、ヨーロッパの人たちには2~3ヶ国語を話せるバイリンガルやトリリンガルが珍しくない。当然私の大好きなフレンチ、イタリアンの歌姫たちも様々なバイリンガル録音を遺しており、 “フレンチ、イタリアン好き” でなおかつ “ちょっと変わったもの好き” の私はそういう盤を eBay で見つけてきてはガンガン買い漁ったものだった。フランス・ギャル「夢シャン」のドイツ語盤やイタリア語盤、チンクエッティ「雨」のスペイン語盤や「悲しき天使」のフランス語盤など、結構珍盤が多い。そういえばギャルがイタリア語で歌う「雨」もあったなぁ。同じシンガーが同じ曲を歌っても言語が変わるだけで雰囲気も微妙に違っていて結構楽しめるのだ。とまぁこのように大抵はシングル盤として単発でリリースされることが多いのだが、中にはLP1枚まるごと他国語盤という珍しいレコードもあった。それが今日ご紹介するシルヴィ・バルタンのイタリア語ヴァージョン集「イレジスティビルメンテ」である。
 このレコードは日本はおろか本国フランスでも出ておらず、1975年にイタリアのみでリリースされた稀少盤で、オークションにも滅多に出てこない。そもそもこの盤の存在自体あまり知られていないようだ。私はたまたまモーツァルトの交響曲をモチーフに書かれた「哀しみのシンフォニー(Caro Mozart)」という彼女のヒット曲をベスト盤CDで聴いてめちゃくちゃ気に入り、ぜひコレをオリジナル盤のアナログ・サウンドで聴いてみたい(←何やかんや言うても、ヴォーカルを一番自然な音で聴くにはアナログLPに限ると思います...)と思って彼女のディスコグラフィーを調べ、そこで初めてフランス・オリジ盤には入っていないことを知り、このイタリア盤に辿り着いたという次第。早速eBayで検索してみたが、そんなモノが出ているワケがない。しかしそんなことで怯んでいてはイエイエ・マニアの名がすたる。既にフランス・ギャル「Zozoi」のeBay Franceで味をしめていた私は今度は eBay Italia を検索してみた... あった... しかも49ユーロだ。コレってめっちゃオイシイやん... もらった!!! 結局誰も来ず、無競争でこの激レア盤を手に入れることが出来た。因みにさっきeBay Italia を覗いてみたら 150ユーロだった。何かめっちゃ得した気分だ(^.^)
 収録曲は全12曲、RCA Italia の若草色のレーベルが新鮮だ。フランス語もイタリア語も何を言うてんのか全然わからない点は同じだなのが、イタリア語で吹き込まれたA-①「あなたのとりこ」はやはりフランス語ヴァージョンが耳にこびりついているので、言葉の響きやリズムへの乗り方など何となく変な感じがしてしまう。オケも違うので余計に違和感を感じるのかもしれないが、珍盤好きの私としてはコレはコレで味があって面白い。A-③「ズン・ズン・ズン」はノリの良いマーチ調の曲で、1968年にイタリアでミーナとオーラの、フランスではダリダとシルヴィのヴァージョンがヒットした。それにしても凄い顔ぶれの競作である。この曲の旋律に歌い手を刺激するような何かが潜んでいるのだろうか?
 B-①「ブォナセーラ・ブォナセーラ」はイタリア語で “コンバンワ” という意味で、シルヴィの表現力豊かなヴォーカルとダイナミックなストリングス・アレンジが絶妙にマッチしてイタリア人顔負けのネアカなカンツォーネになっている。B-③「哀しみのシンフォニー」はモーツァルトの交響曲をアダプトして見事なポップスに仕立て上げた発想が素晴らしい。クラシックが苦手な私でもコレには唸ってしまった。シルヴィの憂いを帯びた歌声がこの旋律が持つ哀愁をこれ以上ないぐらいに引き出しており、ハッキリ言ってめちゃくちゃ気に入っている1曲だ(^o^)丿 尚、この曲は発表当時フランスを除く各国で発売されたということだが、何でやろ?フランス人はモーツァルト嫌いなんかな?
 他の曲も基本的にはイタリアンな明るいポップスになっており、B-②「ラ・ジオベントゥ」やB-⑤「クアンド・ソリディ・トゥ」なんか結構耳にこびりつく印象的なフレーズの波状攻撃が楽しいし、ドラマチックなA-④「ベイビー・カポネ」やシルヴィ版 “ハニー・パイ” みたいなA-⑤「デュ・ミヌティ・ディ・フェリチタ」なんかまさに変幻自在のヴォーカルで、彼女のシンガーとしての魅力が堪能できるトラックだ。このアルバムはいつものフレンチ・シルヴィではないが、70年代前半の彼女の歌い手としての充実ぶりがビンビン伝わってくる好盤だと思う。

