shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

西田佐知子 全曲集

2010-03-26 | 昭和歌謡
 西田佐知子は1960年代を代表する女性歌手の一人である。1956年にレコード・デビューし、1961年に「コーヒー・ルンバ」が大ヒット、翌62年には「アカシアの雨がやむとき」でその地位を不動のものとし、71年に関口宏と結婚するまで、流行り廃りの激しかった60年代に約10年の長きにわたってコンスタントにヒットを飛ばし続けたのだからコレはもう凄いとしか言いようがない。
 私のように洋楽中心に音楽を聴いてきた40才台の人間にとって、彼女の存在はまさに盲点と言えるものだった。ビートルズやレッド・ゼッペリン、マイケル・ジャクソンばかり聴いていては彼女の曲を耳にする機会などあろうはずがない(笑) そんな私が彼女の歌声を初めて聴いた(←実際はもっと以前から菊正宗の CM ソングで耳にしていたということが後になって発覚...)のは数年前、901 さんが持参された⑦「コーヒー・ルンバ」の醸し出す独特のムードが気に入り、“こんな歌手いてたんや...何かワカランけど、妙に心に残る歌声やなぁ...” と思いながら彼女がまだカヴァー・ポップスを歌っていた頃の曲を集めた「アーリー・デイズ」という CD をアマゾンで購入、もちろんお目当ては「コーヒー・ルンバ」に匹敵するようなポップス曲の発掘だったのだが、その中で断トツに気に入ってしまったのが当初の狙いと全く正反対な路線の①「アカシアの雨がやむとき」だった。それまでの私は、正直言ってこのような “コテコテの歌謡曲” は露骨に敬遠していたのだが、この曲を切々と歌う彼女の歌声の前に私は胸に熱いものが込み上げ、すっかり心を奪われ、頭を垂れて聴き入ってしまった。 “彼女の歌う歌謡曲はどこか違う!” と感動した私はちょうどその頃開催されていた阪神百貨店レコード・バーゲン・セールで運よく彼女のオールタイム・ベスト盤を発見、喜び勇んでレジへ持っていったのがこの「西田佐知子 全曲集」だった。全20曲、一騎当千の名曲満載で1,180円なんてホンマにエエんかいな?
 もちろん1曲目は昭和歌謡史上屈指の名曲名唱①「アカシアの雨がやむとき」である。そういえばこのアルバムにはこの①を始め、③「赤坂の夜は更けて」、⑥「東京ブルース」、⑧「女の意地」、⑨「涙のかわくまで」と、ちあきさんが初期のアルバムでカヴァーしていた曲が多いが、聞くところによると彼女がデビュー前に師匠の鈴木淳氏から猛レッスンを受けていた時に氏が教材として選んだのが西田佐知子の楽曲群だったという。前座歌手としてキャバレー回りをするうちに身についてしまった演歌唱法のこぶしという厄介な癖を取り除き、まっすぐな発声に戻すためにちあきさんは来る日も来る日も「アカシア...」を歌わせられたとのこと。彼女にとって最高のお手本が西田佐知子だったというわけだ。そんな考えを巡らせながら2人のヴァージョンの聴き比べをするのも昭和歌謡ファンに許された最高の贅沢というものだろう。特に⑨の歌い出しなんて一瞬美空ひばりを想わせるような歌唱でもうゾクゾクしてしまう(≧▽≦)
 バカラックなイントロに耳が吸いつく筒美京平の隠れ名曲⑤「くれないホテル」も素晴らしい。彼女のちょっと鼻にかかった乾いたハスキー・ヴォイス、そしてそのけだるい雰囲気を醸し出す歌唱スタイルが合わさって、他の歌手には真似のできない垢抜けた世界を作り上げている。ジャズ・ファンに彼女がウケるのもそのあたりに秘密があるように思う。⑳「初めての街で」はこの CD で初めて聴いたのだが、コレって菊正宗のCMソングやん!“初めての街でぇ いつものぉ酒ぇ... やぁっぱりぃ 俺はぁ~♪” のフレーズは日本人なら誰でも一度は耳にしたことがあると思う。それまでは誰が歌ってるのかなんて考えたこともなかったが、さっちんやったんや...(^.^) ⑤同様彼女のザ・ワン・アンド・オンリーな歌声が絶品だ。
 とにかくこのアルバムには彼女の代表的なヒット曲は殆ど網羅されているし、上記の曲以外にもブレンダ・リー・ヴァージョンで取り上げた⑪「ワン・レイニー・ナイト・イン・東京」やジャジーな雰囲気横溢の⑫「ベッドで煙草を吸わないで」といった昭和を彩る名曲群もしっかり収録されていて、コスト・パフォーマンスは抜群に高い。ちあきさんやあゆといった私の大好きな女性シンガーのルーツと言える昭和の大歌手、西田佐知子。彼女の魅力が一杯詰まったこのアルバムは昭和歌謡を語る上で絶対に外せないスーパーウルトラ大名盤なのだ。

西田佐知子「アカシアの雨が止む時」


涙のかわくまで・・・西田佐知子


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