シルヴィ・バルタン Irresistibilmente Italian


シルヴィ・バルタンのケッサク空耳


SYLVIE VARTAN-Caro Mozart(1971)
コメント (4)

Zozoi / フランス・ギャル

2010-03-02 | European Pops
 春のフレンチ祭り(←何か食パンみたい...笑)、今日はフランス・ギャルの登場だ。901 さんに聴かせていただいた「夢みるシャンソン人形」の中に私を魅了する昭和歌謡と同質の哀愁を感じ、「娘たちにかまわないで」や「アイドルばかり聞かないで」、「涙のシャンソン日記」etc、ギャルのキュートな歌声とゲンスブール・メロディーが醸し出すザ・ワン・アンド・オンリーな世界にすっかりハマッてしまった私は彼女のイエイエ・アイドル時代のヒット曲が集中するフィリップス時代(1963-1968)のEP盤を1枚また1枚と集めていった。当時のフランス音楽界はLPでもシングルでもなく、4曲入りEP盤が中心だったし、何よりもチャーミングなEP盤のジャケット(何故かシングル盤は2色刷りの味気ないジャケットばかり...)にすっかり魅了されてしまったからだ。結局、フィリップス時代の音源はほぼ制覇し、ある時は天真爛漫な、またある時はクールでジャジーなギャルの歌声を楽しんでいた。
 そんなある時、ネットのギャル・サイトで気になる記事を発見; “ギャルにはフィリップスを離れた後に「Zozoi」というサバービアなフレンチ・ブラジリアン・グルーヴ・ナンバーがあって、それはLPにも入ってないしもちろんCD化もされていないマニア垂涎の激レア・シングル盤” とのこと。 “サバービアなギャル” やと??? 何じゃいそれは? 当時の私は “サバービア” という言葉に弱かった。弱いと言っても別に大好きで目がないという意味ではなく、ワケがわからんけど何となくカッコ良さそうで、ヤフオクでよく見かける “オルガンバー” や “クボタタケシ” 同様、そーいった言葉を添えるだけで後光が差してくるように感じてしまう必殺のキーワードだった。今にして思えば情けない話だが、とにかく興味をひかれた私が eBay で検索してみると、たま~に出品されはするものの、ビッドが殺到して落札価格がハンパではない(>_<) いくら何でもシングル盤1枚に$100も出せへんよ(>_<) 今なら YouTube から DL して MP3 変換し、CD に焼くという悪知恵も浮かぶが(笑)、当時の私は MP3 って言われても RX-7 みたいな車の型番と勘違いするぐらいの知識しかなかったので(←ホンマです。今でも MP4 とか FLV とか、何のこっちゃよぉ分かりません...)、何とかならんか考えを巡らせた結果、通常の eBay ではなくフランス人しか見ない eBay fr. で網を張って辛抱強く獲物を待つことにした。その甲斐あって、ついにこの「Zozoi」を39ユーロでゲット、少々値は張ったが流通価格の半値以下だ。英語のめっちゃ怪しいフランス人とメールで苦闘した価値は十分あったというものだ。
 送られてきた盤は La Compagnie というよく分からないフランスのレーベルから1970年にリリースされたもので、何とブラジル録音だ。 “サバービアなギャル” ってどんなんやろ?と思いながらターンテーブルに乗せると、いきなりラテン・モード全開のイントロが爆裂!サンバのノリでガンガン飛ばすグルーヴィーなパーカッションに華麗なる高速ピアノが絡みつき、妖しげな男声コーラスが “ケスクセェ~♪” (←私にはどうしても “ケツ臭ぇ” に聞こえてしまうのだが...笑)と執拗に繰り返す。うわぁ~、コレは確かに凄いわヽ(^o^)丿 更にホーン群まで乱入してブラジリアン・サンバのうねる様なグルーヴが炸裂する中、ギャルがキュートなウィスパー・ヴォイスでスキャットをばっちりキメるという、まさに必殺のキラー・チューンだ。特にエンディング近くになって笑い転げるギャルがめちゃくちゃ可愛い(≧▽≦) “オルガンバー・サバービア系” の中には何でこんなんがエエねん?と首をかしげたくなるような過大評価盤もあるが、コレは正真正銘の大アタリ。私に “フランス・ギャルはゲンスブールのイエイエだけやない!” と痛感させてくれた、 “フロアDJのマスト・アイテム” の看板に偽りなしの名曲名演なのだ。

FRANCE GALL / ZOZOI

天使のらくがき / ダニエル・ビダル

2010-03-01 | European Pops
 私をフレンチ・ポップス狂いにしたのはG3仲間の 901 さんと plinco さんである。お二人ともちょうど私よりも一世代上の方なので、60年代をリアルタイムで経験されている。だから私のような “音楽は60年代が最高!” (←ただしジャズは50’sが最高で60’sは最低やけど...)と信ずる人間にとっては教わることが非常に多い。オールディーズにせよ、昭和歌謡にせよ、テケテケのエレキ・インストにせよ、私がまだガキだった頃にラジオでヒット曲を聴き、テレビで見、レコードを買っておられたのだ。後追い体験派の私としてはお二人との会話から得るところは計り知れない。
 5年ほど前、音聴き会に 901 さんが持参されたフランス・ギャルのEP盤を聴いて私が大コーフンしているのを見て、
 plinco さん:そんなにギャルが気に入ってんやったら他のフレンチ/イタリアン・ポップスもイケるんちゃうか?
 私:他にどんな歌手いてますのん?
 plincoさん:ダニエル・ビダルとか、ウィルマ・ゴイクとか...
 私:え?聞いたことない名前ですわ。ワシ横文字苦手ですねん。もう一回言うて下さい、メモりますんで...
 plincoさん:ダ ニ エ ル ・ ビ ダ ル... ウ ィ ル マ ・ ゴ イ ク...
 901さん:おぉ~ 懐かしいなぁ... おったおった(笑) チンクエッティーもエエでぇ~
 私:チンケッテイ?...ですか?
 plincoさん:ちゃうちゃう、ジリオラ・チンクエッティーや。
 901さん:shiotch7さん、すぐにハマるから来月あたりワシらよりも詳しゅーなってるんちゃうか...(笑)
とまぁ大体こんな会話で盛り上がったのだが、901さんの予言された通り、私はその日の晩からネットを利用して徹底的にフレンチ/イタリアン・ポップスを研究し、ヤフオク、アマゾン、eBay その他のネット・オークションやオンライン通販を駆使して彼女らの LP 、 EP 、 CD を集め始めた。ギャル、バルタン、シェイラ、ミーナ、オーラといった大物は順調にいったが、それ以外のややマイナーなシンガーは困難を極めた。まず本国フランスでLPが出ていない、日本盤のシングルは状態の悪いのがたまにヤフオクに出てくるぐらいで希少なLPになるとビッドが殺到して落札価格が高騰、もちろんCD化なんて夢のまた夢、という厳しい状況だった。そんな苦労を経て音源を入手した一人が今日取り上げるダニエル・ビダルである。
 彼女はブロンド・ヘアーにライト・ブルーの大きな瞳という、まるでフランス人形のような容姿のロリータ・アイドルだ。1969年デビューと言うからイエイエ・ブームは完全に終わっていたのだが、日本では結構人気があったという。最初アマゾンで検索した時、すぐに1枚出てきてラッキー!と思ったのだが、カスタマー・レビューがやたらと低い。読んでみると、オリジナル音源ではない再録音盤をそれと知らずに買わされて怒り心頭の恨み節が並んでいたのだ。あ~危なかった(>_<) そんなモン、ハッキリ言うて詐欺盤やん!今ではマトモなCDが出ているが、当時はそのナンジャラホイ盤1枚しかなく、結局 “キング・セルダム・シリーズ” という値段の安かった日本盤LPを買った。A面がダニエル・ビダルでB面がチンクエッティという、お買い得なのか中途半端なのかよくワケのわからないLPだ。全6曲中、「オー・シャンゼリゼ」や「ピノキオ」といった聴いてるだけでこっ恥ずかしくなるような楽曲の中で、めちゃくちゃ気に入ったのが彼女のデビュー曲「Aime ceux qui t’aiment(邦題:天使のらくがき)」である。
 まず何と言っても曲そのものが良い。まるで東欧かロシア民謡のようなマイナー調のメロディーが心の琴線を震わせる。絵に描いたような哀愁舞い散る名曲だ。それをダニエル・ビダルのキュートでありながらも声量たっぷりの歌声で聴けるのだ(≧▽≦) これはもう必殺のキラー・チューンと言えるだろう。この曲がヒットしたのは1969年、ビートルズが解散に向かう一方でニューロックが台頭し、ミュージック・シーンが混迷を極めていた時期である。そんな中、この曲が一服の清涼剤のような存在となり、 “うた” を愛する音楽ファンに熱烈に支持されたというのも頷ける話だ。尚、彼女は60'sのアイドル歌手がよくやったようにカタコト日本語ヴァージョンも吹き込んでいて、 “あたしは お茶目な いたずら天使~♪” と舌っ足らずな日本語で歌っている。遅れてきたフレンチ・アイドルが訥々と歌うこのヴァージョン、その筋系の音楽を愛するご貴兄に超オススメだ(^.^) 

天使のらくがき/ダニエル・ビダル Aime Ceux Qui T'aiment/Daniele Vidal